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29. 嵐は突然に①
しおりを挟む結局クレアとマイケルは学園を退学した。
マイケルの父親は、特殊魔導具の管理不行き届きで外務大臣を解任された。
そして、攻略対象者が一人欠けた状態で迎えた一年の終わり。
本日は三年生を送るための卒業式だ。
そこで、起こった突然の出来事。
話は冒頭に戻された。
「モニカ・ベルモート! 僕はお前との婚約を破棄し、ここにいるアリアと婚約する事を宣言する!」
整然と並ぶ卒業生の後ろには、在校生や親族、そして上段にある王族席では国王夫妻も見守っている。
そんな厳かな雰囲気の中、壇上では在校生代表であるウィリアム・イル・ハイレイド第三王子殿下が本来卒業式の送辞を述べるはずであった。
しかし先程放った言葉は、卒業式の送辞などではなく、まさかの婚約破棄宣言。そして、新たな婚約者の発表だ。
誰もがあまりの出来事に驚きを隠せない。
もちろん、名指しで呼ばれたモニカ様にとっても同様である。
「……どういう事でしょう?」
モニカ様は表情を崩さず、静かにそう返した。
その落ち着いた態度がまた、ウィリアム殿下には気に食わなかったのだろう。
憎々しげにモニカ様を蔑む。
「お前は妃に相応しくないと言ったのだ! アリアに普段から嫌がらせをし、挙句に階段から突き落とし、アリアに大怪我をさせようとした! 幸いアリアは軽症で済んだが、これは未来の妃に対する大罪だ!」
ウィリアム殿下は、隣にいるアリアを労るように引き寄せながら叫んだ。
「そのような事、身に覚えがございませんが」
「ふん! 口では何とでも言えるな! だけどその現場を僕自身が見ていた! 他の者たちからの証言も取ってある! 観念するんだな!」
モニカ様の反論など全く耳を貸すつもりもないウィリアム殿下は、そう言って王族席を見た。
「父上! 母上! ここにいるアリア・フロースト嬢との婚約のお認め下さい!
そしてモニカ・ベルモートに厳しい処罰を!」
ウィリアム殿下はアリアの肩をしっかりと抱きしめながら、国王夫妻に主張した。
王族席に座っている国王陛下は、この光景を見てこめかみを押さえている。
「ウィリアムよ。そなたは今ここで何が行われているのか分かっているのか?」
国王の発言に、ウィリアム殿下は意気揚々と答える。
「はい! この発言をするに相応しい場であると思い、敢えて選びました!」
ウィリアム殿下の言葉に、国王夫妻はますます苦虫を噛み潰したよう表情になる。
そして陛下は、ウィリアム殿下ではなく、モニカ様に質問した。
「モニカよ。そなたはこれを予期していたのか?」
国王陛下の質問に、モニカ様は毅然とした態度で答える。
「そうですわね、ここまでとは思いませんでしたが……。でも、この状況を想定していたと言えます。ここにいる彼女のお陰で」
そう言ってモニカ様は隣にいる私を陛下に紹介した。
私を見た陛下が声をかけてくる。
「アリッサ・イグラール嬢か。そなたはもしや、錬金魔導具を使って、この状況を予測しておったのか?」
私は陛下にカーテシーにてご挨拶した後、頷いた。
「残念ながら、錬金魔導具を使用せずとも、この度の殿下の行為は予想通りでございました。わたくしは殿下の仰る一連の憂いに対し、ここにモニカ様の無実を証明する術がございます。それを今ここで披露してもよろしいのですが、この場は先輩方にとって、大切な思い出となる卒業の場。陛下をはじめ、ここにいらっしゃる皆様のご意見もお聞きしなければならないと思いますが、如何されますか?」
国王陛下は「うむ……」と考え込む。
この状態を見たウィリアム殿下は、再度言葉を荒らげた。
「なんだお前は! 関係のないやつは口を挟むな!! モニカ・ベルモート、見苦しいぞ! 助っ人を呼べば誤魔化せるとでも思ったら、大間違いなんだぞ! お前は報いをうけて当然なのだ!」
殿下の言葉に反応するように、側近のボルグ・ドルトール辺境伯令息が、素早く動き、そばに居た私を押しのけると、荒々しくモニカ様を掴んで強引に跪かせた。
「陛下や殿下の御前で往生際が悪い!」
そう叫びながら、得意気な顔でモニカ様に荒々しく接するボルグを見て、多くの女生徒や観覧客の貴婦人たちは、顔をしかめたり、怯えて悲鳴をあげる者もいた。
もちろん男性陣も苦々しい顔で見ている。
「あなたは何をしているのか分かっているのですか!?」
力ずくで跪かされながらも、モニカ様は冷静にボルグを見据えながらそう言った。
「お前こそ、状況を理解していないようだな!」
ウィリアム殿下は、跪いたモニカ様を蔑むように見下しながら言う。
その光景はあまりにも一方的かつ暴力的で。
そばに居た私の我慢の限界値は、あっけなく越えた。
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