【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか

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第九話

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 う~ん、なんか顔が痛い。耳元で大声で叫ばれてるし、うるさい。わかったから叫ばないでよ。

「ジル! ジル! ああ、頬がこんなに腫れて! ジル! 目を覚まして!」

 その声にハッとして私は目が覚めた。
 そして、今、アルベルト様が私を膝に乗せて抱き抱えながら、心配そうに私の顔を覗き込んでいる事がわかった。

 って、えっ?
 なに、この状況。
 え~っと、私、どうしたんだっけ?
 確か、ドレス汚されたから馬車に乗って帰る途中で……。

「あーーーー!」
 思い出した! 馬車が襲われて、誰かに引き摺り出されそうになって、殴られたんだ!

「ジル! 良かった、目が覚めたんだね!」
 アルベルト様が泣きそうな顔で私の顔を見る。

「アルベルト様? 何故アルベルト様がいるのです? 私、どうなってたんですか?」

「ジルが馬車に乗ってる最中に襲われたって報告を受けたんだ。ジルに付けてた影と護衛騎士のお陰で、攫われる前に助け出せて、本当に良かった」

 アルベルト様が私を抱き締めて、そう話す。そして、そのまま私の頬に手を添え、
「頬を殴られてしまったんだね。城に着いたら、すぐに手当をしてもらうよう手配しているよ。もう大丈夫だからね」
と、大事な宝物を扱うように丁重に労わってくれる。

 そんなアルベルト様を見ていると、徐々に先程の恐怖を思い出し、私はアルベルト様にしがみついて泣いてしまった。

「えっ!? どうしたのジル? 他にも何処か痛い? 
 早く、城まで急いでくれ!」

 焦ったアルベルト様が、馬車を急がせた。
 そして、私はアルベルト様の温もりに包まれながら、また気を失ってしまった。




──── コンコン
 ドアのノックの音に気づき、「はい」と返事をする。

 入って来たのはアルベルト様だ。

「良かった、ジル。目が覚めてたんだね」

 城に着いた私は、アルベルト様の部屋のベッドに寝かされて治療を受けたようだ。
 医者の話では、頬を殴られて倒れ込んだ時に頭を打ち、脳震盪を起こしたのだろうとの事だった。
 そう。ここはアルベルト様の部屋。
 アルベルト様のベッドで私は横になっている……。

 いやっ、駄目でしょう!
 
「アルベルト様! 何故私がこの部屋で寝ているのでしょう!?」

 慌てている私に、なんて事はないふうに
「え? 婚約者なんだから問題ないでしょ?
それに急だったから、客間の準備が間に合わなかったし」

 問題はある。あるが、急に部屋が準備出来なかったと言われると、何とも言えない。

 それよりも私がアルベルト様に言わなければならないのは、感謝の言葉だ。

「アルベルト様。この度は危ないところを助けて頂き、本当にありがとうございます」

 起き上がろうとした私を、軽く推し留めてアルベルト様は、首を横に振る。

「助けるのは当たり前だよ。
 ジルに何かあったら僕が耐えられない。
 本当に無事で良かった」
 
 アルベルト様が私の手を握りしめて、真剣な眼差しで見つめてそう言った。

 ドキン

 ん? ドキン?
 アルベルト様に見つめられて、私、今ときめいてる!?

 一旦意識すると、握りしめられている大きな手や、さっき抱き締められた時の温もりなどを思い出し、一気に恥ずかしくなる。

 真っ赤になった私を見て、熱があるのか心配したアルベルト様だったけど、何とか大丈夫である事を伝えて納得してもらった。

「あの、わたくしもう大丈夫ですので、そろそろ帰ろうかと……」
 私がそう言うと、
「ああ、今日は大事を取って1晩ここで休んでいく? 添い寝してあげるよ」
と、笑顔で言う。

 その笑顔は、今まで見たことのないくらいの色気が含まれていて……。

「いえ! 帰ります!」
 恥ずかしくて全力で拒否してしまった。

 アルベルト様はそんな私の様子を気にせず「そう? 残念。まぁ、君の母君と兄上が迎えに来ているから、仕方ないか」
と、余裕の笑顔を見せる。

 くっ! からかわれたのかしら。

 そして私は、母と兄と共に家に戻った。





──── さて。

 僕のジルをこんな目に遭わせた者をどうするか。

 
 ジルを助け出し、犯人たちを一網打尽にし、何故ジルを襲ったのか吐かせた。

 最初は口を割らなかったけど、吐かせる方法などいくらでもある。

 その方法を一つ一つ試していくと、案外早めに口を割った。
 もっと色々試したかったのに残念だ。

 で、黒幕が誰なのかを突き止めた。

 バーベラ・フェリス侯爵令嬢

 あの女が破落戸を雇い、ジルが暴漢に襲われたと見せかけて、ジルを乱暴したあとで殺すつもりだったらしい。

 それを聞いた時は怒りで全身の血が沸騰しそうになった。

 絶対に許さない。

 まずはジルの顔を殴った奴に、生まれてきたことを後悔してもらわないとね。

 
 フェリス侯爵令嬢は、どうしてやろうか。
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