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Chapter #2
ネイサンキャンパスにて
しおりを挟むマウントグラバットキャンパスと同じく、こちらの敷地もかなり広いらしい。
現地の在学生に加えて留学生も何千人と受け入れているのだから当たり前か。
校舎はいくつもの棟に分かれていて、どれもカラフルに彩られている。
やはり外国の建物は派手だなぁ、と圧倒されていると、どこか離れた場所から声が聞こえてきた。
「Kay~~~!!」
複数の黄色い声。
見ると、校舎の三階の窓から三人の女性がこちらに手を振っている。
アジア系であることはわかるけれど、それぞれの国籍はわからない。
彼女たちの視線の先にはカヒンがいて、彼も控えめに手を振り返す。
おそらくはカヒンの知り合いで、且つ、彼に好意を寄せる女の子たちだろう。
三人の甘い眼差しはほとんどカヒンへと注がれていたが、彼の隣を歩く私の方もチラチラとしっかり窺っていた。
何よあの女、とでも思われているのだろうか。
私はそそくさと逃げるように足を速める。
そうして何とか視線を振り切ると、私は改めて疑問に思ったことを口にした。
「What’s……”Kay”?」
『ケイ』って何?
Ah、とカヒンは思い出したように笑う。
「”Kay” is my English name.」
予想はしていたが、ケイというのはカヒンのイングリッシュネームらしい。
たまたまとはいえ、事前に舞恋からイングリッシュネームの情報をもらっていて助かった。
と、話しているうちに何やらカフェテラスのような場所が見えてきた。
パラソルの付いたテーブルやベンチがあちこちに配置されている。
カヒンの説明によると、お昼時にはこの辺りは人でごった返して席の取り合いになるらしい。
カヒンもこの辺りでランチを食べるのかなぁ、なんてぼんやり考えていると、ふと目に入った光景に違和感を覚えた。
「…………ん?」
ベンチの上に、鳥が立っていた。
それだけなら別に気にすることもないのだが、問題はその大きさだった。
(あの鳥……なんかめちゃくちゃ大きくない……?)
遠目から見ても、カラスの倍くらいはあるだろうか。
野生の鳥にしてはやけに大きくて、フォルムは少し丸みを帯びている。
真っ白なお腹を見せつけるように立つその姿は、さながらペンギンのようだ。
「Hey, Misaki! Look!」
鳥の異様さに気を取られているうちに、今度はカヒンが私を呼ぶ。
見ると、彼はいつのまにか近くの花壇の前にしゃがみ込んでいた。
「Lizards! Lizards!」
しきりにそう言いながら、嬉しそうに足元を指差している。
「りざーど……?」
どこかで聞いたことのある単語のような気がするけれど、リザードって何だっけ。
カヒンに促されるまま傍へ寄ってみると、
「ひゃっ!?」
思わず仰け反った。
花壇の足元、カヒンの指差す先に、何か奇妙な生き物がいる。
全長四、五十センチほどの、爬虫類系?
一見小さめのワニか何かだと思ったけれど、再びカヒンが「Lizards!」と笑って、私はやっとピンと来た。
(リザードって、トカゲのこと!?)
大きさ的には大人のネコぐらいあるだろうか。
巨大なトカゲと、ペンギンみたいな野生の鳥。
ここは動物園か何か?
こんなのが普通にそこら辺を歩いていると思うと、改めて自分は海外に来たんだなあ、と実感する。
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