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30. 嵐は突然に②
しおりを挟む「誰に手をかけているのよ……」
私は自分の声とは思えない程の低い声で問う。
それと同時に、モニカ様を押さえ込んでいたボルグの身体が後ろに吹き飛んだ。
「うわぁぁぁ!!」
「ボルグ!?」
「キャー!! ボル君!」
飛ばされたボルグの悲鳴と共に、驚いたウィリアム殿下とアリアが叫ぶ。
「モニカ様!」
私はモニカ様の無事を確かめる為に、慌てて駆け寄った。
「モニカ様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ……。でも、さっきのは一体?」
身体を起こして飛んで行ったボルグの方向に向き、首を傾げている。
「ただの天罰ですよ」
私はボルグに冷ややかな視線を送りながら、そう返答した。
「貴様! 何をした!!」
そう言って、ウィリアム殿下が私たちに詰め寄ってくる。
しかし、私を掴もうとしたウィリアム殿下の手は、もっと力強い手で跳ね返された。
「ウィリアム殿下? 誰を掴もうとしているんです?」
いつの間にか隣に立ってそう言っているロイド先生からは、とても冷ややかな空気が纏っている。
「一介の教師がこの僕の邪魔をするな! そこをどけ!」
そう叫ぶウィリアム殿下に、別の方向からも大声がかかった。
「いい加減にしろ! ウィリアム! 見苦しいぞ!」
「ち、父上……」
一連の流れを見ていた陛下が、額に青筋を立てながら、怒りの矛先をウィリアム殿下に向けた。
「お前のせいで、厳かで神聖な卒業式がめちゃくちゃだ! 一体何を考えている!」
「ち、父上! ですが僕は」
「口答えするな! お前にはほとほと呆れる! 報告通りのクズだな!」
「ち、父上!? 報告? クズって……?」
ウィリアム殿下の言葉を無視し、陛下は待機している衛兵たちに告げる。
「衛兵! 今すぐウィリアムとその側近を拘束しろ! これ以上騒がれてはかなわん!」
陛下の命令により、殿下とボルグは衛兵たちにその場で拘束された。
「父上! 何故僕たちを拘束するのですか!」
「ウィリアム。今からお前の言う、モニカ嬢の罪に対する無実の証明を見せてもらう。それを見てからお前の訴えを改めて聞いてやるから、しばらくそこで静かにしていろ。騒ぐようなら猿轡を噛ませるぞ」
陛下のその言葉に、ウィリアムも苦虫を噛み潰したような表情で黙った。
拘束されて静かになったのを確認すると、陛下はこの場にいる全員に話かけた。
「さて、卒業生の諸君ならびにその親族の者、在校生の諸君らに、先ずは愚息の愚かな行動について謝罪させてもらいたい。大切な思い出となる卒業式を壊してしまい、真に申し訳ない。この詫びは後日何らかの形でさせてもらう事を誓おう」
そう言って、隣に座っていた王妃様と共に軽く黙礼をした。
王族がこんなにひと前で頭を下げるなど、前代未聞だ。
皆が唖然とする中、陛下はさらに続けて言う。
「そして、先程、愚息が申していた件についても、この場でしっかりと真相を究明したいと思う。皆には知る権利があるからだ」
陛下はそう言ってから私に視線を向けた。
「アリッサ嬢、先程、無実の証明が出来ると申しておったな? 今からそれをやれるか?」
「宜しいのですか?」
私の言葉に、陛下は周りを見渡す。
「今から真相の究明をしてもらおうと思うが、異議のあるものは申し出るがよい」
陛下の言葉に誰も異を唱える者はいなかった。
「では、始めてくれ」
「分かりました」
陛下の言葉に、私は頷いた。
私は壇上に上がり、壇上の天井からスクリーンを下ろしてもらう。
「おお?」
「なんだ、あれ?」
初めて見るスクリーンに、会場にいた人々は驚きを隠せない。
「これは映像を映す"スクリーン"というものです。今からここに、学園内で起こっていた事を写し出し、何が起こっていたのかを皆で確認していきたいと思います」
私は壇上からしっかりと皆を見据えて、そう告げた。
「映像を映し出す?」
「そんな事、出来るのか?」
あちらこちらで、そのような疑問の声が聞こえる。
壇上にはいつの間にかロイド先生が上がってきており、私に代わって防犯カメラについての説明を始めた。
「この学園では、半年前から王国錬金魔導師団認定の"防犯カメラ"なる魔導具が至る場所に設置された。これは、皆の安全を守る為であり、外敵からの侵入をいち早く見つけるなど、色々な面で役立つものだ。もちろん、各個人のプライバシーの保護を義務付け、不当な情報漏洩を防ぐための措置も行なっている。これに関しては、今のところ試験的に設置されていたので、本格的に使用する事となるのはもう少し先になる。これが本格的に使用すれば、町中の至る所に設置され、犯罪防止に役立つはずだ。この学園では来季から本格的に使用する事が最近決定されたため、皆への説明は来季の始業式に説明する予定であった。このような形で報告する事になってしまい、残念に思う」
そして、ロイド先生は私の方に視線を向け、さらに説明の補足をした。
「ここにいるアリッサ嬢は、アリッサ嬢の兄を通じて、この魔導具の開発に一役買っていたため、いち早くこの事を知っていたんだ。アリッサ嬢にて、この魔導具の素晴らしさが皆にも伝わるだろう」
そう言って、後はよろしくといったふうに私を見て頷いた。
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