156 / 165
第四章 平穏

第十一話 ドレス

 僕はモナーナと幸福な時間を過ごした。程よく酔いが回ってきて僕はモナーナの笑顔を最後に意識を無くした。

 しばらく、真っ暗な景色が続く。

「兄さん」
「ルーク」

 耳の傍からそんな囁きが聞こえてきて、僕はうつらうつらと目を開いていく。

「あれ?ここは?」

 両腕にふにょんふにょんな感触が襲う。その感触を目で追うとモナーナとユアンが僕の両腕を胸で挟んでいました。お胸って柔らかいんだね。

「二人はどうしてベッドに?」
「「・・・」」
「寝たふりしてもだめだよ」

 モナーナとユアンは僕の言葉に無言です。さっきまで僕の耳元で囁いていたので絶対に起きているはず。

「もう朝だから起きようか?」
「もうちょっと・・・」
「いいでしょ?」

 モナーナはわかるけどなんでユアンまで?正直、モナーナはとっても嬉しかった。ユアンも嬉しいけど弟として接していた分女の子として見れない。とか言ってユアンに女の子を感じたことがあるのが兄としての威厳に傷を・・・。

 二人の要望通り朝日が差してきた部屋に静かな時間が流れていく。モナーナと一緒に飲んでいた、出窓のある部屋でキングサイズのベッドに三人で寝ている。僕は身動きできません。二人に思いっきり腕を抱かれてしまっているから。二人から甘い匂いがしてきて、緊張してしまうよ。

 しばらく、そんな静かな時間が過ぎるとレインとルナさんが部屋にやってきてため息をついてベッドを持ち上げ始めました。

「ちょっとレイン!」
「お父さん!浮気はダメだよ!」

 だから、お父さんって言うのはやめようね。レインの立ち位置が読めない。

「モナーナは僕の大切な人なんだから傷つけるようなことしないで」
「ルーク」

 僕の言葉にその場は静まり返った。レインはすぐにベッドを地面に静かにおいた。

「じゃあ、モナーナさんは私のお母さんになるのかな?」
「え?」 

 結婚とかはまだ早いよ。だけど、ゆくゆくは・・・。

「おかあさ~ん」
「ルーク助けて」
「う~ん」

 レインはモナーナに抱き着いている。助けを求められているんだけど何とも。

「じゃあ、モナーナは僕の姉さんだね。お姉ちゃん!」
「ユアン?」

 ユアンまでモナーナに抱き着いています。なんともほほえましい風景だけど、モナーナが困るから早く下に降りてごはん食べましょう。

「私は三番目ですかね?」

 僕はルナさんのつぶやきを聞こえなかったことにして部屋を後にしました。モナーナは困った顔です。そんな姿も可愛いんな。

 パーティーをしたにしてはとてもきれいな屋敷。それもそのはず孤児院と一緒で汚くなった時は壁などが掃除をしてくれる。掃除に人はいらないんだ。最高にいい家だね。
 僕はアイテムバッグから白いパンを数個取り出してジャムを塗っていく。モナーナ達が下りてくるまでに食卓に並べ終える。

「ルークごめんね。準備させちゃって」
「大丈夫だよ。モナーナは二人のお母さんみたいなものなんだから」
「もう、ルークまで・・」

 両腕をユアンとレインに抱きしめられながらキッチン前の噴水が見える部屋にやってきた。レインもユアンも嬉しそうだ。

「二人もそろそろモナーナを離してあげて。さあ、ご飯にしよ」

 みんなと雑談をしながら食事を終えると冒険者ギルドに向かった。また端仕事をして街を綺麗にするんだ。ワインプールに帰る前にしっかりとピッカピカにしておく。

 




 僕らは全員で冒険者ギルドについた。ノーラさんではない人が受付をやっているのがうかがえる。

「いらっしゃいませ・・・あら?あなたは確かリバーハブ村で」

 その人は紛れもなくリバーハブ村で僕に恩恵の儀をしてくれたお姉さんだった。

「洗濯板さんじゃないですか。お元気でしたか?」

 なんでリバーハブ村の受付嬢さんがここにいるのかな?

「なんであなたがここに?」
「ああ、それね。実はここで働いていた人が一人いなくなったので私がここに来たんですよ。そんなことよりも洗濯板さんはなんでここに」
「先ほどからなんですかあなたは!ルークさんに向かって」
 
 受付嬢さんが僕に向かって洗濯板というものだからルナさんがキレてしまった。よく見るとモナーナ達も不満そうな顔で受付嬢さんを睨んでいる。

「え?だってこの人の職業は洗濯板なんですよ」
「それは昔の話ですよ。今は何でも士っていう職についています」
「そうだったんですね。でも、最初洗濯板だったことは本当の事ですよね」
「そうですけど」
「なら、私は悪くないと思うんですけど?」

 確かに最初の職業は洗濯板になっていた。あれは僕が洗濯ばっかしていたからだったわけで致し方なかった。

「それは本当のようですけど、今は違います」
「私はそれを知らなかったんですから仕方ないでしょ?」

 ルナさんと受付嬢さんのいがみ合いは睨みあいになっていく、どうするのこの状況。

「あなたは洗濯板さんの何なんですか?」
「また言いましたねあなたは!」

 ルナさんは我慢ならなかったようで弓に手をかける。

「ちょっと待った。エルフの姉ちゃん」
「止めないでください」
「いいや、止まらねえよ」
「え?」

 受付の机に冒険者達が集まっていく、その圧に僕を洗濯板と言っていたお姉さんはたじろいでいる。

「お前は知らねえだろうがな、ルークさんはこの街の英雄なんだよ」
「洗濯板なんて言っていい人じゃねえんだ」
「いい加減そのくせえ口を閉じやがれ」
「ちょっと可愛いからって調子に乗るなっての」

 男も女も口々に受付嬢さんを罵倒した。その様子に受付嬢さんは唖然としている。

「な、なんですか。みんなで寄ってたかって」
「謝れ!」
「ルークさんに謝れ!」

 受付嬢さんが冒険者達に反論しようとすると謝れコールが冒険者ギルドに響いていく。その騒動でギルドマスターも奥の部屋から出てきてしまった。

 騒いでいたのはみんなだったのになぜか僕が奥の部屋に連れていかれた。端仕事したかっただけなんだけど。




「それであの騒動はどういったことで起きたんですか?」

 ギルドマスターのリカールさんがため息をついて僕に聞いてきた。

 僕らが通されたのはギルドマスターの部屋、応接室みたいに机とソファーが置いてある。僕らはソファーに座って説明をしていく。

「そういう事か・・・」

 リカールさんは頭を抱えてしまった。何だか悪いことしたな~。

「冒険者達と軋轢があると受付嬢はままならない。それに私もあなたには恩がある。そんなことを言う職員を守るわけにはいかないな」
「そんなに気にしてないので大丈夫ですよ」
「いや、これは決定事項だ。君たちは何事もなかったように冒険者ギルドを出てくれ。あとは私が言い渡す」

 リカールさんは鼻息荒くそう言ってきた。エリントスの英雄になった理由を言えば納得してくれると思うけど、今のリカールさんには声は届かないだろう。エリントスを救ったことでエリントスで僕の悪口を少しでも言うとこういうことになってしまうのか・・・。あまりいいことじゃないね。

 僕らはそのまま冒険者ギルドを後にした。裏口から出たのでその後どうなったのか知らないけど、あの人はいなくなったらしいです。リバーハブ村に帰ったんでしょう。
 
 流石に追い出されてしまうのは可哀そうだと思うけど、結局あの人って僕の名前を知らないんだよね。最後まで僕の名前を言わなかったし。そう考えるとあの人自体に問題があった気がする。これは仕方ない事だったのかな?
 


 まあ、そんなこと、気にするだけ損だね。空いた時間で今度こそユアンの可愛い服装備を製作だ。

「えっとユアンは聖属性で戦うから」

 そうそう、ユアンは聖属性で戦うからどうしても白い装備になっちゃうんだよね。漆黒の剣も上げているので白黒コントラストが綺麗なドレスタイプにしようかな。
 白と黒のヴェールに、白黒の炎が体の部分を彩る。うん、可愛くて綺麗だ。

「ユアン」
「どうしたの兄さん?」

 屋敷の一部屋で綺麗に縫いあがったドレスが完成したのでユアンを呼んだ。ユアンが入るなりドレスを広げてみせるとユアンは頬を赤くして顔を両手で覆ってしまった。

「に、兄さん。僕たちは兄妹だよ」

 何を誤解したのかユアンがそう叫んだ。どうしてそんな誤解を?

「ふふ、ユアンが誤解するはずだよ」
「モナーナ?」

 部屋に入ってきたモナーナがあきれてそう話した。

「その服は普通の服じゃないよ」
「え?可愛くない?」
「可愛いんだけど、それウエディングドレスだよ」
「ああ、そうかウエディングドレスか~」

 可愛くて綺麗な服をと思って作っていたらウエディングドレスになってしまったようです。モナーナの見せてきた服も可愛かったからそれでもよかったんだけど、気がついたらすごい物作ってた。似合うからヴェールまで作っちゃったのは失敗だったかな?

「じゃあ、やめて別の作ろうか?」
「!?ダメ!絶対にダメだよ。それは僕の!」

 アイテムバッグの肥やしにしようと思ったらユアンがウエディングドレスを素早く僕から奪った。気に入ってくれたならいいけど、兄からウエディングドレスもらってうれしいのかな?

「ルーク、あと二着、作ってよね」
「えっ?二着?」

 この後、僕は二着の青と黄色のウエディングドレスを作ることになりました。なんで二着なんだろう?
感想 296

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!