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第21話
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「わかりました、クォール様。本心から憎い人たちを許すことは難しいですけど、自分が精霊になるためだと思えば、形だけでも憎悪を捨てることができそうです。だから、私の決意の言葉を、聞いていてもらえますか?」
「もちろんだよ」
そして私たちは、祠の外に出て、山頂から村を見下ろした。最近時間の感覚が特に曖昧になっていたが、今は夕刻で、村では煮炊きの為の煙があちこちで上がっている。
その煙の一つ一つが、衰弱しきったいけにえの私を見世物のように楽しんだ村人のものであり、村にはあの『憎い家族たち』もいると思うと、やはり心の中が黒いもので満たされていく。
しかし私は、その黒いものを無理やりに振り払った。もう、あんな村の人たちを憎むことで心を縛られていたくない。『ただの利己心からくる許し』だとしても、憎しみを忘れたい。そして、クォール様と新しい心で生きるんだ。
そう強く願い、静かに、だけど力強く呟く。
「私は憎しみを捨てます。もう、村の人たちについて考えるのもやめます」
それはまさに、自分に言い聞かせた言葉だった。こんなことで、簡単に憎しみが消えるはずはない。しかし、確かな『許しの言葉』であり、口に出すと不思議と心が楽になった気がした。
そんな私の気持ちを読んだかのように、隣のクォール様が微笑む。
「どうだい? 口に出すと、案外気持ちが変わるものだろう?」
「そうかも……しれませんね」
「何にしても、立派なことだよ。きみは憎悪を捨てると宣言した。それはとても気高く、価値のあることだ。これできっと、きみは精霊に転生することができると思うよ」
「あの、もしもできなかったら、私はどうなるのでしょうか? やっぱりさっき言ったみたいに、一人だけ取り残されてしまうんでしょうか……」
「いや、『許しの言葉』を宣言して精霊への道を歩み始めたきみは、もう厳密には人ではないんだ。断言はできないけど、転生に失敗した場合は、おそらく花や小動物に生まれ変わるのだと思う。人としての命を捨てて他の存在を目指す者は、もう二度と人になることはないからね」
「そうですか……」
人として苦悶の一生を過ごした私にとっては、それはそれで素敵なことのような気がした。もちろん、クォール様と共に行くことができないのは悲しいが。
その悲しみが伝わったのか、クォール様は私を安心させるように笑った。
「悲しむ必要はないよ、カレン。もしもきみが精霊への転生に失敗したときは、僕もきみと同じ存在に生まれ変わり、二人で共に生きよう。花なら二輪の花として、小動物なら、一組のつがいとなってね」
それは、我が耳を疑う言葉だった。
クォール様が私の身と心を強く案じてくれているのは、これまでのことで十分に分かっていたが、それにしたって、今の言葉は『案じる』の度を越えている。
「もちろんだよ」
そして私たちは、祠の外に出て、山頂から村を見下ろした。最近時間の感覚が特に曖昧になっていたが、今は夕刻で、村では煮炊きの為の煙があちこちで上がっている。
その煙の一つ一つが、衰弱しきったいけにえの私を見世物のように楽しんだ村人のものであり、村にはあの『憎い家族たち』もいると思うと、やはり心の中が黒いもので満たされていく。
しかし私は、その黒いものを無理やりに振り払った。もう、あんな村の人たちを憎むことで心を縛られていたくない。『ただの利己心からくる許し』だとしても、憎しみを忘れたい。そして、クォール様と新しい心で生きるんだ。
そう強く願い、静かに、だけど力強く呟く。
「私は憎しみを捨てます。もう、村の人たちについて考えるのもやめます」
それはまさに、自分に言い聞かせた言葉だった。こんなことで、簡単に憎しみが消えるはずはない。しかし、確かな『許しの言葉』であり、口に出すと不思議と心が楽になった気がした。
そんな私の気持ちを読んだかのように、隣のクォール様が微笑む。
「どうだい? 口に出すと、案外気持ちが変わるものだろう?」
「そうかも……しれませんね」
「何にしても、立派なことだよ。きみは憎悪を捨てると宣言した。それはとても気高く、価値のあることだ。これできっと、きみは精霊に転生することができると思うよ」
「あの、もしもできなかったら、私はどうなるのでしょうか? やっぱりさっき言ったみたいに、一人だけ取り残されてしまうんでしょうか……」
「いや、『許しの言葉』を宣言して精霊への道を歩み始めたきみは、もう厳密には人ではないんだ。断言はできないけど、転生に失敗した場合は、おそらく花や小動物に生まれ変わるのだと思う。人としての命を捨てて他の存在を目指す者は、もう二度と人になることはないからね」
「そうですか……」
人として苦悶の一生を過ごした私にとっては、それはそれで素敵なことのような気がした。もちろん、クォール様と共に行くことができないのは悲しいが。
その悲しみが伝わったのか、クォール様は私を安心させるように笑った。
「悲しむ必要はないよ、カレン。もしもきみが精霊への転生に失敗したときは、僕もきみと同じ存在に生まれ変わり、二人で共に生きよう。花なら二輪の花として、小動物なら、一組のつがいとなってね」
それは、我が耳を疑う言葉だった。
クォール様が私の身と心を強く案じてくれているのは、これまでのことで十分に分かっていたが、それにしたって、今の言葉は『案じる』の度を越えている。
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