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馬車が激しく横に揺れ、車輪がきしむ。
護衛の騎士たちの怒号、金属音、魔力の炸裂する気配が次々と響き渡る。
「フェリシア、こっちへ!」
レオンハルトは私の体を抱き寄せ、馬車の端へと庇うように移動した。
彼の腕は震えている。恐怖ではない。怒りと焦りだ。
「外に出るな。絶対にだ」
扉の向こうから、冷たい笑い声が響く。
「殿下は相変わらず“優等生”ですね。そんなに彼女が大事?」
エドワードの声。
しかしその声には、以前のような弱さも迷いもなかった。
まるで別人のような、底冷えのする響きだけがあった。
レオンハルトの眉が険しく寄る。
「エドワード。お前、正気なのか」
「正気ですよ。ようやくね」
低く笑いながら、エドワードが続ける。
「フェリシアを返してもらいに来ただけです。
だって彼女は“僕のもの”でしょう?」
ぞくりと背筋を凍らせる言葉。
「役立たず”と追い出したのは誰だったの……?」
私が呟いた瞬間、エドワードの声が一瞬だけ固まる。
だがすぐに、ゆっくりと歪んだ笑みを含んだ声に戻った。
「誤解させたのは悪かった。でも……“役立たず”じゃなかったんだ。
むしろ──国で一番“使える”女だった」
「……!」
私の心臓が大きく跳ねた。
レオンハルトが怒りで息を呑む。
「エドワード!! それ以上口を開くな!」
「どうして? 本当のことなのに」
エドワードの声が、馬車の外から近づく。
「フェリシアの魔力は特異なんですよ。
魔力を吸収し、変質し、そして増幅する性質……
王族の血と組み合わされば、“新たな系譜”が生まれる」
「──っ!」
レオンハルトの喉から怒りの音が漏れた。
「お前……それを誰から聞いた」
「王宮の中にいる人ですよ。
あなたも知っているはずだ。
僕の“後ろ盾”になってくれた、あの方が──」
その瞬間、馬車全体が黒い魔力に覆われた。
空気が、重く、押し潰されるような圧力を帯びる。
(これ……エドワードの魔力じゃない)
エドワードはこんな濃度の魔力を扱えない。
もっと大きく、深い……まるで闇そのもののようだ。
──黒幕は、すぐそばにいる。
「レオンさま、外は危険です……!」
「分かっている。しかし、ここに閉じこもればフェリシアが狙い撃ちにされる」
レオンハルトは剣を抜き、馬車の扉を少しだけ開けて外を確認した。
その瞬間、黒い魔力弾が馬車をかすめ、木々が一瞬で消し飛ぶ。
「っ……!」
「フェリシア、後ろへ!」
「は、はい!」
馬車の中が黒い煙に包まれ、視界が揺れる。
(誰が……こんなことを……)
すると、外から別の声が響いた。
「エドワード王子、その程度で時間をかけすぎです」
低く、静かで、それでいて圧倒的な威圧感を持つ声。
私は息を呑んだ。
その声は──どこかで聞いたことがある。
「君は……まさか……!」
レオンハルトが目を見開く。
黒い気配の主人が姿を現した。
「やっと気づきましたね。
殿下──私はもともと“あなたの側”にいたのですよ」
そいつは、黒いローブに身を包みながらゆっくりとフードを外す。
現れた顔は――
レオンハルトの側近・第一補佐官、ダリウス。
「ダ、ダリウス……? どうしてあなたが……!」
私の声は震えていた。
レオンハルトは信じられないというように、名を叫ぶ。
「ダリウス、貴様……裏切ったのか」
「裏切り? いいえ。
私は“正しい王”に仕えるだけ。
力のある王に、ね」
ダリウスはエドワードの後ろに立つ。
その姿は不気味なほど自然で……
まるで以前からずっと、そこが本来の位置だったかのように。
「エドワード王子は弱いですが……
あなたのように無駄に冷静すぎるよりは扱いやすい。
そして何より──彼は魔力の器としての“才能”がありますから」
レオンハルトが剣を構えた。
「お前がエドワードを……操っているのか」
「操っている? いいえ。
“導いている”だけです。
彼には、素質がある。
王家の血に眠る“闇の系譜”のね」
エドワードの目が黒い光に染まっていく。
「僕は……僕はようやく分かったんだ。
誰も僕を認めてくれなかったけど……
ダリウスだけが僕の“価値”を教えてくれた」
「エドワード……!」
私は思わず手を伸ばした。
「フェリシア。
君も僕が必要だって分かるはずだよ。
だって──」
黒い魔力がエドワードの掌で渦巻く。
「君は“僕のもの”なんだから」
その瞬間、レオンハルトが叫んだ。
「フェリシアから離れろ!」
レオンハルトが馬車から飛び出す。
馬車の外で、激しい衝突音と光が弾けた。
「レオンさま!」
私も思わず扉を開けて外に出てしまった。
──その瞬間だった。
「ようやく出てきたか。
さて、君には“覚醒”してもらいますよ、フェリシア嬢」
ダリウスが指を弾く。
黒い魔力が一直線に私の胸へ迫る。
(きゃっ──!)
衝撃が来ると思った……が。
胸の奥で、何かが反応した。
(え……?)
黒い魔力が触れた瞬間、
私の内側から“光”が爆ぜるように溢れた。
「なっ……!」
ダリウスが驚愕で後ずさる。
黒い魔力は吸い込まれるように私の体に入り──
次の瞬間、白い光となって周囲に放たれた。
周囲の闇が一瞬で晴れる。
レオンハルトもエドワードも、その光に目を見開いていた。
「これが……フェリシアの……力……?」
レオンハルトが呆然と呟く。
ダリウスの笑みが歪む。
「やはり……“適合者”か。
これは……利用価値が高い」
背筋がぞくりとした。
ダリウスが手を伸ばす。
「さあ、フェリシア嬢。こちらへ来なさい。
君は──我々の“鍵”だ」
「絶対に行かせない!」
レオンハルトが私の前に立ちふさがる。
剣を構えながら、その背中が震えているのがわかった。
「フェリシアは……俺が守る」
その声は、今までのどんな言葉よりも強くて、
そして何より“個人的”だった。
(レオンさま……)
しかしダリウスは微笑んだままだ。
「殿下。あなたは“王”ではない。
だから守れない。
彼女を守れるのは、本物の“王”だけだ」
「黙れ!」
レオンハルトが怒号と共に踏み込む。
だがダリウスの黒い魔力の壁が剣を弾き返す。
「レオンさま!!」
私は思わず叫び、手を伸ばした。
その瞬間──また胸の奥から光があふれ出し、
レオンハルトの背中を包むように広がった。
「……っ!? フェリシア……!」
レオンハルトの剣が光を帯びる。
次の瞬間──
彼の一撃が、ダリウスの黒い壁を打ち砕いた。
「ぐっ……!」
ダリウスが初めて表情を歪める。
「光の……増幅……!?
これは……想定外──」
だがその瞬間、ダリウスの影が揺れ、黒い霧となって消えた。
「逃げた……!」
レオンハルトは息を荒げ、私を抱きしめた。
「フェリシア……! 無事か!?
どこか痛いところは……!」
「れ、レオンさま……息が……」
「あ……すまない……!」
ようやく離れた彼は、私の頬に触れ、震える声で言った。
「本当に……よかった……!」
その目には、涙に似た光が宿っていた。
(レオンさま……どうしてここまで……)
でも、今は聞けなかった。
暗闇のどこかで、ダリウスの声が響く。
「……次は逃がしませんよ。
フェリシア嬢。あなたは──必ず“彼”のもとへ連れていく」
黒幕はまだ姿を見せていない。
そして私はまだ、自分の力の意味を知らない。
護衛の騎士たちの怒号、金属音、魔力の炸裂する気配が次々と響き渡る。
「フェリシア、こっちへ!」
レオンハルトは私の体を抱き寄せ、馬車の端へと庇うように移動した。
彼の腕は震えている。恐怖ではない。怒りと焦りだ。
「外に出るな。絶対にだ」
扉の向こうから、冷たい笑い声が響く。
「殿下は相変わらず“優等生”ですね。そんなに彼女が大事?」
エドワードの声。
しかしその声には、以前のような弱さも迷いもなかった。
まるで別人のような、底冷えのする響きだけがあった。
レオンハルトの眉が険しく寄る。
「エドワード。お前、正気なのか」
「正気ですよ。ようやくね」
低く笑いながら、エドワードが続ける。
「フェリシアを返してもらいに来ただけです。
だって彼女は“僕のもの”でしょう?」
ぞくりと背筋を凍らせる言葉。
「役立たず”と追い出したのは誰だったの……?」
私が呟いた瞬間、エドワードの声が一瞬だけ固まる。
だがすぐに、ゆっくりと歪んだ笑みを含んだ声に戻った。
「誤解させたのは悪かった。でも……“役立たず”じゃなかったんだ。
むしろ──国で一番“使える”女だった」
「……!」
私の心臓が大きく跳ねた。
レオンハルトが怒りで息を呑む。
「エドワード!! それ以上口を開くな!」
「どうして? 本当のことなのに」
エドワードの声が、馬車の外から近づく。
「フェリシアの魔力は特異なんですよ。
魔力を吸収し、変質し、そして増幅する性質……
王族の血と組み合わされば、“新たな系譜”が生まれる」
「──っ!」
レオンハルトの喉から怒りの音が漏れた。
「お前……それを誰から聞いた」
「王宮の中にいる人ですよ。
あなたも知っているはずだ。
僕の“後ろ盾”になってくれた、あの方が──」
その瞬間、馬車全体が黒い魔力に覆われた。
空気が、重く、押し潰されるような圧力を帯びる。
(これ……エドワードの魔力じゃない)
エドワードはこんな濃度の魔力を扱えない。
もっと大きく、深い……まるで闇そのもののようだ。
──黒幕は、すぐそばにいる。
「レオンさま、外は危険です……!」
「分かっている。しかし、ここに閉じこもればフェリシアが狙い撃ちにされる」
レオンハルトは剣を抜き、馬車の扉を少しだけ開けて外を確認した。
その瞬間、黒い魔力弾が馬車をかすめ、木々が一瞬で消し飛ぶ。
「っ……!」
「フェリシア、後ろへ!」
「は、はい!」
馬車の中が黒い煙に包まれ、視界が揺れる。
(誰が……こんなことを……)
すると、外から別の声が響いた。
「エドワード王子、その程度で時間をかけすぎです」
低く、静かで、それでいて圧倒的な威圧感を持つ声。
私は息を呑んだ。
その声は──どこかで聞いたことがある。
「君は……まさか……!」
レオンハルトが目を見開く。
黒い気配の主人が姿を現した。
「やっと気づきましたね。
殿下──私はもともと“あなたの側”にいたのですよ」
そいつは、黒いローブに身を包みながらゆっくりとフードを外す。
現れた顔は――
レオンハルトの側近・第一補佐官、ダリウス。
「ダ、ダリウス……? どうしてあなたが……!」
私の声は震えていた。
レオンハルトは信じられないというように、名を叫ぶ。
「ダリウス、貴様……裏切ったのか」
「裏切り? いいえ。
私は“正しい王”に仕えるだけ。
力のある王に、ね」
ダリウスはエドワードの後ろに立つ。
その姿は不気味なほど自然で……
まるで以前からずっと、そこが本来の位置だったかのように。
「エドワード王子は弱いですが……
あなたのように無駄に冷静すぎるよりは扱いやすい。
そして何より──彼は魔力の器としての“才能”がありますから」
レオンハルトが剣を構えた。
「お前がエドワードを……操っているのか」
「操っている? いいえ。
“導いている”だけです。
彼には、素質がある。
王家の血に眠る“闇の系譜”のね」
エドワードの目が黒い光に染まっていく。
「僕は……僕はようやく分かったんだ。
誰も僕を認めてくれなかったけど……
ダリウスだけが僕の“価値”を教えてくれた」
「エドワード……!」
私は思わず手を伸ばした。
「フェリシア。
君も僕が必要だって分かるはずだよ。
だって──」
黒い魔力がエドワードの掌で渦巻く。
「君は“僕のもの”なんだから」
その瞬間、レオンハルトが叫んだ。
「フェリシアから離れろ!」
レオンハルトが馬車から飛び出す。
馬車の外で、激しい衝突音と光が弾けた。
「レオンさま!」
私も思わず扉を開けて外に出てしまった。
──その瞬間だった。
「ようやく出てきたか。
さて、君には“覚醒”してもらいますよ、フェリシア嬢」
ダリウスが指を弾く。
黒い魔力が一直線に私の胸へ迫る。
(きゃっ──!)
衝撃が来ると思った……が。
胸の奥で、何かが反応した。
(え……?)
黒い魔力が触れた瞬間、
私の内側から“光”が爆ぜるように溢れた。
「なっ……!」
ダリウスが驚愕で後ずさる。
黒い魔力は吸い込まれるように私の体に入り──
次の瞬間、白い光となって周囲に放たれた。
周囲の闇が一瞬で晴れる。
レオンハルトもエドワードも、その光に目を見開いていた。
「これが……フェリシアの……力……?」
レオンハルトが呆然と呟く。
ダリウスの笑みが歪む。
「やはり……“適合者”か。
これは……利用価値が高い」
背筋がぞくりとした。
ダリウスが手を伸ばす。
「さあ、フェリシア嬢。こちらへ来なさい。
君は──我々の“鍵”だ」
「絶対に行かせない!」
レオンハルトが私の前に立ちふさがる。
剣を構えながら、その背中が震えているのがわかった。
「フェリシアは……俺が守る」
その声は、今までのどんな言葉よりも強くて、
そして何より“個人的”だった。
(レオンさま……)
しかしダリウスは微笑んだままだ。
「殿下。あなたは“王”ではない。
だから守れない。
彼女を守れるのは、本物の“王”だけだ」
「黙れ!」
レオンハルトが怒号と共に踏み込む。
だがダリウスの黒い魔力の壁が剣を弾き返す。
「レオンさま!!」
私は思わず叫び、手を伸ばした。
その瞬間──また胸の奥から光があふれ出し、
レオンハルトの背中を包むように広がった。
「……っ!? フェリシア……!」
レオンハルトの剣が光を帯びる。
次の瞬間──
彼の一撃が、ダリウスの黒い壁を打ち砕いた。
「ぐっ……!」
ダリウスが初めて表情を歪める。
「光の……増幅……!?
これは……想定外──」
だがその瞬間、ダリウスの影が揺れ、黒い霧となって消えた。
「逃げた……!」
レオンハルトは息を荒げ、私を抱きしめた。
「フェリシア……! 無事か!?
どこか痛いところは……!」
「れ、レオンさま……息が……」
「あ……すまない……!」
ようやく離れた彼は、私の頬に触れ、震える声で言った。
「本当に……よかった……!」
その目には、涙に似た光が宿っていた。
(レオンさま……どうしてここまで……)
でも、今は聞けなかった。
暗闇のどこかで、ダリウスの声が響く。
「……次は逃がしませんよ。
フェリシア嬢。あなたは──必ず“彼”のもとへ連れていく」
黒幕はまだ姿を見せていない。
そして私はまだ、自分の力の意味を知らない。
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