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第十話

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 私はあの事件のあと、顔の腫れが治るまで学園を休んで、自宅療養をしていた。
 と言っても、別に病気でもないし、顔の腫れも大分ひいている。
 明日にでも学園にいけそうなのだが、アルベルト様がまだ許可を出してくれないのだ。
 
 そしてアルベルト様は、毎日うちに見舞いに来てくれる。

「ジル。お見舞いに来たよ。調子はどうかな?」

「アルベルト様、ありがとうございます。
 お陰様ですっかり良くなりましたのよ。明日にでも学園に戻れそうですわ」

 私がそう言うも、なかなか首を縦に振らない。

「もう少し安静にした方がいいよ。脳震盪を起こしたんだから、油断は禁物だよ」

 この会話も数日は繰り返している。

「犯人は捕まえたのですよね? 目的は何だったのです?」

 ずっと気になっていたので、聞いてみた。

 アルベルト様はニッコリ笑って、
「ジルは気にしなくていいよ。もうこんな事は起きないからね」
 と、教えてくれない。
 犯人の事を聞いても同じだった。


 暫くして、ようやくアルベルト様から学園に行く許可がおりて、久しぶりに学園に通うと、いつもと少し雰囲気が変わっていた。

 何だろう? やけに静かだわ
 そう思っていた時に気付いた。

 あ、いつも絡んでくるフェリス侯爵令嬢がいないんだ。

 どうしたんだろうと思っていた時に、前方からフェリス侯爵令嬢の取り巻きをしていた令嬢の1人が、こちらに向かって歩いてきた。

「ごきげんよう。あの、少しお伺いしたいのですが、フェリス侯爵令嬢はどちらにいらっしゃるのか、ご存知?」

 私に気付き、質問を聞いた途端、身体を震わせながら、
「ご、ごめんなさい。わたくし知りません。申し訳ございません!」

 そう言って、慌てて去っていく。

 何? その反応。
 今までそんな反応してなかったよね?
 いつも侯爵令嬢と一緒に、嫌味の1つくらい言ってこなかったっけ?

 その後も同じような場面に遭遇し、首を傾げるような事が続いた。


 その数週間後、フェリス侯爵令嬢は退学したことを聞いた。
 そして、なんと驚いた事に、フェリス侯爵家自体も没落したとか。
 一体何が起きれば侯爵家が没落するのか。
 全く謎のまま、日は過ぎていった。



 そして、私はいつもの日常に戻っている。
 今日も恒例の婚約者とのお茶会だ。

 ただ最近は、気の抜けたお茶会とは行かなくなった。
 何故ならば、私がアルベルト様を意識し始めたから。
 テンプレートの褒め言葉でさえ、嬉しくて照れてしまう。
 おかしい。私の好みでは無いはずなのに。


 そして、そのアルベルト様は、いつも機嫌は良かったが、更に最近は上機嫌だ。
 そして、とにかく甘い。甘すぎる。
 私は調子が崩されっぱなしで、何だか悔しい。
 でも、アルベルト様が嬉しそうだから、まぁいいか。


 そんな感じで、いつものお茶会を楽しんでいた。

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