【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか

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第三話

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 休憩室の前まで到着し入ろうとすると、ドアが少し開いており、中から人の声がする。使用中だとアルベルト様を振り返るが、アルベルト様が、人差し指を口に当てて、静かにするよう伝えてくる。
 不思議に思っていると、中から男の人の声が聞こえてきた。
 そしてドアの隙間から、抱き合って口付けをしている2人の男性が見える。


「僕以外の男にあんなに愛想を振りまいて話すなんて。アーノルド、君にはキツいお仕置が必要なようだね」

「ごめんよ、ザカリー。許して……あっ!」

 そして、熱い抱擁を交わしながら、ソファに倒れ込んだ。

 ええええええ~!
 うそ~!こんな所で!?
 すごい場面を見てしまったぁ!

 ……って、ちょっと待って?
 アーノルド……アーノルド……
 えっ! 宰相おじ様!?
 あっ! 相手の人、迎えに来てた宰相補佐官だ!
 なんてこと!
 男色家だったの!? 
 しかも、受け身の方なの~!?

 
 あまりのショックに、私は口が開いたままその場を動く事が出来なかった。
 そんな私を、
「ジル、行くよ。ジルには刺激が強すぎる」
と、アルベルト様が私の手を引いて、その場から連れ出してくれる。

 ……でも。

「口が……! ジル、口が開いたまま……ククッ」
と、肩を震わせて笑いながらだったけれど!


 結局またパーティ会場に戻り、人混みを避けて休憩する為に、バルコニーに出た。

「飲み物を取ってくるね」

 アルベルト様がそう言って、中に取りに行ってくれる。
 私は夜風に当たりながら、それを待っていた。



「あら、ハミルトン伯爵令嬢じゃありませんの。こんな所で1人とは、アルベルト殿下に愛想でも尽かされたのかしら」
と、バーベラ・フェリス侯爵令嬢が、いつもの様に取り巻きを従えて、笑いながら話しかけてきた。
 
「……ごきげんよう。フェリス侯爵令嬢」

 一応挨拶をしておく。

 この方は、幼い頃、アルベルト殿下の婚約者候補として、私と共に名前が上がった方だ。
 私が婚約者に決まった事を、許せないらしい。あの頃から、私に色々の難癖を付けてくるのだ。

「アルベルト様は今、飲み物を取りに行ってくれているのです」

 私がそう伝えると、
「まぁ! 殿下を使うなんて、なんて身の程を弁えない方なんでしょう! 本当にアルベルト殿下がお気の毒ですわ!」

 そうでしょう皆様、と取り巻き達と蔑むように笑いながら言ってくる。

 懲りないなぁ。こういう時、必ずと言っていい程アルベルト様はやってくるのに。


「ジル、お待たせ。……何かあったの?」

 ほら来た。いつも絶妙なタイミング。
 
 そしてフェリス侯爵令嬢の姿を発見して、すぐにアルベルト様は警戒態勢を取る。

「フェリス侯爵令嬢、これは一体?」

「これはアルベルト殿下。ご挨拶申し上げますわ。別に何もありませんのよ。
 ハミルトン伯爵令嬢が、お1人でしたので、お声を掛けていただけですわ」

 フェリス侯爵令嬢が平然とした様子で答える。

「ジル、本当に?」

 アルベルト様の問いに、
「はい。お声を掛けて頂いただけですわ。
 今は

 シレッと答えると、フェリス侯爵令嬢は口元を扇で隠しながら、鋭く私を睨んでくる。

 そんな私達を見て軽く溜め息を吐いた後、
「では、私達はこれで失礼する。行こうか、ジル」

 アルベルト様は私をエスコートしながら、この場から離れた。


 結局、パーティ会場の中に戻り、そこで持ってきて頂いた果実水を飲んで、小休憩を取る。
「ジル、フェリス侯爵令嬢にまた意地悪されたんじゃないの?」
と、アルベルト様が心配そうに聞いてくる。

「大丈夫ですわ。気になさらないで下さいませ」

 笑顔で答える。
 うん、本当に大丈夫なんだよね。
 だって、幼い時からよ?
 しかも嫌味程度だし、そんなの慣れちゃうわ。

 それからも、適度にダンスをしたり、用意されてある軽食をつまんだりしながら、その日は帰宅した。
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