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第三部一章 人生というのは残酷非道
植物
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すると後ろから、アンが出てきた。手には煌めく何かを持っていた。たぶん、あれが植物なのだろう。
「それで、自分では意識がないのだな? まあいい、早く儀式を始めるぞ」
ドアから差し込む光が見えないから、もう外は暗く陽が沈んでいるのだろう。儀式を始めるには夜中じゃないとダメだから、もってこいの時間だ。だけど、休憩は結局できないのか。そう少し落ち込みながら、魔導書を片手に持ち、ドアの方へと歩く。疲れている歩き方だ。
「ミアの方はもうできましたか? 魔力が全く感じられないのですが」
私はもう魔力が空になるくらい魔力を消費した。それでようやく、あの本を読み切れた。それも結構ギリギリでだ。
「本の方は読み終わったけど、体力がすり減ったんだよね~」
彼女の顔は、光っている植物のせいでよく見えないけど、微笑んでいることが分かった。
そして、外に出ると火が焚かれており、火花がパチパチと音を立てていた。そして、長老の家の前には村人全員が立っていた。皆、着物を身につけていて、魔導書の通りに進んでいる。本当に誰も魔導書を読めなかったのか? 疑わしいくらいに魔導書通りに進む。もしかしたら過去からの言い伝えでもあったのかもしれない。
「お姉さん、魔導書的にはこのままでいいかな?」
「はい。この後はドラ・キュリアの死体を村人一同で囲えばいいです!」
アンが先に外に出て、広場になっているところまで空を飛ぶ。魔力の消費の方は大丈夫なのか? まあ聖騎士なのだから、魔力消費を少なくする方法でもあるのかもしれない。
「そうか、それでドラ・キュリアの死体はどこにあるのだ?」
長老が振り返って私を見ると同時に、アンが異世界袋からドラ・キュリアを出した。そこはここから徒歩十分というくらいの場所である。
「ああ、あの子がドラ・キュリアの死体を持っていたのか。それで、プランスの嫁ということに意識がないのだな?」
長老は空を眺めていた。綺麗な星空が夜空には広がっていた。
そして、星の数を数えると、プランスがいない傷が和らいだ気がする。それは無限に思えるほどの数がある。星の数はあれだけあれば、プランスを生き返らせることが可能ということだ。流星が夜空を感動に変えた。何か望みが叶うかもしれない。なんだか心が高揚した。
「私はプランスの嫁に絶対なります! それはプランスを生き返らせることに変わりありません」
「そうか、それならプランスも幸せだろうな。プランスのことはよく知っていると言えば嘘になるが、知らないと言っても嘘になる」
長老は外に出てゆっくり歩き出す。場所も分かっているようで、止まることなく歩く。約十分のところなら、長老の迫力からして一瞬で着くだろう。それほどに長老の迫力はすごい。
なのに、老化が進んでいるのか私をプランスの嫁と勘違いする。私は嫁になりたいだけの、夢を見ている人物なのに。だからなんだか傷ついた感覚になってしまった。夢を創られたような感じだ。
「プランスとはどんな関係でした?」
「ただの知り合いだ」
プランスとの関係は頑なに話そうとしなかったけれど、何か親しかったことがよく分かった。あともう少しでプランスにも会えただろうに、ルカがいなければよかったのだ。
「まあ、この村を救ってくれた人物じゃ」
夢を見るように、空を眺め歩く長老の背中は意外にしっかりとしていて、体格がいいことがここからでも分かった。
「何から救ったんですか?」
「聖騎士からじゃ」
やっぱり聖騎士か。引いては聖騎士に命令したその国の王だろう。
「やっぱりそうなんですね」
「プランスがどうして、ここにいたかは分かる。だが言ってはならないな」
長老は言えない秘密を抱えていることと、プランスとの関係が深いということがよく分かった。それがどんな秘密かは知りたくても、知りたくない顔をする。それは、秘密にすることには意味があるから、知りたいと詰め寄られたら私も嫌だ。
「長老との話は楽しいです」
「よくプランスの嫁も言っていたな。やっぱりお前さんはプランスの嫁じゃな?」
私はここに来たことがないから、それは絶対にないのだろうけど、私がプランスの嫁でここに来ていることと、プランスの嫁ということを忘れているという夢を見ていたい。もしかしたらそれが本当なのかもしれない。このことは誰にも分からない。だけど、プランスとは出会う前からよく知っていた人物だったという感覚が染み付いている。
「まあ、それが夢ですね。長老はもしも、私がプランスの嫁だったらどう思いますか?」
不適切な問いだろうけど、まあこれでいい。私はそう思ったのだから。
「わしの眼からはお似合いだと思うぞ」
全く勿体無い言葉に涙を流しそうになってしまう。それは、プランスと好きになっていいという言葉に聞こえたからだ。もしもプランスが《魔王》だとしても、私は愛せるだろう。
「ありがとうございます。少し告白する勇気が出ました」
長老の後ろをゆっくりとついて行くのももうそろそろ終わり。もう儀式場が近いからだ。
「それで、自分では意識がないのだな? まあいい、早く儀式を始めるぞ」
ドアから差し込む光が見えないから、もう外は暗く陽が沈んでいるのだろう。儀式を始めるには夜中じゃないとダメだから、もってこいの時間だ。だけど、休憩は結局できないのか。そう少し落ち込みながら、魔導書を片手に持ち、ドアの方へと歩く。疲れている歩き方だ。
「ミアの方はもうできましたか? 魔力が全く感じられないのですが」
私はもう魔力が空になるくらい魔力を消費した。それでようやく、あの本を読み切れた。それも結構ギリギリでだ。
「本の方は読み終わったけど、体力がすり減ったんだよね~」
彼女の顔は、光っている植物のせいでよく見えないけど、微笑んでいることが分かった。
そして、外に出ると火が焚かれており、火花がパチパチと音を立てていた。そして、長老の家の前には村人全員が立っていた。皆、着物を身につけていて、魔導書の通りに進んでいる。本当に誰も魔導書を読めなかったのか? 疑わしいくらいに魔導書通りに進む。もしかしたら過去からの言い伝えでもあったのかもしれない。
「お姉さん、魔導書的にはこのままでいいかな?」
「はい。この後はドラ・キュリアの死体を村人一同で囲えばいいです!」
アンが先に外に出て、広場になっているところまで空を飛ぶ。魔力の消費の方は大丈夫なのか? まあ聖騎士なのだから、魔力消費を少なくする方法でもあるのかもしれない。
「そうか、それでドラ・キュリアの死体はどこにあるのだ?」
長老が振り返って私を見ると同時に、アンが異世界袋からドラ・キュリアを出した。そこはここから徒歩十分というくらいの場所である。
「ああ、あの子がドラ・キュリアの死体を持っていたのか。それで、プランスの嫁ということに意識がないのだな?」
長老は空を眺めていた。綺麗な星空が夜空には広がっていた。
そして、星の数を数えると、プランスがいない傷が和らいだ気がする。それは無限に思えるほどの数がある。星の数はあれだけあれば、プランスを生き返らせることが可能ということだ。流星が夜空を感動に変えた。何か望みが叶うかもしれない。なんだか心が高揚した。
「私はプランスの嫁に絶対なります! それはプランスを生き返らせることに変わりありません」
「そうか、それならプランスも幸せだろうな。プランスのことはよく知っていると言えば嘘になるが、知らないと言っても嘘になる」
長老は外に出てゆっくり歩き出す。場所も分かっているようで、止まることなく歩く。約十分のところなら、長老の迫力からして一瞬で着くだろう。それほどに長老の迫力はすごい。
なのに、老化が進んでいるのか私をプランスの嫁と勘違いする。私は嫁になりたいだけの、夢を見ている人物なのに。だからなんだか傷ついた感覚になってしまった。夢を創られたような感じだ。
「プランスとはどんな関係でした?」
「ただの知り合いだ」
プランスとの関係は頑なに話そうとしなかったけれど、何か親しかったことがよく分かった。あともう少しでプランスにも会えただろうに、ルカがいなければよかったのだ。
「まあ、この村を救ってくれた人物じゃ」
夢を見るように、空を眺め歩く長老の背中は意外にしっかりとしていて、体格がいいことがここからでも分かった。
「何から救ったんですか?」
「聖騎士からじゃ」
やっぱり聖騎士か。引いては聖騎士に命令したその国の王だろう。
「やっぱりそうなんですね」
「プランスがどうして、ここにいたかは分かる。だが言ってはならないな」
長老は言えない秘密を抱えていることと、プランスとの関係が深いということがよく分かった。それがどんな秘密かは知りたくても、知りたくない顔をする。それは、秘密にすることには意味があるから、知りたいと詰め寄られたら私も嫌だ。
「長老との話は楽しいです」
「よくプランスの嫁も言っていたな。やっぱりお前さんはプランスの嫁じゃな?」
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「まあ、それが夢ですね。長老はもしも、私がプランスの嫁だったらどう思いますか?」
不適切な問いだろうけど、まあこれでいい。私はそう思ったのだから。
「わしの眼からはお似合いだと思うぞ」
全く勿体無い言葉に涙を流しそうになってしまう。それは、プランスと好きになっていいという言葉に聞こえたからだ。もしもプランスが《魔王》だとしても、私は愛せるだろう。
「ありがとうございます。少し告白する勇気が出ました」
長老の後ろをゆっくりとついて行くのももうそろそろ終わり。もう儀式場が近いからだ。
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