【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
10 / 43

10

しおりを挟む
 「まさか第一王子殿下の御病気が治られて、学園に入学して来られるとは思いもしませんでしたわぁ」
 あちらこちらで第一王子の学園の中途入学について話題に挙げられていた。
 詳しい病名は発表されていなかったが、幼き頃より病弱で人前に出る事さえ叶わず、離宮でずっと療養していると思われていたのだ。
 実際には、時々冒険者を名乗りながら適度に体内に膨らんでいる魔力を放出し、病をやり過ごしながら魔力過多症の治療方法や暴発防止方法を探していたようだが。
 
 18歳のシオンライトは本来なら3年に所属になるが、あと半年で卒業するには履修科目の単位不足で無理があるため、二年からの中途入学という特例処置となった。
 第二王子のダミアンはザ・王子といった容姿の金髪碧眼であるのに対し、第一王子は冴えわたる群青色の髪に深海色に金色が差し込む神秘的な瞳。色の全く違う王子二人の人気は二分した。


 「シオン様~」
甘く鼻にかかるような声を発しながら、リセラが駆け寄ってくる。シオンライトの隣にいたミーシャをシオンライトに見えないように軽く睨みつけながら。
 
 「シオン様ぁ。どちらに向かわれるのですかぁ?私もご一緒させていただきたいですぅ」   
 シオンライトの腕を掴もうと、リセラは手を伸ばしながら話しかけてくるが、その間を素早くユージュラスが身体を滑り込ませ、シオンライト王子に触れないように阻止する。

 「カールトン男爵令嬢。前にも言ったが、シオンライト第一王子殿下に軽々しく触れるような真似はしないように。もちろん名前で呼ぶ事も許可されていないよ」
 ユージュラスが厳しめの声で注意したが、リセラは全く動じていない。
 「何故ですかぁ? ダミアン様は何もおっしゃらないし、学園では平等だとダミアン様からお聞きしましたよぅ。」

 (ああ、これは……。まさかのお花畑転生者ヒロインの匂いがする……。前世の妹が逆ザマァの小説が流行ってるってよく話してたっけ。私は一度も読むことがなかったから妹の受け売りだけどね)
 
 ミーシャはそのやり取りを横目で見ながら、どうにか自分だけでもこの状況からフェードアウト出来ないか考えていた。
 「ミーシャ嬢、今日はもう授業は終わりだろ? ミーシャ嬢のタウンハウスに寄らせてもらっていいかい? ちょっと聞きたい事があるんだ」
 シオンライト王子はリセラに一瞥もくれずにミーシャに話しかける。そのせいで、更にリセラからキツく睨まれてしまった。

 (やめてやめて! 私はただのモブ! 王子との関わりなんて、これ以上持ちたくないのに、何故うちに来ようとするのよ! 空気よんで下さい! 私、ヒロインに思い切り睨まれてますよ~!)
 
 心の中で叫びながらも表情には出さずに、丁寧にお断りする。
 「申し訳ございません。今日は週末ですので、飛竜に乗って領地に戻る予定にしております。」
 学園が休みになる週末は、なるべく領地に戻り温室の管理を行なっている。頻回に戻らなくても良いのだが、瘴気を扱っているので何かと心配なのだ。
 「ああ、そうか。あの温室はミーシャ嬢が管理しないといけないから仕方ないのか。では、空いてる日を連絡してくれ。話したいことがあるから。」
 シオンライト王子は、すぐに納得してくれてたが、話をするのは決定事項なのか……横から会話を聞いているリセラからは終始睨まれ続けていたミーシャであった。


しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]

himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜 経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑) はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

処理中です...