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剣術大会
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ガンッ
振り下ろされた剣を受ける音が響き渡った。
さっきまで響いていた、カン、カンと剣同士がぶつかり合う音とは違う。
鈍くて重い音の振動が、観客席まで伝わってくる。
息つく間もなく、剣は振り下ろされる。
ガンッ、ガンッ、ガツン…
身体の大きさは見掛け倒しではないようだ。その剣には、相当な力が込められているはずだ。
…あんなん、受けるだけでも精一杯だろ。
受ける側のユリウスが、少しずつ後退して行く。
少しでも受け切ることができなければ、大怪我どころじゃ済まされない。
やり過ぎじゃないか…
たかが大会で死者が出たらどうするんだよ…
一際大きく剣が振り翳された。
ひっ、観客席の至る所から息を飲む声があがる。
もういい!ユリウス、降参だ、降参って言え!
ぶわっと剣が振り下ろされる。今までで一番速くて、きっと一番重い。
ゴツッ
ユリウス!!!
…え?
一本の剣がくるくると円を描いて宙に舞い上がり、それからすとんと落ちてきた。
落ちてきた剣の横に倒れ込んでいるのは、剣を振り翳していた方の騎士で、その喉元には剣の切先が向けられている。
ユリウスは表情一つ変えず、息一つ乱れていない。
一瞬の静寂の後、今日一番の歓声が沸き起こった。
歓声なんて聞こえていないのか、ユリウスは呆然として立ち上がれない騎士に手を差し伸べ、やっと起き上がった相手に落ちていた剣を拾って渡している。
「ユリウス、ツヨイネ。」
「相変わらずの腕だな。」
「ちょっとだけ、どきどきしちゃったわ~」
「強いある!」
「まだまだ序の口であろう。」
前に座る妃たちが口々に何か言っているが、ユリウスに釘付けで、全く耳に入ってこない。
勝った!?
あの鬼、いや大きな騎士に?
いつも観ていたユリウスとは比べ物にならない。何倍も、何倍も凄かった。
王族席に向かってユリウスが一礼している。
ああ、このベール邪魔だな。これがなかったら、もっとはっきり観えたのに!
「ダメ。シー、ダヨ。ガマン。」
俺の気持ちを見透かしているのか、五妃から肩越しに嗜められる。
仕方ないので、ユリウスに向かって小さく拳を作って、やったな!という気持ちを伝えてみるが、俺がここにいるなんてわからないだろう。
静かに顔を上げたユリウスと一瞬だけ目が合ったような気がする。俺の拳は握りしめたままだ。
ベールがあるから目が合ったような気がするのは、気がするだけで気のせいで、少し淋しい。ユリウスはそのまま背を向けると、控え席の方に行ってしまった。
本当にあんな相手に勝ったんだな。
まだ初戦だと言うのに、俺の興奮はおさまらないままで、そんな中二戦目、三戦目は、一瞬で終わってしまった。
始めの合図と共に、ユリウスの操る剣はあっという間に相手の首筋や心臓目掛けて寸止めされる。これが実戦だったら、相手は一瞬であの世行きだっただろう。
なぜか始まる前から向かい合っている時点で、相手は怯んでいるように見えた。
なんでだ?
「強い相手ほど、ユリウスと真正面から向き合うのが恐ろしいと言います。今回も健在ですな。」
ルドルフが王に話し掛ける声が聞こえてきて、思わず耳を澄ましてしまう。
そうなの?真正面…。
いつも真正面から向き合っているけど、俺は何も感じないぞ。
それは俺が弱いからなのか……
「そのようだな。また優勝するようなことがあれば、今回はどうするのか。またルドルフか?」
王の言葉に、妃たちがくすくすと笑っている。
「いや、それは…」
ルドルフが眉を顰めて困惑している。
「一年経ったからの。他に相手ができたやもしれん。嫉妬するか、ルドルフ?」
一妃も可笑しそうに笑っている。
何の話しだ?
ルドルフは、大きく溜め息をついた。
「ユリウスは何か勘違いしているようです。いつかユリウスにそう言った相手ができるまで代わりに保管しておくしかないでしょう。」
「なんと言っても、ユリウスはああ見えてまだ…」
「シュヴァイゼル様!」
まだ?王、父さんは何を言おうとしたんだろ?
王の揶揄うような物言いに、ルドルフが少し怒っているようだ。
みんなして何の話しをしているのか俺にはさっぱりだが、そろそろ次は四戦目だ。
次の相手は確か…
きょろきょろとしていると、黄色い声援を浴び続けていた金髪の青年が一妃の前までやってきた。この騎士もまだ勝ち続けている。
どこかで観たことがあるような、と思っていたが、向かい合う二人はよく似ている。
「母上、如何ですか?わたしには無理だと仰っしゃられていましたが、ここまで勝ち抜きました。」
「ふん。次はユリウスじゃ。」
「ユリウスとて、負ける気はしません。ユリウスを跪かせるのは私です。」
「それは、どうかの。」
「父上も、どうかわたしの実力をご覧になっていて下さい。」
不敵に笑って去るその姿は、なんかこう、気障だ。
金髪で一妃に似た彫の深い彫刻みたいな顔立ちをしているあれは、父上母上と言っていた。
つまりは、第一王子だ。
んでもって、俺の兄さん?
初めての対面になるが、向こうは俺のことなど全く目に入っていないようだった。
それもそうか。こんな格好だし。
なんか兄さんとか呼んだら怒られそうな気がするし、呼んでやらない。
ユリウスを跪かせるとか言う奴は、仮に兄さんだとしても、とっても気に入らないからな。
振り下ろされた剣を受ける音が響き渡った。
さっきまで響いていた、カン、カンと剣同士がぶつかり合う音とは違う。
鈍くて重い音の振動が、観客席まで伝わってくる。
息つく間もなく、剣は振り下ろされる。
ガンッ、ガンッ、ガツン…
身体の大きさは見掛け倒しではないようだ。その剣には、相当な力が込められているはずだ。
…あんなん、受けるだけでも精一杯だろ。
受ける側のユリウスが、少しずつ後退して行く。
少しでも受け切ることができなければ、大怪我どころじゃ済まされない。
やり過ぎじゃないか…
たかが大会で死者が出たらどうするんだよ…
一際大きく剣が振り翳された。
ひっ、観客席の至る所から息を飲む声があがる。
もういい!ユリウス、降参だ、降参って言え!
ぶわっと剣が振り下ろされる。今までで一番速くて、きっと一番重い。
ゴツッ
ユリウス!!!
…え?
一本の剣がくるくると円を描いて宙に舞い上がり、それからすとんと落ちてきた。
落ちてきた剣の横に倒れ込んでいるのは、剣を振り翳していた方の騎士で、その喉元には剣の切先が向けられている。
ユリウスは表情一つ変えず、息一つ乱れていない。
一瞬の静寂の後、今日一番の歓声が沸き起こった。
歓声なんて聞こえていないのか、ユリウスは呆然として立ち上がれない騎士に手を差し伸べ、やっと起き上がった相手に落ちていた剣を拾って渡している。
「ユリウス、ツヨイネ。」
「相変わらずの腕だな。」
「ちょっとだけ、どきどきしちゃったわ~」
「強いある!」
「まだまだ序の口であろう。」
前に座る妃たちが口々に何か言っているが、ユリウスに釘付けで、全く耳に入ってこない。
勝った!?
あの鬼、いや大きな騎士に?
いつも観ていたユリウスとは比べ物にならない。何倍も、何倍も凄かった。
王族席に向かってユリウスが一礼している。
ああ、このベール邪魔だな。これがなかったら、もっとはっきり観えたのに!
「ダメ。シー、ダヨ。ガマン。」
俺の気持ちを見透かしているのか、五妃から肩越しに嗜められる。
仕方ないので、ユリウスに向かって小さく拳を作って、やったな!という気持ちを伝えてみるが、俺がここにいるなんてわからないだろう。
静かに顔を上げたユリウスと一瞬だけ目が合ったような気がする。俺の拳は握りしめたままだ。
ベールがあるから目が合ったような気がするのは、気がするだけで気のせいで、少し淋しい。ユリウスはそのまま背を向けると、控え席の方に行ってしまった。
本当にあんな相手に勝ったんだな。
まだ初戦だと言うのに、俺の興奮はおさまらないままで、そんな中二戦目、三戦目は、一瞬で終わってしまった。
始めの合図と共に、ユリウスの操る剣はあっという間に相手の首筋や心臓目掛けて寸止めされる。これが実戦だったら、相手は一瞬であの世行きだっただろう。
なぜか始まる前から向かい合っている時点で、相手は怯んでいるように見えた。
なんでだ?
「強い相手ほど、ユリウスと真正面から向き合うのが恐ろしいと言います。今回も健在ですな。」
ルドルフが王に話し掛ける声が聞こえてきて、思わず耳を澄ましてしまう。
そうなの?真正面…。
いつも真正面から向き合っているけど、俺は何も感じないぞ。
それは俺が弱いからなのか……
「そのようだな。また優勝するようなことがあれば、今回はどうするのか。またルドルフか?」
王の言葉に、妃たちがくすくすと笑っている。
「いや、それは…」
ルドルフが眉を顰めて困惑している。
「一年経ったからの。他に相手ができたやもしれん。嫉妬するか、ルドルフ?」
一妃も可笑しそうに笑っている。
何の話しだ?
ルドルフは、大きく溜め息をついた。
「ユリウスは何か勘違いしているようです。いつかユリウスにそう言った相手ができるまで代わりに保管しておくしかないでしょう。」
「なんと言っても、ユリウスはああ見えてまだ…」
「シュヴァイゼル様!」
まだ?王、父さんは何を言おうとしたんだろ?
王の揶揄うような物言いに、ルドルフが少し怒っているようだ。
みんなして何の話しをしているのか俺にはさっぱりだが、そろそろ次は四戦目だ。
次の相手は確か…
きょろきょろとしていると、黄色い声援を浴び続けていた金髪の青年が一妃の前までやってきた。この騎士もまだ勝ち続けている。
どこかで観たことがあるような、と思っていたが、向かい合う二人はよく似ている。
「母上、如何ですか?わたしには無理だと仰っしゃられていましたが、ここまで勝ち抜きました。」
「ふん。次はユリウスじゃ。」
「ユリウスとて、負ける気はしません。ユリウスを跪かせるのは私です。」
「それは、どうかの。」
「父上も、どうかわたしの実力をご覧になっていて下さい。」
不敵に笑って去るその姿は、なんかこう、気障だ。
金髪で一妃に似た彫の深い彫刻みたいな顔立ちをしているあれは、父上母上と言っていた。
つまりは、第一王子だ。
んでもって、俺の兄さん?
初めての対面になるが、向こうは俺のことなど全く目に入っていないようだった。
それもそうか。こんな格好だし。
なんか兄さんとか呼んだら怒られそうな気がするし、呼んでやらない。
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第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
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