164 / 170
第六部第一章 運命の時
十二話
しおりを挟む
ミアの言葉に、プランスは思い出したように真顔になった。
(あの女の子かぁ。今更とは思うが、どうなっているんだろうなぁ)
プランスはリーナのことを思い出して、目を瞑りながら、笑った。やっぱり何か思い出でもあるのだろうか?
でもやっぱり、昔のことを思い出したから会いたいと思ってしまうのかもしれない。
けれど、プランスもミアと同じようことを考えていた。
それはやはり、もう成長してしまっているのではないだろうか、ルカに殺されいるのではないかと考えてしまうのだ。ルカならリーナのことを殺してもおかしくないだろう。
もはやあの、村は無くなっている可能性があるが、リーナは生きているし村もまだあると、ミアとプランスは直感で感じたし、創造神の力で概ね把握できている。
何せこの世界を作ったのは、ミアとプランスなのだから、全てが手中に収まるように見えるのだ。けれどしっかりは見れない場合がある。そのため行く必要があるのだ。
「よし分かった。シルバーとアンも連れていくか?」
「勿論!」
二人が意気投合して、旅に行く事がほぼ確定事項になった。けれど、アンはルドラから離れたくないだろうから、行くのを拒む可能性がある。けれど、ルドラが付いてこれば良い話だからすぐに解決できるというわけなのだ。
そのことを完全に理解しているミアとプランスは、呼びかけに行ったのだ。
ミアはスリッパからヒールに履き替えてアンの元に行く。当然近くにルドラもいるだろうから一石二鳥のように、旅に出るか訊けるのだ。
瞬間移動で行くのもいいが、近くだから、運動代わりに歩いていくことにした。やはりヒールは踵が痛いけど、だんだん慣れてきて痛みは生じなくなってきた。
ミアは階段に着くと走って階段を降りる。転んでも怪我をしないので、何も考えずに階段を走り抜ける。
プランスの場合、シルバーが遠いところにいたから瞬間移動で向かうと、何か作業していた。だからといってプランスは、話しかけないわけには行かない。
そう思いながら、プランスはシルバーに話しかける。
「あのさ、昔みたいに旅に出ないか? 嫌ならいいが、これは昔のことをまた改めて思い出すかもしれねえじゃん?」
プランスがシルバーに訊くと、シルバーは包丁をまな板に置き。プランスの方を向くと、シルバーはなんだか乗り気な感じの笑顔を向けた。
やっぱりプランスにとってシルバーは欠かせないのか、「来いよ!」とプランスは誘った。まるで子供のような言葉だけれど、シルバーの心は動くように「分かったよ」と言った。
リーナのことをシルバーは知っているから、話せば誰かわかるだろう。何せリーナを連れて一緒に、散歩したこともあるのだから。
「じゃあ行く時になったら教えるよ」と、プランスは言って瞬間移動で魔王城に戻った。
シルバーはなんでまた旅に出かけることになったのだろうと愉しげに思い、口元をニヤリとしても、再び包丁を持ち、肉を切り始めた。
アンとルドラのところについたミアは朗らかな口調で、言った。
「一緒にまた旅に出ない!?」
あまりに唐突な言葉に、アンは一瞬何言っているの? と顔を顰めた。
今ミアとアンとルドラは魔王城の一階にいるため、声が反響するから、ミアの言葉に執事が振り向く。けれど笑ってどこかへと歩き出した。
アンとルドラは一瞬固まったけど、すぐに考えるように言った。
「アンだけ行って来なよ」
アンはルドラの言葉に、動揺した。ミアとしてはアンとルドラで来ても全然大丈夫だけれど、ルドラは今までのこともあるから、自分は旅に出ると邪魔なのかもと、引き下がっていたのだ。
でもアンとしてはルドラと一緒がいいと思ってしまうところも大いにあった。迷いどころだ。
「なんで?」
「今までミア様とシルバーとプランス陛下と一緒に旅してきただろ? 俺は部外者だよ」
アンはルドラの言葉に、なんて答えればいいか分からなかったけれど、アンの背中を押すようにルドラが続けた。「また、何かしらの出来事を楽しんで来な」
この言葉に、アンは渋々頷いた。ルドラは柔らかな、微笑みを浮かべるが、少し寂しげな顔をしていた。仕方ないように、アンは「うん! またのんびり旅に出ようよ!」
と言った。ミアに唐突な問いにすぐさま応えられる、というところにミアは信用されているのだと伝ってきた。
アンはまあ大丈夫って安堵の息を吐き捨てた。
その頃、ルカは何もしていなかった。座禅を組んで寝ているだけだ。別に意味のないことだけれど、昔よりも数千倍力が上がっている。
これなら魔族を入れなかったら、世界最強だろう。けれどプランスの創造の力でルカなんて一発で殺せてしまう。
それは最強のプランスと比較しているからであって、決してルカが弱いわけではない。
「あんな状態でずっと、寝てるけど腰痛くならないのかな?」
通り過ぎて行く、兵士が小声でつぶやいた。けれどルカは目を覚さない。たぶん魔力を温存して魔力を増加させようとしているのだろう。
ルカの近くには鞘にしまってありエクスカリバーが置いてあり、常に気配察知という野生の勘を働かしているため近づいたら一瞬で斬られるがそれは、仲間には反応しないから、兵士は何も考えずに近くをうろうろと歩く。
最近はルカの催眠術で部下達は奴隷化というより、自分への殺意を無くして、完全にルカに忠誠心を持っている。だが暴力や暴言の連発はやめないしミスをしたら処刑される可能性も高い。
流石に催眠術では処刑の苦しみは変えられないのか、処刑させられる前に逃げようとする者が多いのだが、すぐに捕まえられてすぐさま処刑されてしまう。死ぬ前に何度も謝るけど、そんな声すらも断末魔に皆には聞こえてしまう。
そして首を飛ばされてしまい死ぬ。
これがゼレーナ王国の日常と言っても過言ではない。
「俺達はミスしなようにな・・・・・・?」
兵士が屋敷を抜けると二人でそう言った。けれどルカの命令には無理なことを言う時もあるから、ミスする可能性が高いのだ。だから毎日のように処刑されるのだ。
「でもよ、プランスとかを殺せとかさ無理なこと言われてらどうするんだよ?」
もう一人の兵士はちゃんと理解しているらしい。ミスをする可能性の方が高いということを理解しているということは、ちゃんと誰の下につくのか、判断できるのかもしれない。
「そりゃあ俺がプランスを殺すに決まっているだろ! ルカ様に恩寵を貰ったんだぞ! 今の俺らなら余裕だって!」
どうやら恩寵という力をルカからもらっているらしいが、それはどんな力なのかわからない。そのため、プランス達には未知の力と戦わなければならないといけないというわけだ。
だけどプランスの創造魔力で一撃だ。どんな力だとしても、人間も全ての生物を創造したのはプランスなのだから確実に殺せてしまう。
「そうかぁ? でもよ、プランスは結構強えって言われてるぜ?」
部下は屋敷から結構離れた場所で止まり、木に背持たれる。今休憩時間なのかもしれない。
食事はまだ摂っていないのか、お腹を空いたように、ピクニックのために持ってきた弁当を開けて、ウインナーを食べる。弁当の中には色とりどりの、おかずが入っていて、嬉しそうに兵士は食べ始める。
この弁当は嫁が作った愛妻弁当というわけだからさらに美味しいのだ。
不覚にももう一人の兵士は、寝ている。なかなか疲れていたのかもしれない。
「やっぱうめえ! やっぱり女房と結婚してよかったわー?」
その声でもう一人の兵士が起きた。眠そうな顔をしているのだが、いい匂いにつられて目が覚めてしまった。
(あの女の子かぁ。今更とは思うが、どうなっているんだろうなぁ)
プランスはリーナのことを思い出して、目を瞑りながら、笑った。やっぱり何か思い出でもあるのだろうか?
でもやっぱり、昔のことを思い出したから会いたいと思ってしまうのかもしれない。
けれど、プランスもミアと同じようことを考えていた。
それはやはり、もう成長してしまっているのではないだろうか、ルカに殺されいるのではないかと考えてしまうのだ。ルカならリーナのことを殺してもおかしくないだろう。
もはやあの、村は無くなっている可能性があるが、リーナは生きているし村もまだあると、ミアとプランスは直感で感じたし、創造神の力で概ね把握できている。
何せこの世界を作ったのは、ミアとプランスなのだから、全てが手中に収まるように見えるのだ。けれどしっかりは見れない場合がある。そのため行く必要があるのだ。
「よし分かった。シルバーとアンも連れていくか?」
「勿論!」
二人が意気投合して、旅に行く事がほぼ確定事項になった。けれど、アンはルドラから離れたくないだろうから、行くのを拒む可能性がある。けれど、ルドラが付いてこれば良い話だからすぐに解決できるというわけなのだ。
そのことを完全に理解しているミアとプランスは、呼びかけに行ったのだ。
ミアはスリッパからヒールに履き替えてアンの元に行く。当然近くにルドラもいるだろうから一石二鳥のように、旅に出るか訊けるのだ。
瞬間移動で行くのもいいが、近くだから、運動代わりに歩いていくことにした。やはりヒールは踵が痛いけど、だんだん慣れてきて痛みは生じなくなってきた。
ミアは階段に着くと走って階段を降りる。転んでも怪我をしないので、何も考えずに階段を走り抜ける。
プランスの場合、シルバーが遠いところにいたから瞬間移動で向かうと、何か作業していた。だからといってプランスは、話しかけないわけには行かない。
そう思いながら、プランスはシルバーに話しかける。
「あのさ、昔みたいに旅に出ないか? 嫌ならいいが、これは昔のことをまた改めて思い出すかもしれねえじゃん?」
プランスがシルバーに訊くと、シルバーは包丁をまな板に置き。プランスの方を向くと、シルバーはなんだか乗り気な感じの笑顔を向けた。
やっぱりプランスにとってシルバーは欠かせないのか、「来いよ!」とプランスは誘った。まるで子供のような言葉だけれど、シルバーの心は動くように「分かったよ」と言った。
リーナのことをシルバーは知っているから、話せば誰かわかるだろう。何せリーナを連れて一緒に、散歩したこともあるのだから。
「じゃあ行く時になったら教えるよ」と、プランスは言って瞬間移動で魔王城に戻った。
シルバーはなんでまた旅に出かけることになったのだろうと愉しげに思い、口元をニヤリとしても、再び包丁を持ち、肉を切り始めた。
アンとルドラのところについたミアは朗らかな口調で、言った。
「一緒にまた旅に出ない!?」
あまりに唐突な言葉に、アンは一瞬何言っているの? と顔を顰めた。
今ミアとアンとルドラは魔王城の一階にいるため、声が反響するから、ミアの言葉に執事が振り向く。けれど笑ってどこかへと歩き出した。
アンとルドラは一瞬固まったけど、すぐに考えるように言った。
「アンだけ行って来なよ」
アンはルドラの言葉に、動揺した。ミアとしてはアンとルドラで来ても全然大丈夫だけれど、ルドラは今までのこともあるから、自分は旅に出ると邪魔なのかもと、引き下がっていたのだ。
でもアンとしてはルドラと一緒がいいと思ってしまうところも大いにあった。迷いどころだ。
「なんで?」
「今までミア様とシルバーとプランス陛下と一緒に旅してきただろ? 俺は部外者だよ」
アンはルドラの言葉に、なんて答えればいいか分からなかったけれど、アンの背中を押すようにルドラが続けた。「また、何かしらの出来事を楽しんで来な」
この言葉に、アンは渋々頷いた。ルドラは柔らかな、微笑みを浮かべるが、少し寂しげな顔をしていた。仕方ないように、アンは「うん! またのんびり旅に出ようよ!」
と言った。ミアに唐突な問いにすぐさま応えられる、というところにミアは信用されているのだと伝ってきた。
アンはまあ大丈夫って安堵の息を吐き捨てた。
その頃、ルカは何もしていなかった。座禅を組んで寝ているだけだ。別に意味のないことだけれど、昔よりも数千倍力が上がっている。
これなら魔族を入れなかったら、世界最強だろう。けれどプランスの創造の力でルカなんて一発で殺せてしまう。
それは最強のプランスと比較しているからであって、決してルカが弱いわけではない。
「あんな状態でずっと、寝てるけど腰痛くならないのかな?」
通り過ぎて行く、兵士が小声でつぶやいた。けれどルカは目を覚さない。たぶん魔力を温存して魔力を増加させようとしているのだろう。
ルカの近くには鞘にしまってありエクスカリバーが置いてあり、常に気配察知という野生の勘を働かしているため近づいたら一瞬で斬られるがそれは、仲間には反応しないから、兵士は何も考えずに近くをうろうろと歩く。
最近はルカの催眠術で部下達は奴隷化というより、自分への殺意を無くして、完全にルカに忠誠心を持っている。だが暴力や暴言の連発はやめないしミスをしたら処刑される可能性も高い。
流石に催眠術では処刑の苦しみは変えられないのか、処刑させられる前に逃げようとする者が多いのだが、すぐに捕まえられてすぐさま処刑されてしまう。死ぬ前に何度も謝るけど、そんな声すらも断末魔に皆には聞こえてしまう。
そして首を飛ばされてしまい死ぬ。
これがゼレーナ王国の日常と言っても過言ではない。
「俺達はミスしなようにな・・・・・・?」
兵士が屋敷を抜けると二人でそう言った。けれどルカの命令には無理なことを言う時もあるから、ミスする可能性が高いのだ。だから毎日のように処刑されるのだ。
「でもよ、プランスとかを殺せとかさ無理なこと言われてらどうするんだよ?」
もう一人の兵士はちゃんと理解しているらしい。ミスをする可能性の方が高いということを理解しているということは、ちゃんと誰の下につくのか、判断できるのかもしれない。
「そりゃあ俺がプランスを殺すに決まっているだろ! ルカ様に恩寵を貰ったんだぞ! 今の俺らなら余裕だって!」
どうやら恩寵という力をルカからもらっているらしいが、それはどんな力なのかわからない。そのため、プランス達には未知の力と戦わなければならないといけないというわけだ。
だけどプランスの創造魔力で一撃だ。どんな力だとしても、人間も全ての生物を創造したのはプランスなのだから確実に殺せてしまう。
「そうかぁ? でもよ、プランスは結構強えって言われてるぜ?」
部下は屋敷から結構離れた場所で止まり、木に背持たれる。今休憩時間なのかもしれない。
食事はまだ摂っていないのか、お腹を空いたように、ピクニックのために持ってきた弁当を開けて、ウインナーを食べる。弁当の中には色とりどりの、おかずが入っていて、嬉しそうに兵士は食べ始める。
この弁当は嫁が作った愛妻弁当というわけだからさらに美味しいのだ。
不覚にももう一人の兵士は、寝ている。なかなか疲れていたのかもしれない。
「やっぱうめえ! やっぱり女房と結婚してよかったわー?」
その声でもう一人の兵士が起きた。眠そうな顔をしているのだが、いい匂いにつられて目が覚めてしまった。
10
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる