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第10話
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父さんは、幼い私の手を取り、真剣なまなざしで、言葉を続けた。
『ラディア。お前の体には、普通の人間とは比較にならない、膨大な魔力がある。その魔力を、暖炉の光を保つために、少しだけ、貸してくれないか? お前が魔力を貸してくれれば、この国の全員が、平和に暮らすことができるんだ』
私はもう、『この暖炉の光がいったい何なのか』ということについて、尋ねたりはしなかった。ただ素直に、『わかったわ』と頷いた。
……自分で言うのもなんだが、私は魔法の天才だ。子供の頃から、魔力は有り余っていたし、幼い私は、魔力のコントロールが今よりヘタクソだったから、強すぎる魔力が、時に暴走し、トラブルを引き起こすこともあった。
だから、膨大な魔力を、多少は誰かに貸し与えるくらいでちょうどいいと、当時の私は、子供なりに、合理的に判断したのだろう。
そして私は、自身の魔力を、三分の一ほど、暖炉の光に注ぎ込んだ。
父さんは、ニッコリと目を細め、言った。
『ありがとう、ラディア。……お願いばかりして悪いんだが、この暖炉は、決して壊してはいけないよ。これから先、お父さんやお母さんがいなくなり、家を取り壊すようなことがあっても、この暖炉だけは、ずっとこのままにしておくんだよ』
私も、ニッコリと笑い、言った。
『じゃあ、『国のため、この暖炉、壊すべからず』って、彫っておきましょう。知らない人が見てもわかるように』
その言葉通り、幼い私と父さんは、二人で暖炉に『国のため、この暖炉、壊すべからず』と文字を彫ったのだった。……その後、しばらくして、父さんは病気で死んでしまった。思えば、父娘二人で何かをしたのは、あれが最初で最後だった気がする。
私は回想をやめ、星空を眺めながら、独りごとを言う。
「結局、あの暖炉、なんだったのかしら? まあ、よく考えたら、『国の平和を守る暖炉』なんて、あるわけないし、父さんが、何かの迷信を信じていただけだったのかもね」
それにしても、今日は魔力の調子がいい。いや、今までだって、別に調子の悪い日などなかったが、夕方ごろから、特に絶好調だ。誇張でなく、全身に力が漲っている。
その証拠に、何時間もぶっ続けで空を飛んでいるのに、まったく疲労感がない。
子供の読む物語などの中で、魔女が箒で空を飛ぶ場面がよく出てくるが、実は、『空を飛ぶ』ということは、常人の想像を絶するほど、膨大な魔力を使う。
まず、肉体を重力の支配から解き放つことに、ワンポイント。
次に、浮き上がった身体の姿勢制御に、ワンポイント。
そして、飛翔する力の強弱のコントロールに、ワンポイント。
最後に、力を加える微妙な方向性の決定に、ワンポイント。
とまあ、4つの要素を、同時にこなさなければならず、その要素全てに魔力を消費するので、長時間空を飛ぶのは、言ってみれば、水分補給なしでマラソンを続けているのと同じくらい、疲れるのである。普通ならね。
『ラディア。お前の体には、普通の人間とは比較にならない、膨大な魔力がある。その魔力を、暖炉の光を保つために、少しだけ、貸してくれないか? お前が魔力を貸してくれれば、この国の全員が、平和に暮らすことができるんだ』
私はもう、『この暖炉の光がいったい何なのか』ということについて、尋ねたりはしなかった。ただ素直に、『わかったわ』と頷いた。
……自分で言うのもなんだが、私は魔法の天才だ。子供の頃から、魔力は有り余っていたし、幼い私は、魔力のコントロールが今よりヘタクソだったから、強すぎる魔力が、時に暴走し、トラブルを引き起こすこともあった。
だから、膨大な魔力を、多少は誰かに貸し与えるくらいでちょうどいいと、当時の私は、子供なりに、合理的に判断したのだろう。
そして私は、自身の魔力を、三分の一ほど、暖炉の光に注ぎ込んだ。
父さんは、ニッコリと目を細め、言った。
『ありがとう、ラディア。……お願いばかりして悪いんだが、この暖炉は、決して壊してはいけないよ。これから先、お父さんやお母さんがいなくなり、家を取り壊すようなことがあっても、この暖炉だけは、ずっとこのままにしておくんだよ』
私も、ニッコリと笑い、言った。
『じゃあ、『国のため、この暖炉、壊すべからず』って、彫っておきましょう。知らない人が見てもわかるように』
その言葉通り、幼い私と父さんは、二人で暖炉に『国のため、この暖炉、壊すべからず』と文字を彫ったのだった。……その後、しばらくして、父さんは病気で死んでしまった。思えば、父娘二人で何かをしたのは、あれが最初で最後だった気がする。
私は回想をやめ、星空を眺めながら、独りごとを言う。
「結局、あの暖炉、なんだったのかしら? まあ、よく考えたら、『国の平和を守る暖炉』なんて、あるわけないし、父さんが、何かの迷信を信じていただけだったのかもね」
それにしても、今日は魔力の調子がいい。いや、今までだって、別に調子の悪い日などなかったが、夕方ごろから、特に絶好調だ。誇張でなく、全身に力が漲っている。
その証拠に、何時間もぶっ続けで空を飛んでいるのに、まったく疲労感がない。
子供の読む物語などの中で、魔女が箒で空を飛ぶ場面がよく出てくるが、実は、『空を飛ぶ』ということは、常人の想像を絶するほど、膨大な魔力を使う。
まず、肉体を重力の支配から解き放つことに、ワンポイント。
次に、浮き上がった身体の姿勢制御に、ワンポイント。
そして、飛翔する力の強弱のコントロールに、ワンポイント。
最後に、力を加える微妙な方向性の決定に、ワンポイント。
とまあ、4つの要素を、同時にこなさなければならず、その要素全てに魔力を消費するので、長時間空を飛ぶのは、言ってみれば、水分補給なしでマラソンを続けているのと同じくらい、疲れるのである。普通ならね。
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