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第77話(デルロック視点)
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ふむ……
マールセンの素の性格には少し面食らったが、こいつは私に恨みを抱いておらず、それどころか守ろうとする気すらあるのだから、たぶん、私を害するつもりはないのだろう。痺れ薬を飲まされたと知ったときはとてつもなく焦ったが、あまり心配する必要はなかったのかもしれない。
それにしても、今日のマールセンは実によく喋る。
もともと弁の立つ人間ではあったが、これほど饒舌な姿を見るのは初めてだ。
そこで突然、マールセンが何かを思い出したかのように、手を打った。
「あっ、そうだ。兄上はさっき、民衆が狂暴化し、その後アンデッドになったと言っていましたよね? アンデッドたちは、怪奇小説のように、人肉を求めていましたか?」
いきなり、何の話だ。
それに、答えようにも、舌がしびれて何もしゃべれない。
数秒遅れて、マールセンもそのことに気がついたのか、人差し指でそっと私の唇に触れると、治癒の魔法をかけた。……それで、私の口は、ほんの少しだけまともに動くようになる。私は二回ほど口を閉じたり開いたりし、それから、言葉を発した。
「……いや、アンデッドは、ただフラフラと、道を行ったり来たりするだけだった。奴らは紫の霧によって生きるしかばねとなり、今も夜の闇の中をさまよっているのだろう。……なあ、そんなことより、早くこの痺れを治してくれ」
せっかく口がきけるようになったのに、私は『マールセンが私に痺れ薬を飲ませた理由』を尋ねなかった。……その答えを聞くのが、とてつもなく恐ろしいことのような気がしたから。
マールセンは、『痺れを治してくれ』という私の要求については完全に無視をし、あっけらかんとした様子で話を続ける。
「兄上、民衆が狂暴化したのも、生きるしかばねになったのも、たぶん『紫の霧』のせいではなく、僕のせいです」
「な、なんだと……?」
「ほら、僕って体が弱いじゃないですか。だから少しでも健康になりたいと思って、滋養強壮薬の研究をずっとしてたんですよ。その過程で、薬の研究そのものが趣味になり、色々と特殊な薬にも手を出しましてね。中には、遅効性の『死人を復活させる薬』なんて、いかにも怪しげなものもありました」
……『死人を復活させる薬』だと? 馬鹿馬鹿しい。そんなインチキ丸出しの薬で人がよみがえるなら、とっくの昔に、この世から墓場と葬儀場がなくなっている。死んだ人間を生き返らせることは、どんな高等な魔法を用いても、絶対に不可能だ。恐らく、神や悪魔でも、終わってしまった命を元に戻すなど、できないに違いない。
そんな私の考えを一瞬で読み取ったのか、マールセンは苦笑しながら言う。
「もちろん、僕だって、そんな薬で本当に死者がよみがえるとは思っていませんでしたよ。でも、文献によると、その『死人を復活させる薬』を生前に摂取した者が、死後に動き出すという事例が、本当にあったそうなんです。だから、実際にそんなことが起こるのか、どうしても実験したくなって……」
マールセンの素の性格には少し面食らったが、こいつは私に恨みを抱いておらず、それどころか守ろうとする気すらあるのだから、たぶん、私を害するつもりはないのだろう。痺れ薬を飲まされたと知ったときはとてつもなく焦ったが、あまり心配する必要はなかったのかもしれない。
それにしても、今日のマールセンは実によく喋る。
もともと弁の立つ人間ではあったが、これほど饒舌な姿を見るのは初めてだ。
そこで突然、マールセンが何かを思い出したかのように、手を打った。
「あっ、そうだ。兄上はさっき、民衆が狂暴化し、その後アンデッドになったと言っていましたよね? アンデッドたちは、怪奇小説のように、人肉を求めていましたか?」
いきなり、何の話だ。
それに、答えようにも、舌がしびれて何もしゃべれない。
数秒遅れて、マールセンもそのことに気がついたのか、人差し指でそっと私の唇に触れると、治癒の魔法をかけた。……それで、私の口は、ほんの少しだけまともに動くようになる。私は二回ほど口を閉じたり開いたりし、それから、言葉を発した。
「……いや、アンデッドは、ただフラフラと、道を行ったり来たりするだけだった。奴らは紫の霧によって生きるしかばねとなり、今も夜の闇の中をさまよっているのだろう。……なあ、そんなことより、早くこの痺れを治してくれ」
せっかく口がきけるようになったのに、私は『マールセンが私に痺れ薬を飲ませた理由』を尋ねなかった。……その答えを聞くのが、とてつもなく恐ろしいことのような気がしたから。
マールセンは、『痺れを治してくれ』という私の要求については完全に無視をし、あっけらかんとした様子で話を続ける。
「兄上、民衆が狂暴化したのも、生きるしかばねになったのも、たぶん『紫の霧』のせいではなく、僕のせいです」
「な、なんだと……?」
「ほら、僕って体が弱いじゃないですか。だから少しでも健康になりたいと思って、滋養強壮薬の研究をずっとしてたんですよ。その過程で、薬の研究そのものが趣味になり、色々と特殊な薬にも手を出しましてね。中には、遅効性の『死人を復活させる薬』なんて、いかにも怪しげなものもありました」
……『死人を復活させる薬』だと? 馬鹿馬鹿しい。そんなインチキ丸出しの薬で人がよみがえるなら、とっくの昔に、この世から墓場と葬儀場がなくなっている。死んだ人間を生き返らせることは、どんな高等な魔法を用いても、絶対に不可能だ。恐らく、神や悪魔でも、終わってしまった命を元に戻すなど、できないに違いない。
そんな私の考えを一瞬で読み取ったのか、マールセンは苦笑しながら言う。
「もちろん、僕だって、そんな薬で本当に死者がよみがえるとは思っていませんでしたよ。でも、文献によると、その『死人を復活させる薬』を生前に摂取した者が、死後に動き出すという事例が、本当にあったそうなんです。だから、実際にそんなことが起こるのか、どうしても実験したくなって……」
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