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精霊に愛された素晴らしき村の終焉 第4話
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し、しかし、今になってやっとわかった。目の前にいる怪物どもが、『迫っている危険』ということだったのか。
クソッ、こんなことなら早く逃げていればよかった。あの声の二人が、もっと強く警告してくれれば、こっちだってもう少し真剣に考えたのに。どこのどいつだか知らんが、とんだ役立たずの能無し連中だ。
頭の中で悪態をつき、カレンの父は背中を翻した。悪鬼たちが素直に目を閉じて数を数えているうちに、大急ぎで逃げなければ。
「いーち、にーい、さーん……」
「しーい、ごーお、ろーく……」
「なーな、はーち、きゅーう……」
カレンの父は、笑いをこらえきれなかった。ふふふ、愚鈍な怪物どもめ。それだけチンタラ数えてくれるなら、三分どころか、一分あれば充分だったな。
だが、次に聞こえてきた言葉で、その笑みは凍り付いた。
「じゅう。よーし、探すぞ探すぞー」
「探して、見つけて、殺して、食べちゃうぞー」
「あ、おじさん。まだここにいる。のろま、のろま、うへへへへへ」
カレンの父は、大慌てで叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待て! さっき言っただろう! 数えるのは三分だ! 十秒じゃない! よく考えてみろ! 鬼ごっこじゃあるまいし、たった十秒じゃどこにも隠れられんだろうが!」
悪鬼たちは、お互いの顔を見合わせた。
『それもそうだな』というような顔をしていた。
しかし……
「でも俺たち、数えるの飽きちゃった」
「それに、じゅうの次、知らない。じゅうまでしか、数えられない」
「だから、もう数えない。おじさん、探す。おじさん見つけた。だから殺す」
カレンの父の顔色が、急速に青ざめていく。
それはほとんど、白蝋のようであった。
「馬鹿! 『じゅう』の次は『じゅういち』だ! そして『じゅういち』の次は『じゅうに』! この調子で数えて『じゅうく』まで行ったら、次は『にじゅう』になるんだよ! この際、三分まで数えなくてもいいから、せめて『さんじゅう』くらいまでは数えてくれ!」
必死な様子なカレンの父を見て、三体の悪鬼はゲラゲラと笑った。もう、素直に数える気はなさそうである。それなのに、いまだに説得を試みたのは大きな間違いだった。逃げ出す最後のチャンスを失ったカレンの父は、三体の悪鬼に右腕を掴まれ、左腕を掴まれ、さらに右足と頭を掴まれた。
「ひいぃ」
明らかに人間のそれとは違う怪力に、もう悲鳴を漏らすことしかできない。ズボンの中では、別のものが漏れていた。悪鬼たちは、心から楽しそうに笑って、それぞれが掴んだ右腕左腕右足頭を、それぞれが全く別の方向に引っ張る。
「あぎぎぎぎぎぎ」
間抜けな悲鳴だった。しかし、外聞を気にする余裕などない本当の恐怖と苦痛を与えられた人間の発する叫びは、案外こんなものなのかもしれない。
クソッ、こんなことなら早く逃げていればよかった。あの声の二人が、もっと強く警告してくれれば、こっちだってもう少し真剣に考えたのに。どこのどいつだか知らんが、とんだ役立たずの能無し連中だ。
頭の中で悪態をつき、カレンの父は背中を翻した。悪鬼たちが素直に目を閉じて数を数えているうちに、大急ぎで逃げなければ。
「いーち、にーい、さーん……」
「しーい、ごーお、ろーく……」
「なーな、はーち、きゅーう……」
カレンの父は、笑いをこらえきれなかった。ふふふ、愚鈍な怪物どもめ。それだけチンタラ数えてくれるなら、三分どころか、一分あれば充分だったな。
だが、次に聞こえてきた言葉で、その笑みは凍り付いた。
「じゅう。よーし、探すぞ探すぞー」
「探して、見つけて、殺して、食べちゃうぞー」
「あ、おじさん。まだここにいる。のろま、のろま、うへへへへへ」
カレンの父は、大慌てで叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待て! さっき言っただろう! 数えるのは三分だ! 十秒じゃない! よく考えてみろ! 鬼ごっこじゃあるまいし、たった十秒じゃどこにも隠れられんだろうが!」
悪鬼たちは、お互いの顔を見合わせた。
『それもそうだな』というような顔をしていた。
しかし……
「でも俺たち、数えるの飽きちゃった」
「それに、じゅうの次、知らない。じゅうまでしか、数えられない」
「だから、もう数えない。おじさん、探す。おじさん見つけた。だから殺す」
カレンの父の顔色が、急速に青ざめていく。
それはほとんど、白蝋のようであった。
「馬鹿! 『じゅう』の次は『じゅういち』だ! そして『じゅういち』の次は『じゅうに』! この調子で数えて『じゅうく』まで行ったら、次は『にじゅう』になるんだよ! この際、三分まで数えなくてもいいから、せめて『さんじゅう』くらいまでは数えてくれ!」
必死な様子なカレンの父を見て、三体の悪鬼はゲラゲラと笑った。もう、素直に数える気はなさそうである。それなのに、いまだに説得を試みたのは大きな間違いだった。逃げ出す最後のチャンスを失ったカレンの父は、三体の悪鬼に右腕を掴まれ、左腕を掴まれ、さらに右足と頭を掴まれた。
「ひいぃ」
明らかに人間のそれとは違う怪力に、もう悲鳴を漏らすことしかできない。ズボンの中では、別のものが漏れていた。悪鬼たちは、心から楽しそうに笑って、それぞれが掴んだ右腕左腕右足頭を、それぞれが全く別の方向に引っ張る。
「あぎぎぎぎぎぎ」
間抜けな悲鳴だった。しかし、外聞を気にする余裕などない本当の恐怖と苦痛を与えられた人間の発する叫びは、案外こんなものなのかもしれない。
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