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4 高嶺の花(ウィリアム視点)
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有名人である彼女の事は、勿論以前からよく知っていた。
ソフィア・ロブソン侯爵令嬢。
艶のあるストレートの黒髪を靡かせ、知的好奇心に溢れた輝く紫の瞳を持つ彼女の姿を目にする度、美しい人だなと思っていた。
完璧な容姿。
魔術の名門侯爵家の一人娘。
学生時代に博士号を取るほどの、明晰な頭脳。
彼女は高嶺の花だ。
その彼女が、なんと、魔術師団に俺の同期で入団した。
「・・・なので、魔力を圧縮して魔石に詰めることが出来れば、小さい魔石でも、沢山の魔力を蓄える事が出来るんじゃないかって思うの」
ソフィーはキラキラした笑顔で、夢中になって研究の話をする。
とても可愛い。
「そうすれば、持ち運びに便利だな」
「でしょう?
色々な需要があると思うの。
戦闘の際にも、小さな魔石を持っていけば、魔力切れになる事などなくなりますわ。
凄いと思いませんか?」
「しかし、実験が上手くいかないと・・・」
「うぅ・・・、そうなのですよぉ・・・。
何度試してみても、魔石が圧力に耐えられなくて、割れてしまうんです。
計算上は問題ないハズなのですがねぇ・・・」
先程迄の輝く笑顔が消え、一瞬でシュンと項垂れる。
そんな様子もまた可愛い。
可愛いしかない。
近寄り難い人かと思っていたのに、話してみると意外と気さくで、コロコロ表情が変わる。
俺は彼女にどんどん惹かれていった。
彼女は結婚せず、婚約者も作らず、この歳まで魔術の研究に明け暮れている。
もしかして、ライバルが減った今なら手が届くのではないか・・・そんな淡い期待を抱いていた。
「おい、ウィリアム。
近々、ソフィア嬢がお見合いするらしいぞ」
その話を持ってきたのは、王宮騎士団に入った友人だった。
「はっ?なにそれ。確かな情報なのか?」
「ああ、その見合いの相手から聞いたからな」
「相手?誰だよ?」
「聞いて驚け。
アーロン・ブラッドリー侯爵令息だ」
「えっ・・・ブラッドリー侯爵家は騎士の家系だろう?
なぜ、ロブソン侯爵家との縁談が持ち上がったんだ?」
「そうだな。
だが、アーロン様は騎士ではあるが、魔力量がかなり多いらしいんだよ。
それに、この歳になると、流石に婚約も結婚もしていない者は少ないだろう。
ロブソン侯爵家も、本来なら婿に迎えるのは優秀な魔術師が良かったんだろうけど、魔力量さえ遺伝すれば、次代に期待できるからな」
「・・・・・・マジか」
ソフィーが、他の男と結婚するかもしれない。
目の前が真っ暗だ。
アーロン・ブラッドリーは、精悍な顔立ちで、女性に人気がある。
真面目で誠実だという噂。
侯爵家の三男だから、家格も合うし、婿入りも可能。
おまけに魔力量が多いのなら、これはもう、見合いした時点で結婚確定なのでは?
「なあ、本気でソフィア嬢が好きなら、ダメ元で動いてみろよ。
早くしないと、完全に手遅れになるぞ」
友達思いの友人を持って幸せだ。
俺は彼の助言に従う事にした。
丁度、俺の方にも厄介な縁談が舞い込んで来ていた。
上手くいけば、それを解決した上で、ソフィーも手に入れる事が出来る。
これは神が俺に動けと言っているに違いない!
俺は、王宮図書館の机に向かって、論文を執筆中のソフィーに近付く。
よし、言え!言うんだ!
汗ばむ拳を握りしめて、一世一代の賭けに出た。
「なぁ、ソフィー。
俺と結婚してくれないか?」
ソフィア・ロブソン侯爵令嬢。
艶のあるストレートの黒髪を靡かせ、知的好奇心に溢れた輝く紫の瞳を持つ彼女の姿を目にする度、美しい人だなと思っていた。
完璧な容姿。
魔術の名門侯爵家の一人娘。
学生時代に博士号を取るほどの、明晰な頭脳。
彼女は高嶺の花だ。
その彼女が、なんと、魔術師団に俺の同期で入団した。
「・・・なので、魔力を圧縮して魔石に詰めることが出来れば、小さい魔石でも、沢山の魔力を蓄える事が出来るんじゃないかって思うの」
ソフィーはキラキラした笑顔で、夢中になって研究の話をする。
とても可愛い。
「そうすれば、持ち運びに便利だな」
「でしょう?
色々な需要があると思うの。
戦闘の際にも、小さな魔石を持っていけば、魔力切れになる事などなくなりますわ。
凄いと思いませんか?」
「しかし、実験が上手くいかないと・・・」
「うぅ・・・、そうなのですよぉ・・・。
何度試してみても、魔石が圧力に耐えられなくて、割れてしまうんです。
計算上は問題ないハズなのですがねぇ・・・」
先程迄の輝く笑顔が消え、一瞬でシュンと項垂れる。
そんな様子もまた可愛い。
可愛いしかない。
近寄り難い人かと思っていたのに、話してみると意外と気さくで、コロコロ表情が変わる。
俺は彼女にどんどん惹かれていった。
彼女は結婚せず、婚約者も作らず、この歳まで魔術の研究に明け暮れている。
もしかして、ライバルが減った今なら手が届くのではないか・・・そんな淡い期待を抱いていた。
「おい、ウィリアム。
近々、ソフィア嬢がお見合いするらしいぞ」
その話を持ってきたのは、王宮騎士団に入った友人だった。
「はっ?なにそれ。確かな情報なのか?」
「ああ、その見合いの相手から聞いたからな」
「相手?誰だよ?」
「聞いて驚け。
アーロン・ブラッドリー侯爵令息だ」
「えっ・・・ブラッドリー侯爵家は騎士の家系だろう?
なぜ、ロブソン侯爵家との縁談が持ち上がったんだ?」
「そうだな。
だが、アーロン様は騎士ではあるが、魔力量がかなり多いらしいんだよ。
それに、この歳になると、流石に婚約も結婚もしていない者は少ないだろう。
ロブソン侯爵家も、本来なら婿に迎えるのは優秀な魔術師が良かったんだろうけど、魔力量さえ遺伝すれば、次代に期待できるからな」
「・・・・・・マジか」
ソフィーが、他の男と結婚するかもしれない。
目の前が真っ暗だ。
アーロン・ブラッドリーは、精悍な顔立ちで、女性に人気がある。
真面目で誠実だという噂。
侯爵家の三男だから、家格も合うし、婿入りも可能。
おまけに魔力量が多いのなら、これはもう、見合いした時点で結婚確定なのでは?
「なあ、本気でソフィア嬢が好きなら、ダメ元で動いてみろよ。
早くしないと、完全に手遅れになるぞ」
友達思いの友人を持って幸せだ。
俺は彼の助言に従う事にした。
丁度、俺の方にも厄介な縁談が舞い込んで来ていた。
上手くいけば、それを解決した上で、ソフィーも手に入れる事が出来る。
これは神が俺に動けと言っているに違いない!
俺は、王宮図書館の机に向かって、論文を執筆中のソフィーに近付く。
よし、言え!言うんだ!
汗ばむ拳を握りしめて、一世一代の賭けに出た。
「なぁ、ソフィー。
俺と結婚してくれないか?」
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