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第二章 黒煙

第三十七話 証拠

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 ポーション自販機を設置して数日たった時、教会から悲鳴が聞こえてきた。

 ポーション自販機が出来てすぐに教会に行く人がいなくなった。それによって司祭、アザラーノフはお布施が得られない事で酒が得られずに悲鳴をあげていたのだ。

 もちろん、ラザラさん達がいなくなった時も同じような悲鳴が聞こえてきた。その後にすぐラザラさんを見つける為にラザラさんを買った男を雇っていたけど僕らを見つける事はできなかった。
 何でかと言うと単純に痛めつけました。偶々男に見つかった時がアレイストさんと話していた時ですぐにギルドに連行されて行った。そのあと、アレイストさん達に尋問されて雇い主がわかったわけです。なので現在アザラーノフは連行されたのも知らないので苛立ちだけが募っているようです。

「怪我人も来なけりゃお布施もはいらん。このままでは本部に援助を求めなくちゃいけなくなる。そうなればワインプールの領主に相談することになる・・・そうなったら孤児院が経営されていない事がバレる・・」

 アザラーノフは領主にバレるのを恐れて援助を求められないでいる。酒を買った金があればそんな事にはならなかったのだが、時すでに遅し。アザラーノフはしばらくして教会を去り本部にも帰れずに街道で歩くのが目撃された。アザラーノフの姿が別の街で目撃される事はない。何故ならアザラーノフは魔物に襲われて帰らぬ人になったからだ。馬車にも乗らずに一人で街道を行くのは自殺と一緒。アザラーノフは自分の無知によってこの世を去った。

 

 僕らはアザラーノフが街から消えてすぐに教会へやってきた。本当にいなくなったのかの確認とアレイストさんに言われてお布施の不正利用の証拠を探す為です。当事者であるラザラさんも一緒に来てもらってアザラーノフの寝室にきた。ラザラさんにとってはあまり入りたくない所だと思うけど、証拠があれば教会とそんなに敵対しないで済むという事でギルドに後ろ盾になってもらう為にも我慢してもらいます。

「ルークさん、ありました。やっぱりアザラーノフは帰ってくるのかもしれません」

 ラザラは数枚の紙を見て叫んだ。
 
 アザラーノフはこの後、すぐにこの世を去るのだが死ぬつもりはなかったという事なのだろう。証拠を残して教会を後にした時点でこうなる事は目に見えていたが酒におぼれていた男、アザラーノフは脇が甘い男だったという事か。

「律儀にこういうものを残してるんだね。流石にないかな~って思ってたけど」
「アザラーノフは自慢しながら私に見せてきていたんです。だから、絶対あると思いました」

 なるほど、自慢したかったのか。確かに凄い事なら自慢したい人も多いだろうけどこういった犯罪を自慢するとか僕には考えられないな。良い事でも悪い事でも目立つことに違いがないからね。悪として追われるのも正義として使われるのも望まないのだ。

「証拠がばっちりだと色々やりやすいから全部持っていきましょうか」
「そうですね。アイテムバッグに入れていきましょ」

 食料を入れたアイテムバッグを渡していたのでアイテムバッグの事をラザラさんは知っています。今も大事に持っていてくれているのでそれに全部の書類を詰めていく。
 書類の中にはラザラさんの売買記録も入っていてやるせない表情をしていた。アザラーノフはラザラさんがいなくなった後の孤児院の事は考えていたのだろうか?間引きとか言って子供を減らそうとしていたのを鑑みると何も考えていなかったんだろうね。
 全く、あんな人が司祭になるなんてどんな教会だよ。当分は新しい神父も来ないだろうし、嗜む子牛亭の孤児院に子供達を受け入れることになりそう。
 そうなると僕はラザラさんと一緒に領主様に会わないといけなくなるんだよね。クルシュ様以来の貴族様とお話・・・ああ、やだな~。

「ルークさん、ルークさん」
「あ、すいません。ちょっと考え事を」
「色々迷惑をかけてしまってすいませんでした」
「いやいや、ラザラさんの事じゃなくて・・この後、領主様に会わないといけなくなるから・・」
「そこまで考えていたんですか、ありがとうございます。そうですね、ワインプールの領主様はルザー様ですね。あまりいい噂は聞きませんが」

 やっぱり、あんな司祭を野放しにしている人なだけあっていい人ではなさそうだな。あ~気が重い。

 ラザラさんと教会の探索を済ませた。アザラーノフのおかげでたんまり証拠が集まりました。ギルドに提出するのでギルドに向かいます。

 ギルドに着くとアレイストさんとジャレトさんが二階で手を振っていた。僕は親指を立てるとアレイストさんも親指を立てて笑った。これだけ証拠があれば大丈夫でしょう。

「いっぱいあったようだね」
「はい、これだけあれば大丈夫でしょう。アザラーノフって署名もついてるし」
「そりゃいいね。馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどここまでとは恐れ入ったよ」

 アレイストさんは僕の出した紙を見て呆れて笑っている。確かにここまで完璧だと笑っちゃうよね。

「領主様にこの事は話すわけだけど、覚悟してね。あの男をそのままにしていた男だからね」
「はい・・。本当は嫌ですけど」
「ルークが色々出来る事は言わないから大丈夫だと思うけど、その時はちゃんと断るんだよ。一緒に行くつもりだけど断られたら従うしかないからね」

 そうか、アレイストさんも来てくれるんだ。ちょっとホッとした。

「領主様には今日連絡するから、少ししたら連絡を入れるよ」
「お願いします」
「任せておきなさい」

 ジャレトさんが胸を叩いてガッツポーズをしながら話した。普通に接していれば普通に頼れるおじさんなんだな~。

「という事で私と訓練を」
「は~、それを言わなければいい人なんだけどね」

 少し見直したんだけどやっぱり戦闘狂なジャレトさんでした。アレイストさんが呆れて首を横に振っています。

 僕とラザラさんはギルドを後にした。
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