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第22話(デルロック視点)
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「コホッ、コホッ、だが、決めねばならぬことが、山ほど……ゴホッ」
「陛下、心配は無用です。幸いなことに、我が国は、近隣国との関係は良好ですから、前王が崩御されたからと言って、それに付け込み、いきなり他国が攻め込んでくるということはありません。急いで決めなければならないことなど、特にないのです。なので、安心してお休みください」
そこで一度言葉を切ると、若い重臣は声を張り上げた。
「聞いての通りだ! 皆の者! 今日の会議は、これにて終了とする!」
いつの間にか、王である私ではなく、重臣の一人にすぎないこの男がリーダーシップを発揮しているのは気に入らなかったが、会議が終わりになったのは、私にとって救いだった。……先程までは軽かった咳の症状が、どんどん重くなってきたからだ。
王として、臣下に弱みを見せることは避けたい。
私は口元を手で隠しながら、会議室から出ていく重臣たちの背中を見ていた。
……彼らの背は、皆、一様に弱々しく丸められ、ある者など、今にも倒れそうである。いつもだったら、王の前でさえ偉そうにふんぞり返っている大臣連中ですら、互いの体を支え合うようにして、やっとのことで退室して行った。
まるで、全員が病人のように見える。
……なんだ、これは?
いったい、何が起こっているんだ?
私の心に、奇妙な違和感が芽生えた。
朝、少々冷え込んだくらいで、皆が一斉に、これほど弱ってしまうことなどあり得るのか? ……『あるかないか』と問われれば、『ないことはない』だろう。先程も述べたが、重臣たちは皆、年寄りばかりだからな。
いや、だが、比較的若い重臣も、あまり具合が良さそうではなかった。
極めつけは、この、私の身に起こっている症状だ。
「うっ、ゴホッ、ゴホッ……」
重臣たちが皆退室したことで、私は誰はばかることなく、大きな咳をした。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……!」
苦しい。
今までの人生で、ほとんど咳などしたことがなかったので知らなかったが、咳という奴は、一度始まると、畳みかけるように後から後からやって来て、そのたびに、さらに苦痛が増していくものらしい。
「ゴホッ! ぅ、ゴホゴホッ! ぐぅ……、ゴホッ!」
私は、今さっき見た重臣の年寄りどもと同じように背を丸め、しばし、咳をし続けた。すると腹の底から、少量ではあるが、咳とは違う『何か』が、せりあがって来た。
私は、その『何か』を、手のひらの上に吐き出した。
……それは、血だった。
私は、青ざめた。
これは、ただごとではない。年寄りならともかく、健康な若い男が、ただの体調不良で吐血することなど、普通ならまずありえない。
ショックでやや朦朧としながらも、私は立ち上がり、会議室の窓から外を見た。……もう、朝の9時を回っているというのに、まだ霧が晴れていない。
不気味で、嫌な霧だ。
この辺りは、もともと霧の多い地方ではあるが、そのほとんどは、早朝か、雨の多い時期に発生する。今日のようによく晴れた日で、こんな時間に霧が立ち込めるのは、めずらしいことだ。
「陛下、心配は無用です。幸いなことに、我が国は、近隣国との関係は良好ですから、前王が崩御されたからと言って、それに付け込み、いきなり他国が攻め込んでくるということはありません。急いで決めなければならないことなど、特にないのです。なので、安心してお休みください」
そこで一度言葉を切ると、若い重臣は声を張り上げた。
「聞いての通りだ! 皆の者! 今日の会議は、これにて終了とする!」
いつの間にか、王である私ではなく、重臣の一人にすぎないこの男がリーダーシップを発揮しているのは気に入らなかったが、会議が終わりになったのは、私にとって救いだった。……先程までは軽かった咳の症状が、どんどん重くなってきたからだ。
王として、臣下に弱みを見せることは避けたい。
私は口元を手で隠しながら、会議室から出ていく重臣たちの背中を見ていた。
……彼らの背は、皆、一様に弱々しく丸められ、ある者など、今にも倒れそうである。いつもだったら、王の前でさえ偉そうにふんぞり返っている大臣連中ですら、互いの体を支え合うようにして、やっとのことで退室して行った。
まるで、全員が病人のように見える。
……なんだ、これは?
いったい、何が起こっているんだ?
私の心に、奇妙な違和感が芽生えた。
朝、少々冷え込んだくらいで、皆が一斉に、これほど弱ってしまうことなどあり得るのか? ……『あるかないか』と問われれば、『ないことはない』だろう。先程も述べたが、重臣たちは皆、年寄りばかりだからな。
いや、だが、比較的若い重臣も、あまり具合が良さそうではなかった。
極めつけは、この、私の身に起こっている症状だ。
「うっ、ゴホッ、ゴホッ……」
重臣たちが皆退室したことで、私は誰はばかることなく、大きな咳をした。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……!」
苦しい。
今までの人生で、ほとんど咳などしたことがなかったので知らなかったが、咳という奴は、一度始まると、畳みかけるように後から後からやって来て、そのたびに、さらに苦痛が増していくものらしい。
「ゴホッ! ぅ、ゴホゴホッ! ぐぅ……、ゴホッ!」
私は、今さっき見た重臣の年寄りどもと同じように背を丸め、しばし、咳をし続けた。すると腹の底から、少量ではあるが、咳とは違う『何か』が、せりあがって来た。
私は、その『何か』を、手のひらの上に吐き出した。
……それは、血だった。
私は、青ざめた。
これは、ただごとではない。年寄りならともかく、健康な若い男が、ただの体調不良で吐血することなど、普通ならまずありえない。
ショックでやや朦朧としながらも、私は立ち上がり、会議室の窓から外を見た。……もう、朝の9時を回っているというのに、まだ霧が晴れていない。
不気味で、嫌な霧だ。
この辺りは、もともと霧の多い地方ではあるが、そのほとんどは、早朝か、雨の多い時期に発生する。今日のようによく晴れた日で、こんな時間に霧が立ち込めるのは、めずらしいことだ。
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