【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(23)「夕陽の下で」

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その日の夕方、アリシアは庭園のベンチに腰掛けていた。

隣にはカイゼルが座っており、彼の腕にはリーヴェがまるで王座にでもいるかのように落ち着いてとまっている。

リーヴェは時折、羽を軽く動かすだけでほとんど動かない。

カイゼルの腕の中にいるときのリーヴェは、あの追いかけっこの時とはまるで別人――いや、別鳥のようだ。  

アリシアは横目でリーヴェをちらりと見た後、柔らかく微笑んだ。  

「陛下、リーヴェ、本当に可愛いですね。」  

その言葉に、カイゼルは無表情のまま少しだけ視線を向けた。  

「そうか。」  

短い返事だが、どこか満足げな響きがあるような気がする。  

「はい。最初は怖かったですけど、こうして見るとおとなしいし、陛下になついてるのがよくわかります。」  

アリシアがそう言うと、リーヴェがタイミングよく小さく鳴き、カイゼルの指にくちばしを軽く触れた。

それを見てアリシアは小さく笑った。  

「リーヴェも陛下が大好きなんですね。」  

その笑顔を横目で見たカイゼルが、一瞬だけ目を細めた。

その表情にアリシアはドキリとしたが、すぐに彼の顔はいつもの無表情に戻った。  

「余はリーヴェを守る。そして、お前も。」  

突然の言葉に、アリシアは一瞬耳を疑った。  

「え……?」  

自分が聞き間違えたのかな。

何を言われたのか一瞬わからず、ただ彼の横顔を見つめる。  

カイゼルは特に説明する様子もなく、スッと立ち上がった。

その動きは無駄がなく、凛々しい。

夕日が彼のシルエットを浮かび上がらせ、その姿はまるで絵画の中から抜け出してきたかのようだ。  

「日が沈む。中に入れ。」  

それだけ言い残し、彼はリーヴェを腕に抱えたままゆっくりと歩き出した。

アリシアはその背中を見つめながら、立ち上がるタイミングを逃しそうになった。  

「……なんなの、今の。」  

彼の背中を追いながら、胸に手を当てる。

彼の言葉が不意打ちすぎて、まだ頭の中で反芻している。

自分も守る――?そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。  

「不器用すぎる……でも……」  

心の中でつぶやいた言葉はそこで途切れた。

カイゼルの後ろ姿がどこか安心感を与えることに気づいたからだ。  

夕焼けに照らされた庭園は黄金色に輝き、木々の影が地面に長く伸びている。

風が葉をそよがせる音とリーヴェの小さな羽ばたきの音だけが静かな庭園に響いていた。  

「この人、なんだか不器用だけど……本当に優しいのかも。」  

アリシアはそう思わずにはいられなかった。

彼の言葉が短くとも、その裏にある誠実さを感じることができたから。  

夕陽が完全に沈む前、彼女は一歩一歩カイゼルの後を追いながら、そっと微笑んだ。

その微笑みには、自分でもまだ気づいていない、少しだけ特別な感情が混じっていた。
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