次世代最強とうたわれている辺境伯家次男の目覚めは、何もないお隣の領地を治める男爵家の三男。幼馴染な関係の平凡男子な俺でした。[完結]

かざみはら まなか

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18.ファーストキスは、愛も恋も今世では望めないと諦めていた俺の全ての障害をなぎ倒してきた幼馴染と。

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両腕を俺の頭の横につくから、俺の顔の正面に幼馴染の顔が来る。

毎日のように見てきた顔に。

こんなに近い距離で。

見つめられたのは初めてで。

熱のこもった瞳の熱で、目が溶けそう。

「俺、俺は。」

自分の気持ちを言葉にしようとしても、うまく言葉にならない。

今の気持ちにぴったりくる言葉って、どれ?何?

幼馴染は、俺の額にすっと唇を落としてきた。

お前、なんか余裕綽々じゃない?

俺はあわくってるんだけど?

俺の幼馴染なのに、この差はなんなんだよ!

「俺とお前には、お前がプレシオサウルスと呼んでいるドラゴンが一緒だよ。」
と幼馴染。

「うん。ありがとう。」

幼馴染が俺と遊ぶときには、プレシオサウルス型ドラゴンも一緒に遊んでくれる。

嬉しくはあるんだけど。

風呂場で、風呂場用マットの上で、全裸になって互いの体を密着させて話さなくてもよくない?

服を着た状態で、プレシオサウルス型ドラゴンと一緒にいるときに話してくれた方が、全力で喜べたよ?

今の体勢だと、わーい、やったー、と踊り出すような喜び方はできない。

口でありがとうと言うくらいがせいぜいだよ。

俺が全力で喜ぶような状態にして嬉しがらせてくれることが当たり前だったから、嬉しくても喜び方の加減が分からない。

調子狂うって。

内心で、ワタワタしてしまう。

「だから、兄上のもとに行くなんて、お前は絶対に言わないんだよ?」
と幼馴染。

幼馴染の声がワントーン低くなった。

分かった?と念押しするみたいな言い方をされたけれど。

文章おかしくない?

「俺のお兄さんへの感情は、恋じゃないよ。尊敬も感謝もしているけれど。」

自分の恋を叶えたいとか、結婚したいとか、今世では考えていなかった。

恋心と生きていくには難しい世界。

前世があるからこそ、俺を取り巻く環境に無知でいないように心がけて。

恋とか愛とか、誰とも語らない人生なんだと思ってきた。

その代わりと言ってはなんだけど、家族や幼馴染には恵まれたから。

愛よりも恋よりも、大事にするものを見つけてなくさないようにしながら生きる人生。

悪いものじゃ、決してない。

愛も恋も全部欲しがったら、足りなくなる。

望みすぎなければ、十分満たされて生きられる。

毎日の生活に一生懸命になっているうちに、時間は過ぎていく。

そんな風に大人になって。

自分の家族を持つのではなく、兄二人とその家族を見守り、領地と領民に尽くして生きられたらいい。

そう割り切るつもりでいたし、それが俺の人生だと思ってきた。

兄二人が背負うものを俺は最初から背負わされていない。

三男だから。

今世の俺の人生は、こうだよ。

これでいいんだよ。

そんな風に考えていた。

でも。

やっぱり寂しい気持ちはあった。

愛する人と愛し合いたい。

好きな人と結婚して新しい家庭を作りたい。

決して口に出せない望みが、俺の中にはずっとあった。

誰にも知られてはいけない願い。

誰かに知られたら、今の生活の全てを失ってしまう恐れしかない思い。

愛も恋も望めない人生に、家族や幼馴染からの愛情と信頼を失ったら?

俺は何を頼りに生きたらいいのか分からない。

俺を縛り付けている全部を取っ払って、障害となるものをなぎ倒して俺を捕まえにきた幼馴染。

これからも俺を捕まえていてほしい。

お前じゃなかったら、俺は捕まらなかったよ。

「尊敬と感謝からだって恋は始まるよ?」
と幼馴染。

「人によるって。お前は俺を捕まえたんだから自信持てよ。」

幼馴染は、フッと笑った。

「お前は、俺から逃げ出そうとしたよね?」
と幼馴染。

反射的にギクッとしてしまう。

「俺は、お前のおかげで、愛も恋も諦めないで生きていくことができるようになった。もう、俺がお前から逃げる理由はなくなったよ。」

幼馴染の吐息は、俺の唇に届きそうで届かない。

「お前は、俺が好きだよね?」
と幼馴染。

調子に乗るなよ。

「そういうのは、まだ早い。でも、俺に苦労させないようにとお前が頑張ってくれたのは、色々察した。ありがとう。」

「俺とお前の結婚が成立した今の俺に、怖いものはない。」
と幼馴染。

「どういう意味だよ?」

幼馴染が次世代最強と呼ばれているのは、今の世代で最強なのが、幼馴染のお父さんだから。

幼馴染より強い存在は、幼馴染のお父さんだけ。

長年幼馴染をしていたのに、怖いものがあったなんて知らなかったよ。

「お前に何の価値もないと思っているのは、お前だけだよ。」
と幼馴染。

「俺が重要人物みたいに聞こえるんだけど。」

「俺の好きな人になった日から、お前はずっと俺の重要人物だよ。」
と幼馴染。

「ずっと?」

「今日までも、今日からも。」
と幼馴染。

幼馴染の顔が真上からおりてくる。

キス、されるんだ。

今から、キスするんだ。

そう感じたら、思わず瞼を閉じていた。

おりてきた唇に唇が触れる。

瞼を上げると、唇を離した幼馴染の優しい目が俺を映していた。

「うん。」

好きという気持ちで包まれるのは、照れくさいけれど気分がいい。

風呂場用マットドン状態で、真正面から見つめてきて、逃げ場がないくらいの愛の言葉を全身に浴びせてくるから。

お前の体温と吐息で温まった顔が熱いよ。

「俺だけじゃなく、ドラゴンも俺の家族もお前の家族も、辺境伯家と男爵家の領民も、皆、お前のことを大切に思っているよ。」
と幼馴染。

俺のことが好きだからって、俺が嬉しがるようなことばかり言うんだから。

「今、言うなよ。」

「どうして?今が言うタイミングだったよ?」
と幼馴染。

そんな嬉しいことばかり聞かされたら。

「俺、どうしたらいいか、分からなくなる。」

「教えてあげるよ。」
と幼馴染。

見つめると。

幼馴染は、真面目な顔をしている。

「教えてくれよ。」

今なら、幼馴染が言うことを素直に聞けそう。

「玉の入った袋の裏の匂い嗅ぐから、お前は片手で袋を軽く持ち上げながら、俺の鼻の穴近くで止まって。」
と幼馴染。

お前は、俺のファーストキスとキュンと感動を返せよ!

今すぐ!
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