この村の悪霊を封印してたのは、実は私でした。その私がいけにえに選ばれたので、村はもうおしまいです【完結】

小平ニコ

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精霊に愛された素晴らしき村の終焉 第3話

 地下室から出て、リビングに来た三体の悪鬼は、カレンの父と鉢合わせした。カレンの父は、材木業を始める前は炭鉱夫であり、力には自信があった。気も強く、喧嘩で負けたことはなかった。しかし今回ばかりは、相手が悪かった。

「おじさん、遊ぼう」
「遊ぼう遊ぼう」
「何して遊ぶ?」

 三体の悪鬼はケタケタ嗤いながら、カレンの父を取り囲んだ。巨体の割に、異常なほど素早かった。2メートルを超える怪物に囲まれて、それでも戦う道を選ぶ者がいるとしたら、それは本物の勇者か、本物の馬鹿のどちらかだ。

 カレンの父はそのどちらでもなかったので、知恵を巡らせることにした。突然現れた正体不明の怪物に恐れおののいてはいたが、今さっき言ったセリフから察するに、こいつらの精神は子供のようだから、うまく立ち回れば逃げられる、そう思ったのだ。

「わ、わかった。じゃあ、かくれんぼして遊ぼう。目を閉じて、三分たったらおじさんを探しに来てくれ」

 なかなか賢明な判断だった。この状況で、かくれんぼほど逃げるのに有効な遊びはないだろう。三体の悪鬼はゲラゲラ笑い、頭を上下に揺すった。どうやら喜んでいるらしい。

「やる。やる。かくれんぼ、やる」
「おじさん、見つけちゃうよ。うへ、うへ」
「見つけたら、内臓を引きずり出して食べちゃうよ。うへ、うへ、うへへ」

 身の毛もよだつ宣言だった。
 しかし、カレンの父は腹の中で舌を出した。

 馬鹿な怪物どもめ。三分もあれば、厩舎の馬に乗って、はるか遠くまで逃げられる。他の村人はどうなるか分からんが、少なくとも自分だけは助かる。自分さえ助かれば、他の土地で、いくらでもやり直しがきく。そうだ。一番大事なのは自分の命なのだ。

 頭の中に不意に浮かんだ『他の土地』という言葉で、カレンの父は昨日の夜に聞いた、不思議なメッセージを思い出した。

『危険が迫っている。どこか他の土地に、ただちに避難せよ。その新しい土地では、いけにえのような惨いことはせず、ただ純粋に土地そのものを愛し、慈しんでほしい』

 若い男と、どこか聞き覚えのある女の声で、突然そんな言葉が頭の中に流れ込んできて、一瞬気が変になったのかと心配になったが、なんとその声は、自分だけではなく、村人全てに聞こえているようだった。

 だが、避難する者は一人もいなかった。

 当たり前だ。こちとら色々と忙しいのだ。わけのわからん声に命令されて、まだまだ利用価値のあるこの土地を捨てられるか。

 森の木はほとんど切り倒してしまったが、山にはでかい木がかなり残っている。神木らしいが、そんなこと知ったことか。あれを売れば、もっと儲けられる。この土地を捨てるとしたら、山の木を全て伐採し、ハゲ山にしてからだ。

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