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第八十三話
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「リズ、お疲れ様。よく、よく頑張ったね」
アルバート様が優しく私の頬を撫で、こぼれた涙を指で拭ってくれます。
「アルバート様・・・」
「子を見たよ。二人ともとても可愛くて、気持ちよさそうに寝てた」
「ふふっ。お乳をあげたら、お腹が膨れて眠くなったみたいなのです。アルバート様、名前は?」
「決めていた通りにしようか」
お子が産まれる前に、アルバート様には赤ちゃんの名前を考えていただいていました。
どちらが産まれるか分かりませんから、どちらが産まれてもいいように男の子の名前と女の子の名前を。
いくつか候補を出していただいて、私とアルバート様で最終的に決めた名前です。
アレスとセレネ。
私たちの大切な大切な、子供たちです。
「侍女と護衛もすぐに増やす。しばらくは侍女長についていてもらおう。ミリアやセイラでは、赤子の面倒は無理だろうからな。子を産んだ侍女を付かせるよ。それから、カリスタ家には知らせを出した。会わせられるのは一月後くらいになるけど」
「お母様たちも理解してくださっておりますわ」
赤子は病気を貰いやすいものですから、お披露目も一年後を予定しています。
元気に産まれましたけど、赤子は些細なことで亡くなってしまうことがあるそうです。
ですから産まれたことの公表も一月後辺りになりますし、お披露目自体は一年後になるのです。
アレスとセレネは、次期王太子、もしくは次期王太女になる可能性がありますから、念には念を入れると国王陛下からのご命令ですわ。
両親に会わせるのが一月後になるのも、その関係です。
赤子の体調が安定してから、ということですわ。
出産に間に合えば、すぐに会わせることができたのですけど、私の出産が予定より少し早かったものですから。
「さあ、妃殿下は少しお休み下さい。殿下、妃殿下を」
「ああ。動かして大丈夫か?」
「はい」
お医者様の言葉に、アルバート様がそっと私を抱き上げて、寝室へと運んで下さいました。
優しくベッドに下ろしてくださった後は、背に手を当てて支えてくださったので果実水を飲ませてもらい、ベッドに横たわります。
「ゆっくりお休み」
「はい」
「改めて本当にお疲れ様。リズ、可愛い息子と娘を産んでくれてありがとう」
「アルバート様・・・」
まだ婚姻して一年とはいえ、王太子妃の務めの一番は、後継を産むことです。
そしてこうして赤ちゃんを産んだことで、深い安堵感と達成感を感じました。
アルバート様の手が、優しく私の頭を撫でてくださり、私はそのまま眠りへと落ちていきました。
アルバート様が優しく私の頬を撫で、こぼれた涙を指で拭ってくれます。
「アルバート様・・・」
「子を見たよ。二人ともとても可愛くて、気持ちよさそうに寝てた」
「ふふっ。お乳をあげたら、お腹が膨れて眠くなったみたいなのです。アルバート様、名前は?」
「決めていた通りにしようか」
お子が産まれる前に、アルバート様には赤ちゃんの名前を考えていただいていました。
どちらが産まれるか分かりませんから、どちらが産まれてもいいように男の子の名前と女の子の名前を。
いくつか候補を出していただいて、私とアルバート様で最終的に決めた名前です。
アレスとセレネ。
私たちの大切な大切な、子供たちです。
「侍女と護衛もすぐに増やす。しばらくは侍女長についていてもらおう。ミリアやセイラでは、赤子の面倒は無理だろうからな。子を産んだ侍女を付かせるよ。それから、カリスタ家には知らせを出した。会わせられるのは一月後くらいになるけど」
「お母様たちも理解してくださっておりますわ」
赤子は病気を貰いやすいものですから、お披露目も一年後を予定しています。
元気に産まれましたけど、赤子は些細なことで亡くなってしまうことがあるそうです。
ですから産まれたことの公表も一月後辺りになりますし、お披露目自体は一年後になるのです。
アレスとセレネは、次期王太子、もしくは次期王太女になる可能性がありますから、念には念を入れると国王陛下からのご命令ですわ。
両親に会わせるのが一月後になるのも、その関係です。
赤子の体調が安定してから、ということですわ。
出産に間に合えば、すぐに会わせることができたのですけど、私の出産が予定より少し早かったものですから。
「さあ、妃殿下は少しお休み下さい。殿下、妃殿下を」
「ああ。動かして大丈夫か?」
「はい」
お医者様の言葉に、アルバート様がそっと私を抱き上げて、寝室へと運んで下さいました。
優しくベッドに下ろしてくださった後は、背に手を当てて支えてくださったので果実水を飲ませてもらい、ベッドに横たわります。
「ゆっくりお休み」
「はい」
「改めて本当にお疲れ様。リズ、可愛い息子と娘を産んでくれてありがとう」
「アルバート様・・・」
まだ婚姻して一年とはいえ、王太子妃の務めの一番は、後継を産むことです。
そしてこうして赤ちゃんを産んだことで、深い安堵感と達成感を感じました。
アルバート様の手が、優しく私の頭を撫でてくださり、私はそのまま眠りへと落ちていきました。
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