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お嬢さまの番号札
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「ではそのようにお願いいたします」
「はい、調査が必要と思われますので至急殿下に報告し、議会にも予算をつけてもらえるよう動きましょう」
野営をした魔術師団御一行は朝早くに設営を片付けるとエール領の領主の屋敷に向かいました。
エール伯爵は王都に居てこちらにはいませんが、嫡男夫妻がいたようです。
討伐依頼のあったサイクロシプスは発見が出来ないままでしたが、中級の魔物をかなり討伐しました。
隣り合うチョイス領には魔獣被害の報告がない事から、原因について調査を約束したレイ君は一行の前に来ます。
「長い野営で疲れているだろう。14時にエール領を出立するまで自由時間とする。但し騎士としての誇りと規律を乱さぬよう行動をする事」
「ハッ!!」
途端にワイワイとざわめく騎士たちは1人、2人と連れだって街に繰り出していきます。
馬の当番をしている部下にも声をかけて交代をしてあげるようですよ。
優しいですね。レイ君。
「班長は行かれないのですか?」
「俺はいい。特に土産を買う必要もないしな。それにこいつらの世話もしてやらねばならん」
そう言って飼い葉桶に首を入れて飼い葉を食べる馬を優しく撫でます。
ブルル♪
レイ君の馬、ファイヤーバード(えっ?馬なのにバード?)も嬉しそうですね。
真っ黒い毛並みのつやつやした大きな馬です。尻尾もふさふさです。
「よーしよし……今日もイケるなぁお前は…」
ちなみにファイヤーバードの母馬はリノジャッキン。父馬はコンティネンタァルと言います。
はい。余談です。
時刻はもうすぐ10時。
エール伯爵の屋敷の前は随分とにぎわっています。
人の声…というよりも若い女の子のキャッキャという声がよく聞こえてきます。
そこに‥‥
「パッパラッパパッパパー!!」
馬のドドッ!ドドッっと走る音と共に、なんだかラッパのような音が聞こえます。
もしや突然乗っていた馬が暴れ出したのでは?とレイ君急いで声の聞こえる方に転移します。ヒュン!!
「そこをどいてくださいましぃぃぃ~パッパラパ!!パッパー!!」
決して馬が暴れているわけではないようです。
しっかりと馬は制御され、飛ばしているんだなと判ります。
その上、騎乗しているのは若い女の子でどいてくれと叫び、笛のようなものを吹いて音で警告をしています。
「なっ…なんなんだ??」
しかし振り返ると開店前の行列が少し向こうに見えます。
このままでは危険だ!っと思ったレイ君。走ってくる馬の前に飛び出します・・・・が。
ザザー…パッカポッカ…
あれ?馬がゆっくりになって止まりましたよ。
「ありがとう!エールのおじ様!」
変なヘルメットを被ってはいるものの停止の反動で目元までヘルメットがズレた女性が馬から飛び降ります。
そして、ヘルメットのベルトがなかなか外れないようで悪戦苦闘しております。
「な、なんなんだ。君は」
メットを脱いで、髪をファサっとなびかせる女性はレイ君にヘルメットと手綱を渡そうとします。
「あら?おじ様は?‥‥って遅れるわ!しくじった!こんなにもう並んでいるなんて!」
目の前の女性にレイ君、硬直しております。
ですが一向にレイ君を見る事もなく、その手にヘルメットと手綱を渡しローゼは行列に走ります
「あっあの!!」
レイ君のフリーズが解けて呼びかけようとした時、ローゼは既に列に向かって猛ダッシュ!!
「最後尾はこっちですよー!」
プラカードを持った男性の声に最後尾に並ぶローゼ。
「ハァハァ‥‥ここが最後尾…ですよね…ハァハァ…」
「そうですよー。はい、これは入場整理券。順番を守ってくださいねー」
渡された整理券を見てローゼは天に向かって咆哮します。
「ヌォォォォォォ!」
その様子に前後附近に並んでいる人がびっくりしてますよ。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃないですわぁぁぁ!!」
「どうしたんだい?」
「だって!だって!朝5時前からぶっ飛ばしてきたのに!85番って・・・無理だわぁ。うわぁぁん」
「な、何が無理なんだい?シューマイなら人数無制限だよ?」
「え?シューマイ‥‥なんですの・・・それ…」
「シューマイだよ。王都の隣の町にある名産のシューマイ」
「エ‥‥まさか…」
「大丈夫だよ。ちゃんと並んでる人数分は蒸してくれるから」
「お待ちになって…お待ちになってくださいまし…この列はグッズ購入者じゃないのですか?」
「グッズ?あぁ、それならこの通りの向こうだよ。凄いよね昨日から順番待ちしてたご令嬢が100人はいるようだよ」
「エ‥‥昨日??」
「そうだよ。先着のジャケット狙いの女の子はチラシが配られた時にもう並んだそうだ。いいねぇ若いって」
そしてローゼはまた咆哮をします
「ノォォォォォ!昨日から並んでるなんて!!抜かった!抜かったわぁぁぁ!」
「だ、大丈夫だよ。シューマイは買えるから」
「ノォォォォォ!しかも並んだ列を間違うなんてぇぇ!王都の隣じゃ王都じゃないじゃないのぉ!」
エールの人たちは優しいです。
咆哮するローゼに最初はドン引きしたものの、優しく肩を叩いてあげています。
おや?向こうから誰かが走って来ますよ。ローゼ!ほらっ!吠えてる場合じゃないよ!!
「はい、調査が必要と思われますので至急殿下に報告し、議会にも予算をつけてもらえるよう動きましょう」
野営をした魔術師団御一行は朝早くに設営を片付けるとエール領の領主の屋敷に向かいました。
エール伯爵は王都に居てこちらにはいませんが、嫡男夫妻がいたようです。
討伐依頼のあったサイクロシプスは発見が出来ないままでしたが、中級の魔物をかなり討伐しました。
隣り合うチョイス領には魔獣被害の報告がない事から、原因について調査を約束したレイ君は一行の前に来ます。
「長い野営で疲れているだろう。14時にエール領を出立するまで自由時間とする。但し騎士としての誇りと規律を乱さぬよう行動をする事」
「ハッ!!」
途端にワイワイとざわめく騎士たちは1人、2人と連れだって街に繰り出していきます。
馬の当番をしている部下にも声をかけて交代をしてあげるようですよ。
優しいですね。レイ君。
「班長は行かれないのですか?」
「俺はいい。特に土産を買う必要もないしな。それにこいつらの世話もしてやらねばならん」
そう言って飼い葉桶に首を入れて飼い葉を食べる馬を優しく撫でます。
ブルル♪
レイ君の馬、ファイヤーバード(えっ?馬なのにバード?)も嬉しそうですね。
真っ黒い毛並みのつやつやした大きな馬です。尻尾もふさふさです。
「よーしよし……今日もイケるなぁお前は…」
ちなみにファイヤーバードの母馬はリノジャッキン。父馬はコンティネンタァルと言います。
はい。余談です。
時刻はもうすぐ10時。
エール伯爵の屋敷の前は随分とにぎわっています。
人の声…というよりも若い女の子のキャッキャという声がよく聞こえてきます。
そこに‥‥
「パッパラッパパッパパー!!」
馬のドドッ!ドドッっと走る音と共に、なんだかラッパのような音が聞こえます。
もしや突然乗っていた馬が暴れ出したのでは?とレイ君急いで声の聞こえる方に転移します。ヒュン!!
「そこをどいてくださいましぃぃぃ~パッパラパ!!パッパー!!」
決して馬が暴れているわけではないようです。
しっかりと馬は制御され、飛ばしているんだなと判ります。
その上、騎乗しているのは若い女の子でどいてくれと叫び、笛のようなものを吹いて音で警告をしています。
「なっ…なんなんだ??」
しかし振り返ると開店前の行列が少し向こうに見えます。
このままでは危険だ!っと思ったレイ君。走ってくる馬の前に飛び出します・・・・が。
ザザー…パッカポッカ…
あれ?馬がゆっくりになって止まりましたよ。
「ありがとう!エールのおじ様!」
変なヘルメットを被ってはいるものの停止の反動で目元までヘルメットがズレた女性が馬から飛び降ります。
そして、ヘルメットのベルトがなかなか外れないようで悪戦苦闘しております。
「な、なんなんだ。君は」
メットを脱いで、髪をファサっとなびかせる女性はレイ君にヘルメットと手綱を渡そうとします。
「あら?おじ様は?‥‥って遅れるわ!しくじった!こんなにもう並んでいるなんて!」
目の前の女性にレイ君、硬直しております。
ですが一向にレイ君を見る事もなく、その手にヘルメットと手綱を渡しローゼは行列に走ります
「あっあの!!」
レイ君のフリーズが解けて呼びかけようとした時、ローゼは既に列に向かって猛ダッシュ!!
「最後尾はこっちですよー!」
プラカードを持った男性の声に最後尾に並ぶローゼ。
「ハァハァ‥‥ここが最後尾…ですよね…ハァハァ…」
「そうですよー。はい、これは入場整理券。順番を守ってくださいねー」
渡された整理券を見てローゼは天に向かって咆哮します。
「ヌォォォォォォ!」
その様子に前後附近に並んでいる人がびっくりしてますよ。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃないですわぁぁぁ!!」
「どうしたんだい?」
「だって!だって!朝5時前からぶっ飛ばしてきたのに!85番って・・・無理だわぁ。うわぁぁん」
「な、何が無理なんだい?シューマイなら人数無制限だよ?」
「え?シューマイ‥‥なんですの・・・それ…」
「シューマイだよ。王都の隣の町にある名産のシューマイ」
「エ‥‥まさか…」
「大丈夫だよ。ちゃんと並んでる人数分は蒸してくれるから」
「お待ちになって…お待ちになってくださいまし…この列はグッズ購入者じゃないのですか?」
「グッズ?あぁ、それならこの通りの向こうだよ。凄いよね昨日から順番待ちしてたご令嬢が100人はいるようだよ」
「エ‥‥昨日??」
「そうだよ。先着のジャケット狙いの女の子はチラシが配られた時にもう並んだそうだ。いいねぇ若いって」
そしてローゼはまた咆哮をします
「ノォォォォォ!昨日から並んでるなんて!!抜かった!抜かったわぁぁぁ!」
「だ、大丈夫だよ。シューマイは買えるから」
「ノォォォォォ!しかも並んだ列を間違うなんてぇぇ!王都の隣じゃ王都じゃないじゃないのぉ!」
エールの人たちは優しいです。
咆哮するローゼに最初はドン引きしたものの、優しく肩を叩いてあげています。
おや?向こうから誰かが走って来ますよ。ローゼ!ほらっ!吠えてる場合じゃないよ!!
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