孤独の王と後宮の青葉

秋月真鳥

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本編

2.孤独の王

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 その国の王は孤独だった。
 前の国王が崩御したとき、戦に明け暮れていた兄たちはみんな戦死して、たった一人、幼かった彼、ジャファルが王位につかされた。他に王の血を引く男子が残されていなかったので、選択権はなかった。
 幼い頃に王位につかされたジャファルが、自分の性に気付いたのは、12歳のときだった。初めての発情期に、ジャファルは混乱した。
 王はアルファで優秀でなければいけない。
 帝王学を修め、優秀であることには間違いなく、戦争を嫌い、平和な国づくりをしようとしていたジャファルを、戦乱に疲れ切った国民は指示していた。乾いた大地が多いが、ジャファルが即位してから用水路建築に力を入れたため、国は農業も盛んになって、食べるものに困らないようになった。その上、元々地下資源が豊富にあったので、国はますます豊かになっていた。
 オメガだと分かったところで、今更ジャファルを王位から退けることはできない。齢12歳にして、ジャファルは国民に圧倒的に支持される賢王だったのだ。
 発情期と共に来た精通に、ジャファルの周囲は俄かに騒がしくなった。前の王の後宮はジャファルが幼かったので閉じられていたが、貴族や周辺諸国から美しい女性、それにオメガが集ってジャファルの後宮に入ることを望んで来た。
 世間的にはジャファルはアルファの賢王でなければいけなかった。だが、真実は、受け入れた女性もオメガも抱くことのできない、オメガの王なのだ。
 決して漏らしてはいけない事実を抱えて、ジャファルは孤独に王位にいた。
 毎日のように後宮には美しい女性やオメガが送り込まれてくる。誰も抱くことができないジャファルは、それとなく彼女らを自分の部下と結ばれるように仕組んだり、手を付けていないことを告げて他の貴族に渡したりしていたが、後継を望まれるようになって、それも難しくなっていた。
 彼女たちではジャファルを満たすことはできない。男性なのだから抱けるのではないかと試したこともあった。しかし、ジャファルの中心は全く反応しなかった。
「我が君がまだ若いとはいえ、後継者は必要です。どうなさるおつもりですか?」
「姉のところの息子が優秀と聞いているが」
「我が君の子を全国民が望んでいるのです」
 無理なのだから養子でも構わないとジャファルは割り切っているのに、周囲は許してくれない。12歳で初めての発情期を迎えてから、10年間も必死に隠し通した。主治医と側近の数名しか、ジャファルがオメガだということは知らない。血の繋がった姉たちにすら明かしてはいない。
 優秀なアルファとして血を残して欲しいと切望する周囲の気持ちも分からなくはないのだが、ジャファルはどうしても抱く方に回る自分を想像できなかった。
 後宮の一番奥、誰も入れない部屋を作らせて、発情期の間はそこに籠る。自分の指で後孔に触れて慰めても、ひとときの満足すら得られない現状に、ジャファルは焦れていた。
 長身で屈強な体付きのジャファルを、誰がオメガと思うだろう。フェロモンも漏れない体質のようで、周囲のアルファにも気付かれていないが、誰でもいいから縋り付いてでも身体を慰めて欲しい夜を、一人孤独に耐えて来た。
 青葉萌える国から、新しくオメガが後宮に入ると知らされた日、ジャファルは若干の身体の火照りに気付いていた。そろそろ発情期が来る。発情期はジャファルにとっては苦しいだけのもので、憂鬱な気分だった。
 執務を終えて、今日からしばらく後宮に籠ることを告げ、新しいオメガに会いに行く。
 一枚の布を巻き付けてドレスのようにしたそのオメガは、ルカという名前だった。零れ落ちそうな美しい緑の瞳に、輝く金色の髪、滑らかな白い肌。緊張しているのか、頬が紅潮しているのが、愛らしい美少女のオメガ。
 それなのに、彼女を見た瞬間、ずくんと胎が疼いた。
 欲しくて堪らない。
 彼女には与えられるはずのないもの。けれど、満たされたくて堪らないもの。
 逃げるように部屋から出て早足で奥の部屋に閉じこもり、誰も来ないように命じた。部屋に来る途中に、月の形の耳飾りを片方落としたことに気付かないくらい、ジャファルはひっ迫していた。
 寝台の上で衣服を脱ぎ捨て、部屋中に充満する吐きそうなくらい甘い自分のフェロモンに辟易しながら、後孔に触れる。指で周囲をなぞって、一本指を差し込み、ぐちぐちと掻き回しても、全然足りない。指を増やして、掻き回し、抜き差ししても、満足感がない。
 熱い内壁は指ではないものを求めて、ぐにぐにと蠢いている。
 前に触れて扱いて精を吐きだしても、全く欲は治まることがない。
「たすけて……」
 枕に顔を埋めて、尻だけ高く上げて、指を抜き差ししているジャファルの耳に、小さな金属音が聞こえた。振り返ると、僅かに開いた扉の前に、誰か立っている。
「そなたは……ルカ?」
「ご、ごめんなさい……」
 震えて怯えているルカに、説明して口止めしなければいけない。理性では分かっているが、本能は全く別のことをしていた。部屋の中に引きずり込んだルカを、寝台の上に押し倒す。布を剥がして、ジャファルは自分が勘違いしていたことに気付いた。
 平たい胸に、股間の立派で逞しいもの。
 ルカは少女ではなく、少年だった。
 オメガとは明らかに違う、反応した中心に、こくりと喉が鳴る。
「おゆるしを……」
「これが……」
「え?」
 あぁ、とため息を吐き、ジャファルはルカの中心に頬ずりした。
「これが、欲しい」
 理性を失った発情期のオメガのフェロモンに、アルファは逆らえないという。反応しているということは、ルカはアルファなのだろう。本能だけでそこに舌を這わせて、ジャファルはうっとりと喉の奥までそれを咥えた。
「あぁっ!?」
 きゅっと喉で締めると、ルカの愛らしい唇から声変わりもまだの少女のような声が漏れる。軽く歯を立てながら、口で根元から先端まで滑らせて扱いて行けば、弾けそうにルカの中心が硬く勃ち上がる。
 口を外して、腰に跨る頃には、ルカは完全に蕩け切った顔で、ジャファルに身を任せていた。切っ先を後孔に宛がって、ゆっくりと腰を落としていくと、ごりごりと内壁を擦り上げながら、ルカの中心がみっしりとジャファルの中を埋めていく。
「うぐっ! あぁっ!」
「ひぁっ! なにか、クるっ!」
 奥まで飲み込んで締め付けると、ルカが体の下で泣き声を上げた。
 ずっと欲しかったものがやっともらえた歓喜に、ジャファルの身体は容赦なくルカを責め立てる。腰を振り立て、ぐちゅぐちゅと内壁で締め付けると、突如ルカの中心が弾けた。
 奥までたっぷりと注がれる白濁に、ジャファルは仰け反って快感に耐える。
「あつい……あぁ、悦いっ……!」
「あっ……ごめんなさ……ぼく、おうさまの、なかに……」
 泣き出してしまったルカは、まだ自分がアルファと気付いていないようだった。これだけ愛らしい容貌なのだから、オメガと間違われて後宮に連れて来られたのだろう。
「私だけを見て、私だけを感じていろ」
「ひぁっ!?」
 まだ足りないとばかりに腰を振り立てると、泣きながらもジャファルの中でルカの中心が芯を持つ。フェロモンに反応したのだろうが、これだけ立派なものを持っているルカが、オメガのはずがない。
 接合部から泡立った白濁が逆流してくるまで、ジャファルはルカを搾り取った。
 たっぷりと満たされて、発情期の熱も僅かに治まって来ると、ジャファルは寝台の上で意識を失っているルカを見下ろして、青ざめていた。
 ルカはオメガだと言われてここに連れて来られて、後宮で王に抱かれるつもりだった。それなのに、自分がしてしまった行為は真逆である。
 実は自分がオメガで、ルカがアルファで、自分はずっと抱かれることを求めていて、10年も発情期の熟れた体を持て余していた。そんなことを無垢な少年に言えるだろうか。
「ん……王様?」
「飲み物を持って来させよう。湯浴みも……」
 この部屋には誰も入れないので、湯浴みを手伝うものもいないと気付いて、ジャファルはルカの細い体を抱き上げた。折れそうなほど華奢な体で、自分のような屈強な男を抱いて、ルカは嫌ではなかっただろうか。
 立ち上がると、後孔からとろりとルカの残滓が伝い落ちる。
 それを乱暴に拭いて、ジャファルはルカを抱き締めたまま、湯船に浸かった。
「あの……僕、初めてで……な、なにが起きたのか……」
「初めてとは?」
「まだ、精通も来てなくて……」
 精通も来ていないルカを発情期のフェロモンで誘って、無理やりに乗っかって搾り取ってしまった。
 ぐしゃぐしゃのシーツを取り換えて、寝台にルカを寝かせながら、ジャファルは天井を仰ぎ見ていた。
「失礼が、なかったでしょうか?」
 フェロモンに浮かされて流されてしまっただけのルカだが、後宮にいるのだから、ジャファルの好きにしていいはずではある。初めて見たときから美しく心惹かれる少女だとは思っていたが、ルカの方がジャファルをどう思うか。こんな厳つい男がルカの中心を欲しがって、強請って、腰を振ったことに、嫌悪感を抱いていないか。
「これから毎晩、この部屋に来るように」
 命令はできても、心を問うことはできない。
「はい」
 か細い声で答えるルカの顔を、ジャファルは直視できなかった。
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