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第二章 黒煙

第三十六話 愛は盲目

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 嗜む子牛亭に孤児院を作る作業をして外が暗くなった。この時を待っていたと言わんばかりに僕は例のあの自販機を設置していく。

「ルークさん」
「あ、ワティスさん」

 木箱を設置しているとワティスさんに声をかけられた。横にはクコが付き添っているのでこんな外が暗くなっても安心だね。

「それがエリントスを有名にした自販機という奴か?」
「そうだよ。自動販売してくれる木箱で自動販売機だよ」

 僕は得意気に胸を張った。名前は自分で考えたわけではないので偉そうにはできないんだけどね。

「ワインプールの領主には承諾を得たんですか?」
「いえ、連絡すらしていません。ですがダリルさんが大丈夫って言っていたのでやっちゃおうと思って」

 夜中に外に出ようと思ったらダリルさんに声をかけられたんだよね。それでポーション自販機の事を聞かれて大丈夫って言われたんだ。ワティスさんの顔を見ると少し複雑な心情のようで考えこんじゃった。

「ポーションがいつでも買える木箱、こんなものを置いてしまったらポーションを売る商人は行き場を失いますよ」
「教会の回復魔法にすがるよりはいいと思うんです」
「完全に教会と敵対するという事ですか?」
「敵対するっていうと語弊があるけど、とにかくあの司祭には喧嘩を売ってます」

 僕はあの司祭には頭を下げません。司祭のくせに子供達を売り買いしたり物扱いするし。なにが司祭だって言うんだ。あんなの司祭なんて名乗らせている教会なんてなくしちゃったほうがいいんだ。

「確かに人間の世界では教会という団体は強いな。何度か大司祭とか言うのがわらわに喧嘩を売ってきた事があったがそいつらもいきがっておった。一瞬で灰になっていったが」
「・・・」

 ちょっとクコ、ワティスさんの前で何という事を言っているんだ。恋は盲目って言うけど流石にこの話は看過できないでしょ。

「流石クコ、一生愛しているよ」

 あ、盲目だったみたいです。ワティスさんは呆れていたんじゃなくて憧れていたみたい。輝く目でクコを見つめている。クコはクコでまんざらでもない様子です。

「ルーク、話は変わるのじゃが、いいか?」
「どうしたの、改まって」
「シャラの事なんじゃ」

 そういえばそんな白い龍いたね。僕らに撃退されて一目散に街から出ていった白い龍さん。クコを亡き者にして自分が頂点に立とうとした龍。全くいい迷惑だよね。

「あやつ、まだ諦めていない様なのじゃ。嫌な予感がする」
「ええ、って事はこの街の中にいるの?」
「かもしれん」

 かもか~。不確かな事を言ってみんなを心配させたくないな。とりあえずみんなには言わずにいよう。

「まあ、ポーションは銀貨一枚で買えるように変えておいたからクコもいくつか持っておいてよ」
「・・・これ全部レジェンドハイエリクサーなのか。どういう仕組み何じゃ?」

 僕のポーション自販機を見て呆れながら話すクコ、ワティスさんも目が飛び出るほど驚いてる。レジェンドハイエリクサーは生きていれば何でも治るって言う物らしいから驚くのも無理はないよね。何でも両手両足がなくなった人も一瞬で治ったらしいよ。凄いな~って僕のなんだけどね。

「は~、ここまで規格外なのに目立ちたくないとか言う、おかしなルークじゃ。そのくせ困っておる孤児院を救おうと奮闘しておる」
「微力ながら私、ワティスも協力します。教会がルークさんに敵対した時、ワティス商会は反旗を翻します」

 クコが話した後ワティスがすかさず僕への助力を申し出てくれた。僕を味方につけた方が勝算があると計算したんでしょうね。それにクコがいればいくらでも素材が手に入るしぼろもうけだもんね。
    まあ、そんな事をするとは今のワティスさんからは想像もできないけど、だってクコにぞっこんだもん。
    クコの素材は僕も持っているけど圧倒的強者感を感じる素材でメラメラと黒い炎を宿してるんだよね。ユアンの装備でも作ってあげようと思ったんだけど圧倒的悪役感が出そうで考えあぐねてます。

 着々とポーション自販機を設置していく僕はルンルン気分です。これでこの街でも死人が減っていくでしょう。それにリザードマン達の動向が怪しいって言ってたから冒険者の人達には良い物だよね。
 そういえば、白い龍の動きとこういった魔物の動きはかんけいしているのかな?こう言った事って決して偶然じゃないと思うんだよね。嫌だけど英雄の話なんかでこう言った事があったし。
 英雄が偶々立ち寄った街で龍が現れて、龍が魔物の群れを操り街を襲う話。英雄は見事に光の剣で魔物を打ち払い龍を封印したんだってさ・・・。正に、偶々立ち寄ったユアン、英雄がいましたよ。そして、龍も二匹います。さてさてどうなってしまうんでしょうか?兄さん心配です。

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