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第16章 -勇者 VS 魔王-
†第16章† -40話-[大魔王城突入]
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~Side:Plumerio~
大魔王城前に広がっていた瘴気の海を干上がらせ、オベリスクを破壊し、魔物を討伐して道を切り開いてくれた水無月宗八率いる七精の門のおかげで、難無く勇者プルメリオ一行は大魔王城内へと駆け足で踏み入った。
入った瞬間に感じた違和感は、ダンジョンに入った時と同様の感覚だ。
徐々に速度を落とす勇者に合わせて仲間達も足が遅くなり———やがて止まった。
「「おええええ~~~~っ!」」
途端に男性陣三人が我慢していた吐き気を全力で解消しようと、大口を開けて通路の端に寄る。
男だけではない。女性陣二人も口に手を当てて反対の壁際で吐き気を耐えていた。
大魔王城に突入してしばらくの間、勇者PTは入口から動かず吐き気と戦う事となった理由。それは———。
「あの肉塊の死体はエグかった……。臭いもあれほど酷いのに、よく水無月さんは平気な顔してたよな……」
壮絶な吐き気との戦いに疲れた様子の勇者プルメリオは、壁を背に通路に座っていた。
「同感です。横を走っただけ、目端に映っただけの我々がこうですからね……」
普段は冷静で頼りになる重騎士マクラインも、勇者の隣で同じ格好で休んでいる。
拳闘士クライヴは年長者としてのプライドで座り込んではいないものの、同じ疲れを感じており黙って壁に背を預けていた。
「いえ……。尊師はたぶん、風を操って臭いが届かないようにしていると思うわ……」
「ミリエステに同意……」
女性陣も反対の壁で同じく息と意気を整えている真っ最中だ。
魔法使いミリエステの言葉は正しく、勇者PTをノックダウンさせた異臭は、風精ニルチッイのひと仕事で宗八へは届いていなかった。
義賊プーカも短い期間の付き合いで常識外れの人外と認識していた為、宗八には効いていなかったと確信していたのだった。
ダンジョンに入ってしまうと、入口が目の前にあったとしても外の情報は完全にシャットダウンされる。
あれほど盛大に土煙だけでなく肉片も撒き散らすほどに戦っていた宗八の戦闘音はここまで聞こえない。
「———そろそろ進もうか」
プルメリオの言葉に全員が頷き立ち上がった。
自然といつものフォーメーションの立ち位置へ移動した勇者PTは重騎士マクラインを先頭に薄暗く不気味な雰囲気の場内を歩き始めた。
ダンジョンには敵が部屋内で待ち構えているパターンと徘徊するパターンがある。
入口からの直線通路の先にT字路の壁が見えてくると同時に、ガッシャガッシャと鎧を着込んだ重い足音が聞こえて来た。
通路先の明かりがその敵の影を壁に映す。
「ん?」
経験豊富な拳闘士クライヴが「影が大きすぎないか?」と疑問の声を漏らした。
確かに大魔王城ダンジョンの内部は大変に広く天井も高い。駆け回れるし高く飛び上がったとしても戦闘が出来る広さは魅力的ではあるが、その分敵も同じく動きやすいだろうとは考えていた。
ならば、巨体を有する敵が出て来たとしても十全に戦闘する事も可能なのでは無いだろうか……。
重騎士マクラインが止まると同時に仲間達は一定の距離で離れ待機する。
まず見えたのは巨大な剣の切っ先だった。
続けて、全身も間もなく姿を現した。
「デュラハンっ!?」
声を発したのは勇者プルメリオだけだったが、全員が全長四メートルに届く巨大な鎧姿に首から黒い靄が揺らめいているその容姿に目を見張る。
こちらを視認して襲って来ない敵ならば、無理に戦って消耗する必要はない。
そう判断した勇者PTは視線で意見の一致を確認した後、静かにデュラハンが通路を通り過ぎるのを待った……が。
頭部のないデュラハンの首から揺らめく黒い靄の中に光る二つの瞳が突如現れた。
その眼でしっかりと自分達を認識したかと思えば二足歩行から獣が如く四足歩行となって———咆哮した。
全身を震わせ怒りを現し。強烈な殺気を撒き散らしながら、言葉にならない咆哮が勇者PTの全身を打つ。
強烈な鼓膜への攻撃と硬直を耐えている中で重騎士マクラインの視界に巨大な剣が迫る。
———ガィィィィィィィィンッ!
構えていた大盾に巨大な剣がぶつかり、その威力にマクラインはノックバックを受けてしまい仲間の間を抜けて最後方へ移動させられた。
獣となったデュラハンが手放した巨剣は、自らの意思を持っているように見える。
四足歩行で恐ろしい速度で駆け出したデュラハンとは、別に宙を舞う巨剣は戦略的に側面へと移動し始めるた。
「剣はマクラインに任せる。その間に俺達でデュラハンを倒すぞっ!」
仲間それぞれの返事は短くとも耳に届いた。
作戦開始のその前に、重騎士マクラインは突進して来るデュラハンを正面から待ち構える。
「【カバームーブ!】【栄光の守護盾!】」
SPを消費する大技を発動したマクラインの身体から巨大な盾のオーラが顕現し、衝突したデュラハンは当たり負けして体制を崩す。
「今だっ!≪セイクリッドセイバー!≫」
その隙を逃さず勇者プルメリオが駆け寄り輝く剣で黒い鎧を斬り付ける。
「【ブレイクブロウ!】」
拳闘士クライヴは明らかに防御力の高そうなデュラハンに対し、防御力をダウンさせる拳がを穿ち。
「≪ブレイズダンス!≫」
魔法使いミリエステは、周囲に出現した複数の小火剣を操り防御の薄そうな黒い靄へと攻撃を集中させ。
「≪短距離転移≫【背後からの一撃】」
態勢を崩した直後に背後に移動した義賊プーカが小刀で強烈な一撃をお見舞いする。
重騎士マクラインはデュラハンから即座に視線を外すと、技の副作用で硬直が入った自分に巨剣が再び迫っている事を把握していた。
彼とユニゾンしている地精オーヴィルが代わりに魔法を発動した。
『≪堅固の盾腕≫』
巨剣の鋭い刺突は、魔法によって出現した巨大な腕により防がれてしまった。
職業特有の戦技はSPを消費して使用する。
魔法職以外は本来戦技しか扱えないのだが、とある精霊使いの介入のおかげで精霊と契約した者は”魔法”という選択肢を獲得し戦闘力も生存力も格段に向上している。
「【シールドバッシュ!】」
前に突き出した大盾に戦技の衝撃が乗り巨剣を吹き飛ばす。
盾の防御力を攻撃に転ずるこの技は、超品質の精霊樹製の盾と組み合わせる事で攻撃職に負けない攻撃力を持つ事となったのだ。
今の攻防によってデュラハン・巨剣共に、身体には小さなひび割れが発生していた。
確かな手ごたえをそれぞれがデュラハンの巨体から感じていた。
しかし、敵も大魔王城を跋扈するモンスターである。
仰け反っていたのは一瞬のことで、プルメリオ達の攻撃で転倒することなく持ち直し、逆に近寄っていた勇者PTに攻勢に入った。
「———GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
再びの咆哮。前方だけでなく、後方に居た義賊プーカまでも身を固くせざるを得ない大気を震わす衝撃が襲う。
「回避っ!」
デュラハンの動きを察知した勇者プルメリオから檄が飛ぶ。
その場で回転して前方の自分と後方のプーカを狙った横殴りだ。
「耐えろよ!」
「≪身代わり≫【マーダースタブ】」
身軽な拳闘士クライヴが声を掛けながら身を引き、プーカは冷静に魔法で躱したうえで更に攻撃を仕掛ける。
———ドンッ!
巨体からの横殴りを勇者プルメリオは中盾で防御した。
「ぐっ……流石に重いなぁ……」
ダブルラリアットの右腕の攻撃をプルメリオは盾受けしその場に足を留める。その隙をモンスターも見逃さない。
空振りした左腕をすぐに上振りに切り替え、上空から振り落とされる拳がプルメリオに向かう。
「させねぇよっ!【セリオウスブロウッ!】」
『≪波動!≫』
しかし、勇者へ届く前に拳闘士クライヴが飛び出し迎撃する。
拳聖も使用した高威力の技に、契約無精ワイズが発動した防御力無視の魔法も相まってデュラハンの拳は潰れて鎧の破片が床に散らばった。
「≪業火球六連!≫」
魔法使いミリエステの支援もあり、勇者プルメリオは一時前線から離脱に成功する。
とはいえ、優秀な盾と育てたステータスのおかげでダメージには繋がっていなかった。
だが、それはデュラハンも同じだった。
黒煙の向こうから飛び出して来た鉄の獣は、頭部の靄が狼の形を取って噛み付こうと突進して来た。
「ミリエステっ!」
回避を取りつつ振り返る勇者プルメリオの視線の先には、ミリエステの背後に転移した義賊プーカが彼女を抱き締めている姿が映り、一瞬で二人が消える。
ならば、気にすべきは自分自身だ。
拳闘士クライヴは自分よりも素早く動ける。自分だけの事を考えれば良い。
繰り出された噛み付きは回避できたが、続く巨体突進は流石に回避しきれず掠ってしまい態勢が崩れる。
「メリオっ!」
叫びにも似たミリエステの声が遠くから聞こえた瞬間。
デュラハンの振り下ろしの連打が始まった。
———ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!
ダンジョンなので床が破壊されることは無くとも、激しく動くデュラハンの動きに勇者の姿は掻き消された。
油断したつもりはない。それでも勇者が窮地に陥った状況で誰も動くに動けなかった。
隙を見つけて攻撃するのとは訳が違い、今回のような攻撃中に仲間が攻撃しようともヤツはあの動作を止めないだろう。
それがわかっているからこそ、仲間は不用意な介入が出来ず勇者を信じるしかない。
デュラハンの獣乱舞が終わり———声が轟く。
「———【シールドバッシュ!】」
土煙の隙間から見えたのは、勇者を庇う重騎士マクラインの姿だった。
縦の強打でデュラハンはT字通路の壁まで吹き飛ばされ、ズシャリと床に崩れ落ちる。
「大丈夫か、メリオ?」
振り返り問い掛けるマクラインに勇者プルメリオは当然とばかりに返答した。
「誰が護ってくれたと思ってるんだ。当然問題ないよ」
微笑み合う二人の背後で煌めく剣。
一対一から逃げた重騎士マクラインを狙った巨剣が迫るが、そこに介入する影が直下に短刀を構え巨剣を邪魔する。
「【エリアルスタブ】」
義賊プーカの一撃で大きく欠けた巨剣は、勢い余って床を転がる。
「「チャンスっ!」」
魔法使いミリエステと拳闘士クライヴの声が重なった。
「【メタルフィスト!】」
「≪《炎凰の息吹!!》≫」
クライヴが巨剣へ、ミリエステがデュラハンへトドメの一撃を放つ。
強烈な一撃で巨剣は砕け散りドロップ品を残してその姿は消えた。
同じく業火の炎に焼き尽くされたデュラハンも溶かし尽くされ姿を消した。
大魔王城初戦に勝った勇者PTが同時に息を吐き出す。
ステータスが高いからといっても余裕を持てるわけではない。いや、戦い方次第で一人でも戦う事は出来たと思う。
しかし、それには仲間を気遣い大技が使えない現状が足を引っ張っている事を勇者PTぞれぞれが認識した瞬間でもあった。
「なるほど、だから水無月さん達は戦場を分けるのか……」
確かにここまで高いステータスを持てば集団戦と個人戦では戦い方が異なるのも理解出来る。
結局、ノーダメージで勝てたことからも苦戦した様に見えて、実は余裕の内容だったのだ。
流石に勇者が乱打を受けた時は心配をしたのだが、重騎士マクラインの絶妙な【カバームーブ】が間に合った時点で、次の攻撃タイミングをクライヴとミリエステが計ったのは当然の帰結と言えた。
ここから先のダンジョン敵との遭遇戦について、話を詰める必要があると勇者だけではなく仲間全員が感じていたのであった。
大魔王城前に広がっていた瘴気の海を干上がらせ、オベリスクを破壊し、魔物を討伐して道を切り開いてくれた水無月宗八率いる七精の門のおかげで、難無く勇者プルメリオ一行は大魔王城内へと駆け足で踏み入った。
入った瞬間に感じた違和感は、ダンジョンに入った時と同様の感覚だ。
徐々に速度を落とす勇者に合わせて仲間達も足が遅くなり———やがて止まった。
「「おええええ~~~~っ!」」
途端に男性陣三人が我慢していた吐き気を全力で解消しようと、大口を開けて通路の端に寄る。
男だけではない。女性陣二人も口に手を当てて反対の壁際で吐き気を耐えていた。
大魔王城に突入してしばらくの間、勇者PTは入口から動かず吐き気と戦う事となった理由。それは———。
「あの肉塊の死体はエグかった……。臭いもあれほど酷いのに、よく水無月さんは平気な顔してたよな……」
壮絶な吐き気との戦いに疲れた様子の勇者プルメリオは、壁を背に通路に座っていた。
「同感です。横を走っただけ、目端に映っただけの我々がこうですからね……」
普段は冷静で頼りになる重騎士マクラインも、勇者の隣で同じ格好で休んでいる。
拳闘士クライヴは年長者としてのプライドで座り込んではいないものの、同じ疲れを感じており黙って壁に背を預けていた。
「いえ……。尊師はたぶん、風を操って臭いが届かないようにしていると思うわ……」
「ミリエステに同意……」
女性陣も反対の壁で同じく息と意気を整えている真っ最中だ。
魔法使いミリエステの言葉は正しく、勇者PTをノックダウンさせた異臭は、風精ニルチッイのひと仕事で宗八へは届いていなかった。
義賊プーカも短い期間の付き合いで常識外れの人外と認識していた為、宗八には効いていなかったと確信していたのだった。
ダンジョンに入ってしまうと、入口が目の前にあったとしても外の情報は完全にシャットダウンされる。
あれほど盛大に土煙だけでなく肉片も撒き散らすほどに戦っていた宗八の戦闘音はここまで聞こえない。
「———そろそろ進もうか」
プルメリオの言葉に全員が頷き立ち上がった。
自然といつものフォーメーションの立ち位置へ移動した勇者PTは重騎士マクラインを先頭に薄暗く不気味な雰囲気の場内を歩き始めた。
ダンジョンには敵が部屋内で待ち構えているパターンと徘徊するパターンがある。
入口からの直線通路の先にT字路の壁が見えてくると同時に、ガッシャガッシャと鎧を着込んだ重い足音が聞こえて来た。
通路先の明かりがその敵の影を壁に映す。
「ん?」
経験豊富な拳闘士クライヴが「影が大きすぎないか?」と疑問の声を漏らした。
確かに大魔王城ダンジョンの内部は大変に広く天井も高い。駆け回れるし高く飛び上がったとしても戦闘が出来る広さは魅力的ではあるが、その分敵も同じく動きやすいだろうとは考えていた。
ならば、巨体を有する敵が出て来たとしても十全に戦闘する事も可能なのでは無いだろうか……。
重騎士マクラインが止まると同時に仲間達は一定の距離で離れ待機する。
まず見えたのは巨大な剣の切っ先だった。
続けて、全身も間もなく姿を現した。
「デュラハンっ!?」
声を発したのは勇者プルメリオだけだったが、全員が全長四メートルに届く巨大な鎧姿に首から黒い靄が揺らめいているその容姿に目を見張る。
こちらを視認して襲って来ない敵ならば、無理に戦って消耗する必要はない。
そう判断した勇者PTは視線で意見の一致を確認した後、静かにデュラハンが通路を通り過ぎるのを待った……が。
頭部のないデュラハンの首から揺らめく黒い靄の中に光る二つの瞳が突如現れた。
その眼でしっかりと自分達を認識したかと思えば二足歩行から獣が如く四足歩行となって———咆哮した。
全身を震わせ怒りを現し。強烈な殺気を撒き散らしながら、言葉にならない咆哮が勇者PTの全身を打つ。
強烈な鼓膜への攻撃と硬直を耐えている中で重騎士マクラインの視界に巨大な剣が迫る。
———ガィィィィィィィィンッ!
構えていた大盾に巨大な剣がぶつかり、その威力にマクラインはノックバックを受けてしまい仲間の間を抜けて最後方へ移動させられた。
獣となったデュラハンが手放した巨剣は、自らの意思を持っているように見える。
四足歩行で恐ろしい速度で駆け出したデュラハンとは、別に宙を舞う巨剣は戦略的に側面へと移動し始めるた。
「剣はマクラインに任せる。その間に俺達でデュラハンを倒すぞっ!」
仲間それぞれの返事は短くとも耳に届いた。
作戦開始のその前に、重騎士マクラインは突進して来るデュラハンを正面から待ち構える。
「【カバームーブ!】【栄光の守護盾!】」
SPを消費する大技を発動したマクラインの身体から巨大な盾のオーラが顕現し、衝突したデュラハンは当たり負けして体制を崩す。
「今だっ!≪セイクリッドセイバー!≫」
その隙を逃さず勇者プルメリオが駆け寄り輝く剣で黒い鎧を斬り付ける。
「【ブレイクブロウ!】」
拳闘士クライヴは明らかに防御力の高そうなデュラハンに対し、防御力をダウンさせる拳がを穿ち。
「≪ブレイズダンス!≫」
魔法使いミリエステは、周囲に出現した複数の小火剣を操り防御の薄そうな黒い靄へと攻撃を集中させ。
「≪短距離転移≫【背後からの一撃】」
態勢を崩した直後に背後に移動した義賊プーカが小刀で強烈な一撃をお見舞いする。
重騎士マクラインはデュラハンから即座に視線を外すと、技の副作用で硬直が入った自分に巨剣が再び迫っている事を把握していた。
彼とユニゾンしている地精オーヴィルが代わりに魔法を発動した。
『≪堅固の盾腕≫』
巨剣の鋭い刺突は、魔法によって出現した巨大な腕により防がれてしまった。
職業特有の戦技はSPを消費して使用する。
魔法職以外は本来戦技しか扱えないのだが、とある精霊使いの介入のおかげで精霊と契約した者は”魔法”という選択肢を獲得し戦闘力も生存力も格段に向上している。
「【シールドバッシュ!】」
前に突き出した大盾に戦技の衝撃が乗り巨剣を吹き飛ばす。
盾の防御力を攻撃に転ずるこの技は、超品質の精霊樹製の盾と組み合わせる事で攻撃職に負けない攻撃力を持つ事となったのだ。
今の攻防によってデュラハン・巨剣共に、身体には小さなひび割れが発生していた。
確かな手ごたえをそれぞれがデュラハンの巨体から感じていた。
しかし、敵も大魔王城を跋扈するモンスターである。
仰け反っていたのは一瞬のことで、プルメリオ達の攻撃で転倒することなく持ち直し、逆に近寄っていた勇者PTに攻勢に入った。
「———GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
再びの咆哮。前方だけでなく、後方に居た義賊プーカまでも身を固くせざるを得ない大気を震わす衝撃が襲う。
「回避っ!」
デュラハンの動きを察知した勇者プルメリオから檄が飛ぶ。
その場で回転して前方の自分と後方のプーカを狙った横殴りだ。
「耐えろよ!」
「≪身代わり≫【マーダースタブ】」
身軽な拳闘士クライヴが声を掛けながら身を引き、プーカは冷静に魔法で躱したうえで更に攻撃を仕掛ける。
———ドンッ!
巨体からの横殴りを勇者プルメリオは中盾で防御した。
「ぐっ……流石に重いなぁ……」
ダブルラリアットの右腕の攻撃をプルメリオは盾受けしその場に足を留める。その隙をモンスターも見逃さない。
空振りした左腕をすぐに上振りに切り替え、上空から振り落とされる拳がプルメリオに向かう。
「させねぇよっ!【セリオウスブロウッ!】」
『≪波動!≫』
しかし、勇者へ届く前に拳闘士クライヴが飛び出し迎撃する。
拳聖も使用した高威力の技に、契約無精ワイズが発動した防御力無視の魔法も相まってデュラハンの拳は潰れて鎧の破片が床に散らばった。
「≪業火球六連!≫」
魔法使いミリエステの支援もあり、勇者プルメリオは一時前線から離脱に成功する。
とはいえ、優秀な盾と育てたステータスのおかげでダメージには繋がっていなかった。
だが、それはデュラハンも同じだった。
黒煙の向こうから飛び出して来た鉄の獣は、頭部の靄が狼の形を取って噛み付こうと突進して来た。
「ミリエステっ!」
回避を取りつつ振り返る勇者プルメリオの視線の先には、ミリエステの背後に転移した義賊プーカが彼女を抱き締めている姿が映り、一瞬で二人が消える。
ならば、気にすべきは自分自身だ。
拳闘士クライヴは自分よりも素早く動ける。自分だけの事を考えれば良い。
繰り出された噛み付きは回避できたが、続く巨体突進は流石に回避しきれず掠ってしまい態勢が崩れる。
「メリオっ!」
叫びにも似たミリエステの声が遠くから聞こえた瞬間。
デュラハンの振り下ろしの連打が始まった。
———ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!ドドンッ!ドゴンッ!
ダンジョンなので床が破壊されることは無くとも、激しく動くデュラハンの動きに勇者の姿は掻き消された。
油断したつもりはない。それでも勇者が窮地に陥った状況で誰も動くに動けなかった。
隙を見つけて攻撃するのとは訳が違い、今回のような攻撃中に仲間が攻撃しようともヤツはあの動作を止めないだろう。
それがわかっているからこそ、仲間は不用意な介入が出来ず勇者を信じるしかない。
デュラハンの獣乱舞が終わり———声が轟く。
「———【シールドバッシュ!】」
土煙の隙間から見えたのは、勇者を庇う重騎士マクラインの姿だった。
縦の強打でデュラハンはT字通路の壁まで吹き飛ばされ、ズシャリと床に崩れ落ちる。
「大丈夫か、メリオ?」
振り返り問い掛けるマクラインに勇者プルメリオは当然とばかりに返答した。
「誰が護ってくれたと思ってるんだ。当然問題ないよ」
微笑み合う二人の背後で煌めく剣。
一対一から逃げた重騎士マクラインを狙った巨剣が迫るが、そこに介入する影が直下に短刀を構え巨剣を邪魔する。
「【エリアルスタブ】」
義賊プーカの一撃で大きく欠けた巨剣は、勢い余って床を転がる。
「「チャンスっ!」」
魔法使いミリエステと拳闘士クライヴの声が重なった。
「【メタルフィスト!】」
「≪《炎凰の息吹!!》≫」
クライヴが巨剣へ、ミリエステがデュラハンへトドメの一撃を放つ。
強烈な一撃で巨剣は砕け散りドロップ品を残してその姿は消えた。
同じく業火の炎に焼き尽くされたデュラハンも溶かし尽くされ姿を消した。
大魔王城初戦に勝った勇者PTが同時に息を吐き出す。
ステータスが高いからといっても余裕を持てるわけではない。いや、戦い方次第で一人でも戦う事は出来たと思う。
しかし、それには仲間を気遣い大技が使えない現状が足を引っ張っている事を勇者PTぞれぞれが認識した瞬間でもあった。
「なるほど、だから水無月さん達は戦場を分けるのか……」
確かにここまで高いステータスを持てば集団戦と個人戦では戦い方が異なるのも理解出来る。
結局、ノーダメージで勝てたことからも苦戦した様に見えて、実は余裕の内容だったのだ。
流石に勇者が乱打を受けた時は心配をしたのだが、重騎士マクラインの絶妙な【カバームーブ】が間に合った時点で、次の攻撃タイミングをクライヴとミリエステが計ったのは当然の帰結と言えた。
ここから先のダンジョン敵との遭遇戦について、話を詰める必要があると勇者だけではなく仲間全員が感じていたのであった。
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