33 / 43
33
しおりを挟む
聖女リセラが誕生後、第二王子ダミアンは浮かれていた。
(リセラが聖女だった。これで父上は、僕とリセラの仲を認めてくれるはずだ。
気位ばかり高いあの女とは、早く婚約破棄しなければ!)
ダミアンは、陛下にユーリとの婚約破棄を訴え、聖女リセラと婚約できるように願い出た。
「ダミアンよ。その聖女なのだが、どうやらあまり力が発揮出来ていないようだ。
あの者は本当に魔物討伐の時、聖女の力を発現したのか?」
陛下のその言葉に、ダミアンは必死になってあの時のことを説明した。
「何をおっしゃいますか! 確かに私は見たのです。魔物に襲われそうになった時、急にリセラの体が光に包まれ、周囲にいた魔物たちは一気に消滅しました!
深手を負った者に対しても、あっという間に治癒していました! あれほどの力は絶対に聖なる力に間違いありません!
陛下も、リセラの治癒魔法は確認されたでしょう⁉︎」
ダミアンの言葉に、陛下は困惑したような表情で、
「そ、そうか。しかし結界修復が、あまり上手くいっていないようだ。もう少し様子を見てみよう。
婚約の話は今はするでない。聖女が出現したからといって、すぐにミホーク公爵令嬢と婚約破棄をし、聖女と婚約すれば、公爵からも世論からも非難を受けることになるぞ。」
と、告げた。
陛下の言葉に、悔しそうに歯噛みするも、しかし一理あると考えたダミアンは、しぶしぶ訴えを取り下げた。
(……もっとリセラに力を発揮してもらい、陛下に認めてもらわなければ。
ユーリとの婚約破棄は、学園の卒業式に公衆の面前で堂々と行なってやる!)
ダミアンはリセラのいる教会に向かった。
「リセラはいるか?」
近くにいた修道女に尋ねると、
「聖女様は、今お部屋にて御休憩をなさっております」
とやや複雑な表情で答えた。
「呼んできてくれ。話があるんだ」
すぐにリセラを呼んでもらい、待っているとリセラはやや疲れた表情でやってきた。
「ダミアン様ぁ!わ、わたくし、もう!」
僕の顔を見るなり、涙をこぼし、泣きながら聖女の力を酷使されていると訴えた。
(聖女に対して! そして未来の王子妃、ゆくゆくは未来の王妃に対して酷使するとは何事だ!
力がうまく発揮できないのも、そのせいに違いない!)
そう考えたダミアンは、すぐに教皇に聖女を無理に働かせないよう訴え、聖女の力を使用するにあたり、色々な制約を行うように提案した。
最近、聖女に対する不満がちらほらと聞こえるようになった。
「聖女様の治療を受けるには、高額の治療費を払わないといけないらしい」
「治療を受けられる人数も、1日10人のみとか」
「聖女の力を貯めるために、しばらくは、結界の修復は行われないらしい」
「学業に専念すると言って、毎日のお祈りをしてないらしい」
最初は教会内のみでささやかれていた不満が、徐々に民衆に広がっていった。
主に治療が受けられる人たちは、金持ちの貴族たちばかりで、救護院にいる平民たちには目もくれないらしい。
しかし聖女に対して不満を言う事は不敬であり、結界が薄れている今、結界の修復ができる聖女はなくてはならない存在であることも周知されているため、表立って悪く言う者はいなかった。
学園にてリセラは、ダミアンやミゼル、オルガと共に昼食を共にしていた。
「ダミアン様ぁ。ダミアン様のおかげで、最近はようやく疲れもとれて、落ち着いて生活できるようになりましたわぁ。やはり、あの改善策は必要でしたのね!」
リセラに褒められて、ダミアンは嬉しそうだ。ミゼルやオルガも慌てて、
「リセラ! 君の活躍は、本当に素晴らしいものだ!」
「そうだとも! 誰も出来ないことをしているんだ! そんな君と懇意にしている僕達も鼻が高いよ!」
そう言って、口々に褒めた。
それを聞いたリセラは、思いついた。
(モブ女の始末は、この3人にしてもらいましょう。モブのくせに、聖女の力があるなんて生意気なのよ!)
リセラは急に顔を暗くし、
「でも……」
と、泣きそうな表情になった。
それを見て慌てた3人が、
「どうしたんだ⁉︎ 何か困った事でもあるのか?」
と、尋ねた。
「実は……。わたくしの他にも、結界の修復が出来る人がいると、小耳に挟んだのです。
わたくしが必死になって結界穴を修復しに行った時、付き添いで来ていた官僚の方が、もっと上手く修復出来る者がいると……。
比べられて、わたくしを小馬鹿にするようにおっしゃられました……。わたくしなんて、まだまだなんですわ!」
泣きながら訴えたリセラを見て、3人は憤慨した。
「誰だ! 勝手にそんなデマを言っているのは! 結界穴を修復出来る者がそうそういるはずないだろう!
リセラ、その官僚は、誰がその力を使えたと言っていたんだ?」
ダミアンは尋ねた。
「……ミーシャさんです」
リセラの返答を聞いたダミアン、オルガ、ミゼルは口々に怒りながら叫んだ。
「またあの女か!」
「聖女の力を騙るなんて許せない!」
「思い知らせてやりましょう!」
それらの言葉を聞きながら、リセラは彼らに見えない様にこっそりとほくそ笑んだ。
(リセラが聖女だった。これで父上は、僕とリセラの仲を認めてくれるはずだ。
気位ばかり高いあの女とは、早く婚約破棄しなければ!)
ダミアンは、陛下にユーリとの婚約破棄を訴え、聖女リセラと婚約できるように願い出た。
「ダミアンよ。その聖女なのだが、どうやらあまり力が発揮出来ていないようだ。
あの者は本当に魔物討伐の時、聖女の力を発現したのか?」
陛下のその言葉に、ダミアンは必死になってあの時のことを説明した。
「何をおっしゃいますか! 確かに私は見たのです。魔物に襲われそうになった時、急にリセラの体が光に包まれ、周囲にいた魔物たちは一気に消滅しました!
深手を負った者に対しても、あっという間に治癒していました! あれほどの力は絶対に聖なる力に間違いありません!
陛下も、リセラの治癒魔法は確認されたでしょう⁉︎」
ダミアンの言葉に、陛下は困惑したような表情で、
「そ、そうか。しかし結界修復が、あまり上手くいっていないようだ。もう少し様子を見てみよう。
婚約の話は今はするでない。聖女が出現したからといって、すぐにミホーク公爵令嬢と婚約破棄をし、聖女と婚約すれば、公爵からも世論からも非難を受けることになるぞ。」
と、告げた。
陛下の言葉に、悔しそうに歯噛みするも、しかし一理あると考えたダミアンは、しぶしぶ訴えを取り下げた。
(……もっとリセラに力を発揮してもらい、陛下に認めてもらわなければ。
ユーリとの婚約破棄は、学園の卒業式に公衆の面前で堂々と行なってやる!)
ダミアンはリセラのいる教会に向かった。
「リセラはいるか?」
近くにいた修道女に尋ねると、
「聖女様は、今お部屋にて御休憩をなさっております」
とやや複雑な表情で答えた。
「呼んできてくれ。話があるんだ」
すぐにリセラを呼んでもらい、待っているとリセラはやや疲れた表情でやってきた。
「ダミアン様ぁ!わ、わたくし、もう!」
僕の顔を見るなり、涙をこぼし、泣きながら聖女の力を酷使されていると訴えた。
(聖女に対して! そして未来の王子妃、ゆくゆくは未来の王妃に対して酷使するとは何事だ!
力がうまく発揮できないのも、そのせいに違いない!)
そう考えたダミアンは、すぐに教皇に聖女を無理に働かせないよう訴え、聖女の力を使用するにあたり、色々な制約を行うように提案した。
最近、聖女に対する不満がちらほらと聞こえるようになった。
「聖女様の治療を受けるには、高額の治療費を払わないといけないらしい」
「治療を受けられる人数も、1日10人のみとか」
「聖女の力を貯めるために、しばらくは、結界の修復は行われないらしい」
「学業に専念すると言って、毎日のお祈りをしてないらしい」
最初は教会内のみでささやかれていた不満が、徐々に民衆に広がっていった。
主に治療が受けられる人たちは、金持ちの貴族たちばかりで、救護院にいる平民たちには目もくれないらしい。
しかし聖女に対して不満を言う事は不敬であり、結界が薄れている今、結界の修復ができる聖女はなくてはならない存在であることも周知されているため、表立って悪く言う者はいなかった。
学園にてリセラは、ダミアンやミゼル、オルガと共に昼食を共にしていた。
「ダミアン様ぁ。ダミアン様のおかげで、最近はようやく疲れもとれて、落ち着いて生活できるようになりましたわぁ。やはり、あの改善策は必要でしたのね!」
リセラに褒められて、ダミアンは嬉しそうだ。ミゼルやオルガも慌てて、
「リセラ! 君の活躍は、本当に素晴らしいものだ!」
「そうだとも! 誰も出来ないことをしているんだ! そんな君と懇意にしている僕達も鼻が高いよ!」
そう言って、口々に褒めた。
それを聞いたリセラは、思いついた。
(モブ女の始末は、この3人にしてもらいましょう。モブのくせに、聖女の力があるなんて生意気なのよ!)
リセラは急に顔を暗くし、
「でも……」
と、泣きそうな表情になった。
それを見て慌てた3人が、
「どうしたんだ⁉︎ 何か困った事でもあるのか?」
と、尋ねた。
「実は……。わたくしの他にも、結界の修復が出来る人がいると、小耳に挟んだのです。
わたくしが必死になって結界穴を修復しに行った時、付き添いで来ていた官僚の方が、もっと上手く修復出来る者がいると……。
比べられて、わたくしを小馬鹿にするようにおっしゃられました……。わたくしなんて、まだまだなんですわ!」
泣きながら訴えたリセラを見て、3人は憤慨した。
「誰だ! 勝手にそんなデマを言っているのは! 結界穴を修復出来る者がそうそういるはずないだろう!
リセラ、その官僚は、誰がその力を使えたと言っていたんだ?」
ダミアンは尋ねた。
「……ミーシャさんです」
リセラの返答を聞いたダミアン、オルガ、ミゼルは口々に怒りながら叫んだ。
「またあの女か!」
「聖女の力を騙るなんて許せない!」
「思い知らせてやりましょう!」
それらの言葉を聞きながら、リセラは彼らに見えない様にこっそりとほくそ笑んだ。
270
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]
himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜
経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑)
はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる