【完結】うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい

らんか

文字の大きさ
33 / 43

30. 嵐は突然に②

しおりを挟む

「誰に手をかけているのよ……」

 私は自分の声とは思えない程の低い声で問う。
 それと同時に、モニカ様を押さえ込んでいたボルグの身体が後ろに吹き飛んだ。

「うわぁぁぁ!!」
「ボルグ!?」
「キャー!! ボル君!」
 飛ばされたボルグの悲鳴と共に、驚いたウィリアム殿下とアリアが叫ぶ。

「モニカ様!」
 私はモニカ様の無事を確かめる為に、慌てて駆け寄った。

「モニカ様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ……。でも、さっきのは一体?」
 身体を起こして飛んで行ったボルグの方向に向き、首を傾げている。
「ただの天罰ですよ」
 私はボルグに冷ややかな視線を送りながら、そう返答した。

「貴様! 何をした!!」
 そう言って、ウィリアム殿下が私たちに詰め寄ってくる。
 しかし、私を掴もうとしたウィリアム殿下の手は、もっと力強い手で跳ね返された。

「ウィリアム殿下? 誰を掴もうとしているんです?」
 いつの間にか隣に立ってそう言っているロイド先生からは、とても冷ややかな空気が纏っている。

「一介の教師がこの僕の邪魔をするな! そこをどけ!」
 そう叫ぶウィリアム殿下に、別の方向からも大声がかかった。

「いい加減にしろ! ウィリアム! 見苦しいぞ!」
「ち、父上……」

 一連の流れを見ていた陛下が、額に青筋を立てながら、怒りの矛先をウィリアム殿下に向けた。

「お前のせいで、厳かで神聖な卒業式がめちゃくちゃだ! 一体何を考えている!」
「ち、父上! ですが僕は」
「口答えするな! お前にはほとほと呆れる! 報告通りのクズだな!」
「ち、父上!? 報告? クズって……?」
 ウィリアム殿下の言葉を無視し、陛下は待機している衛兵たちに告げる。

「衛兵! 今すぐウィリアムとその側近を拘束しろ! これ以上騒がれてはかなわん!」

 陛下の命令により、殿下とボルグは衛兵たちにその場で拘束された。
「父上! 何故僕たちを拘束するのですか!」
「ウィリアム。今からお前の言う、モニカ嬢の罪に対する無実の証明を見せてもらう。それを見てからお前の訴えを改めて聞いてやるから、しばらくそこで静かにしていろ。騒ぐようなら猿轡を噛ませるぞ」

 陛下のその言葉に、ウィリアムも苦虫を噛み潰したような表情で黙った。
 拘束されて静かになったのを確認すると、陛下はこの場にいる全員に話かけた。

「さて、卒業生の諸君ならびにその親族の者、在校生の諸君らに、先ずは愚息の愚かな行動について謝罪させてもらいたい。大切な思い出となる卒業式を壊してしまい、真に申し訳ない。この詫びは後日何らかの形でさせてもらう事を誓おう」
 そう言って、隣に座っていた王妃様と共に軽く黙礼をした。
 王族がこんなにひと前で頭を下げるなど、前代未聞だ。
 皆が唖然とする中、陛下はさらに続けて言う。

「そして、先程、愚息が申していた件についても、この場でしっかりと真相を究明したいと思う。皆には知る権利があるからだ」

 陛下はそう言ってから私に視線を向けた。
「アリッサ嬢、先程、無実の証明が出来ると申しておったな? 今からそれをやれるか?」
「宜しいのですか?」
 私の言葉に、陛下は周りを見渡す。

「今から真相の究明をしてもらおうと思うが、異議のあるものは申し出るがよい」
 陛下の言葉に誰も異を唱える者はいなかった。

「では、始めてくれ」
「分かりました」

 陛下の言葉に、私は頷いた。
 私は壇上に上がり、壇上の天井からスクリーンを下ろしてもらう。

「おお?」
「なんだ、あれ?」
 初めて見るスクリーンに、会場にいた人々は驚きを隠せない。

「これは映像を映す"スクリーン"というものです。今からここに、学園内で起こっていた事を写し出し、何が起こっていたのかを皆で確認していきたいと思います」

 私は壇上からしっかりと皆を見据えて、そう告げた。

「映像を映し出す?」
「そんな事、出来るのか?」

 あちらこちらで、そのような疑問の声が聞こえる。
 壇上にはいつの間にかロイド先生が上がってきており、私に代わって防犯カメラについての説明を始めた。

「この学園では、半年前から王国錬金魔導師団認定の"防犯カメラ"なる魔導具が至る場所に設置された。これは、皆の安全を守る為であり、外敵からの侵入をいち早く見つけるなど、色々な面で役立つものだ。もちろん、各個人のプライバシーの保護を義務付け、不当な情報漏洩を防ぐための措置も行なっている。これに関しては、今のところ試験的に設置されていたので、本格的に使用する事となるのはもう少し先になる。これが本格的に使用すれば、町中の至る所に設置され、犯罪防止に役立つはずだ。この学園では来季から本格的に使用する事が最近決定されたため、皆への説明は来季の始業式に説明する予定であった。このような形で報告する事になってしまい、残念に思う」
 そして、ロイド先生は私の方に視線を向け、さらに説明の補足をした。
「ここにいるアリッサ嬢は、アリッサ嬢の兄を通じて、この魔導具の開発に一役買っていたため、いち早くこの事を知っていたんだ。アリッサ嬢にて、この魔導具の素晴らしさが皆にも伝わるだろう」
 そう言って、後はよろしくといったふうに私を見て頷いた。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。

ふまさ
恋愛
 ──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。  彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。  ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。  だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。 ※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

白い仮面の結婚を捨てた私が、裁かれない場所を作るまで

ふわふわ
恋愛
誰もが羨む、名門貴族との理想の結婚。 そう囁かれていたジェシカの結婚は、完璧な仮面で塗り固められた**「白い誓約」**だった。 愛のない夫。 見ないふりをする一族。 そして、妻として“正しく在ること”だけを求められる日々。 裏切りを知ったとき、ジェシカは泣き叫ぶことも、復讐を誓うこともしなかった。 彼女が選んだのは――沈黙と、準備。 名を問われず、理由も裁きもない。 ただ「何者でもなくいられる時間」が流れる、不思議な場所。 そこに人が集まり始めたとき、 秩序は静かに軋み、 制度は“裁けないもの”を前に立ち尽くす。 これは、声高な革命の物語ではない。 ざまぁを叫ぶ復讐譚でもない。 白い仮面を外したひとりの女性が、 名を持たずに立ち続けた結果、世界のほうが変わってしまった―― そんな、静かで確かな再生の物語。

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

処理中です...