【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(22)鷹と皇帝の意地の張り合い

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リーヴェは高い木の枝に止まったかと思えば、次の瞬間には鋭い翼を広げ、まるで気まぐれな風のように急降下した。

宙を舞い、再び庭の向こうへ飛び去るその姿は、自由そのものだ。地上ではカイゼルが必死にその後を追いかけている。  

「捕まえろ!」  

「リーヴェ様、こちらです!」  

兵士たちは必死に指示を出し合っているものの、その混乱ぶりは傍から見ても明らかだ。

リーヴェの動きには到底ついていけず、全員がただ翻弄されるばかり。

木々の間を駆け抜ける皇帝とその愛鷹の追いかけっこは、どこか絵画のような奇妙な美しさすら感じさせる。  

アリシアは廊下からその光景を見ていたが、ついに我慢できず声を張り上げた。  

「陛下!どうして自分で追いかけてるんですか!?兵士たちに任せればいいのに!」  

カイゼルは振り返ることなく、鋭い声を返してきた。  

「余が捕まえたほうが早い。」  

その一言に、アリシアは言葉を失った。

確かに一理ある。

兵士たちがあの有様では、頼れるのはカイゼル自身というのも納得だ。しかし――  

「でも、皇帝が全力疾走するなんて……ありえなくない?」  

冷酷無表情な彼が庭を駆け回る姿はどこか滑稽で、同時に妙に魅力的でもあった。

普段の彼の威厳を思えば、そのギャップに笑いそうになる自分をどうにか抑えつつ、アリシアは窓の外に釘付けになっている。  

リーヴェは木々の間を自由自在に飛び回り、そのたびに兵士たちが慌てふためいて追いかけるが、全く歯が立たない。

木の葉が舞い、枝が揺れる音が庭中に響き渡る。  

「本当にこれ、どうなるの?」  

不安と好奇心の入り混じった表情で見守っていると――その瞬間が訪れた。  

カイゼルは一直線にリーヴェの軌道を見極め、地面を蹴ると、まるで狩猟の獣のように高く飛び上がった。

そして次の瞬間、彼の腕には大人しく捕らえられたリーヴェの姿があった。  

「捕まえた。」  

カイゼルは、土や葉にまみれながらも淡々と言い放つ。

その声にどこか誇らしさを感じるのは気のせいだろうか。  

「すごい!陛下、本当に捕まえちゃうなんて!」  

アリシアは思わず廊下から身を乗り出し、拍手を送った。

カイゼルが少しだけ彼女を見上げたような気がしたが、特に何も言わない。

ただ、リーヴェをしっかりと抱えたまま悠然と地面に降り立つ。  

「当然だ。余に不可能はない。」  

その言葉には彼特有の堂々とした響きがあり、カッコつけているようにも聞こえるが、土まみれの彼の姿を見れば、どこか滑稽でもあり、親しみすら感じた。

アリシアは笑いをこらえながら、彼に向かって声をかけた。  

「でも、陛下って本当にリーヴェが大事なんですね。こんなに一生懸命になるなんて。」  

そう言うと、カイゼルは静かにリーヴェの頭を撫で、短く答えた。  

「当たり前だ。リーヴェは余の家族だ。」  

その言葉に、アリシアの胸の中に小さな温かさが広がった。

いつも冷たい表情しか見せない彼にも、こんなに大切に思うものがあるのだと思うと、何か不器用ながらも優しさを感じた。  

「家族……」  

アリシアはその言葉を反芻しながら、目の前の光景を見つめる。

リーヴェが羽を畳み、大人しく彼の腕の中に収まっている様子はどこか愛らしい。  

「陛下って、意外と優しいところもあるのね。」  

そう心の中で呟きつつ、アリシアは彼の背中を見送りながら、少しだけ笑みを浮かべた。

それは、自分でも気づかないうちに浮かんだ自然な笑顔だった。
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