157 / 165
第四章 平穏

第十二話 時空をかける

しおりを挟む
 端仕事が受けられなかったのでみんなに挨拶して、次の日にワインプールに帰る事にする。そろそろ、孤児院も心配だし、ニャムさんとかも怒っているだろうしね。

 という事でエリントスで一日買い物やみんなでゆっくりして過ごした。最後の日は小鳥のさえずり亭に泊めてもらった。ルルちゃんと遊んだり、小鳥のさえずり亭をお掃除しました。スリンさんには色々お世話になったのでお返しだね。

「もう、行くのかい?」
「はい」
「帰ってきたらここにもよるんだよ」
「絶対に寄りますよ」

 僕らはミスリーの引く馬車に乗りこんだ。ワインプールに帰る日になってしまいました。

「屋敷には誰かいるのかい?」
「レインもいるし、クルシュ様のメイドさんのプラムさん達が管理してくれるみたいです」
「そうかい、それなら心配ないね」

 スリンさんは屋敷が心配だったみたいだけど、僕の答えを聞いて安心してくれました。

「レインには作物をスリンさんが欲しかったらあげるように言っておいたのでよかったら覗いてみてください」
「いいのかい?」
「わ~い、ルークお兄ちゃんの果物食べた~い」

 果物を夕飯の時に出すとスリンさんもルルちゃんも喜んで食べてくれた。それがいつでも食べられると分かった二人は口が緩んでいます。

「タダだと悪いからお金を預けるよ」
「いえ、いらないですよ」
「親しき中にも礼儀ありだよ。ちゃんと受け取りな」
「はい・・」

 お金はいらないんだけど、スリンさんもお金を扱う仕事をしている人なだけあってもらうだけじゃ許せないみたい。本当にいらないんだけどな~。

「じゃあ、行ってきます」
「「いってらっしゃい。みんなもまたね」」
「「「いってきます!」」」

 僕らはエリントスを後にしてワインプールへと向かった。






「お姉ちゃん、この後ルークはどうなるの?」
「もう、旅を辞めちゃうの?」

 ルークのこの後を知りたくて子供たちが私の手をゆすってくる。

「ルークは辞めないよ」
「そうだよね~」
「早く次が見たいよ~」
「明日見ようね。だから、今は眠りなさい」
「は~い!」

 次の話をせがむ子供達。私は子供たちを寝かしつけてあの人の製作室へと向かった。

「あ~モナーナ、どうしたの?」

 私の大好きな人。私とニャム、それにユアンの旦那様。あれから2年。今、私たちは孤児院とエリントスの屋敷を行ったり来たりして過ごしています。孤児院は人も潤沢になり、私たちがいなくても経営できてる。エリントスの私のお店は少し人が少なかったんだけどレインが手伝ってくれたので今は余力がある感じ。
 今、私たちは孤児院の地下に作られたルークの部屋に集まっているの。

「モナーナお姉ちゃんは兄さんの作っているものが気になっているんでしょ?」
「モナーナは何が心配にゃ?」

 私が心配そうな顔で部屋に入ってきたことでみんなが疑問に思っているみたい。だって心配にもなるよ。だって、

「ルークは今、神様と同じようなことをしようとしているんだよ。そんなことして無事でいられるの?」

 ルークは今、両親の世界に行くことを目指している。アリスのスキルを破った時の発想を元に時間を司るマナを主軸に私よりも少し大きめのダイヤの宝石にすべての属性のマナをためていく、それで時空を超えてお父さんを追跡するんだってさ。説明されてもよくわからなかったけど、どれだけすごい事かはわかる。
 彼のお父さんが言っていたのを聞いて、神様でも時空間を移動するのはとても大変なことなのが伺えたから、私は凄い不安。ルークを信じていないわけじゃないけど、もしも、彼を失うことになったらと思うと・・。

「大丈夫だよ。僕は両親に三人を紹介するんだ。それにユアンもユアンのお父さんと合わせたいからね」
「お兄ちゃん!」

 ルークはユアンの為にもお父さん達の所への移動を試みている。ユアンはお父さんの顔を知らない。ルークはやさしいからユアンにもお父さんを見せてあげたいと頑張っている。だけど、本当にできるのだろうか?

「そろそろ、マナがいっぱいになるね」

 大きなダイヤの宝石が色々な属性の色に染まっていく。マナが混ざり混ざって光闇になると薄っすらと大地が映っていく。

「これは僕たちの世界じゃないかな?」
「どうだろう。世界ってこんなに広いのかな?」

 ルークのお父さんからのメモのように画面が変わっていく。海や川、山が映るけど魔物はいなくて動物だけが元気に走り回っていた。

「お父さんを探さないとね」

 ルークはダイヤを触って画面を動かしていく、石の建物が乱立する場所を見ると人々が歩いているのが見える。

「凄い人にゃ。祭りなのかにゃ?」

 ニャムが驚いてる。確かにすごい人で目が回りそう。

「兄さん、今の髪の長い人!」
「あっ」

 人だかりの中に黒髪を後ろで一つに結っている男性が歩いているのが見えた。しばらく、観察していると綺麗な女性と待ち合わせしていたようで、手を振って近づいていく。

「お父さんとお母さんだ。サーチの魔法が聞いてよかった」

 ダイヤを触りながらルークは魔法を唱えていた。探索魔法の一つである、サーチ。ルークは自分の血をサーチの材料にして、お父さんを探していた。思ったよりも簡単に見つかったね。

「それじゃ、行こうか」
「えっ?いま?」
「そうだよモナーナ。二人もいい?」
「大丈夫にゃ」
「僕も大丈夫」

 みんなルークの輝く目に頬を赤く染めて頷いてる。私も見つめられて頷いていた。

「驚く顔が早く見たいよ」
「ふふ、ルークのお父さん腰ぬかしそうだね」

 私たちは誰も知らない世界に飛び込んだ。

 私たちは世界で初めて異世界を渡る存在になった。いつの間にか私もルークと同じ英雄に・・・






神威異夢華です
1ルークを見ていただきありがとうございます
辞めにしようと思ったのですが更新ペースを遅くして少しだけ続けることにしました
これからもよろしくお願いいたします
しおりを挟む
感想 296

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...