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49話 理由付け
しおりを挟む「それっ、それそれえっ!」
「ぐっ、ぐぐぐぐうっ……!」
クアドロの目に怯えの色が顕著に見られたのは正直意外だった。あれだけ畜生魂を見せつけてきても、そこはやっぱり人間の血が混じってるってことなのか。
それでも僕にはわかる。こうして弱さを見せてる間にも、虎視眈々と反撃のチャンスを窺っているということを……。
「殺された村人たちの無念を晴らすためにもなるべく苦しめてやるよ。だからすぐには殺さない……」
「おごおおおおぉっ……!」
明らかな手加減をしてるわけを見抜かれないためにも、その理由付けをすることを忘れちゃいけない。
「あ、あと少しだあぁっ、もうあとほんの少しなんだああぁぁっ……」
クアドラはもう、焦りからか【進化】を使おうとしてるってことを隠さなくなった。
「――来たあああぁぁぁっ!」
クアドラが勝ち誇ったように叫び、足元に魔法陣が浮かび上がってくるのが見える。どうやら【進化】のクールタイムが終わったから使用するみたいだね。これで【寄生】が【調和】になったら終わったも同然だし、黙って見てるわけにはいかない。僕はそのタイミングで兄のジギルのほうに【瞬殺】を使った。
クアドラの魔法陣が一回転し終わり、そこで次に【削除&復元】を使用する。
名前:カイン
レベル:42
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:A級
能力値:
腕力S+
敏捷C
体力A
器用B
運勢C
知性S+
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
怪力の腕輪
クイーンサークレット
スキル:
【削除&復元】B
【ストーンアロー】C
【殺意の波動】B
【偽装】C
【ウィンドブレイド】D
【鑑定士】B
【武闘家】B
【瞬殺】E
【亜人化】E
【難攻不落】E
【進化】F
テクニック:
《跳躍・大》
《盗み・中》
《裁縫・大》
ダストボックス:
アルウ(亡霊)
ファラン(亡霊)
おおっ、【進化】を自分のものにできてる。【寄生】を持ってるジギルが一瞬でも死んだら【進化】は空振りになって、僕を倒すために使ったっていう部分だけがクローズアップされるわけだから削除できるってわけだ。
ほかにはテクニックの《跳躍・大》の部分も光ってる。僕が移動だけじゃなく戦闘中にもよく使ってるものだからそりゃ上がるよね。
「な、な、なあああぁぁっ……!?」
クアドラは【調和】が完成しないことで、頭の中が真っ白になってるみたいだ。残されたのが【寄生】だけじゃ何も完成しないだろうしね。これは気味が悪いから別にいらないけど。
さて……あとは活力の帯を盗むだけでお役御免だ。っていうわけで何度か《盗み・中》を使ったらあっさり盗んでしまった。どうせならこれも沢山使うことで大まで上げたかったのに……。まあいっか。
「さあ、そろそろ終わりにしよっか?」
「ま、待ってくれええぇ。人間さあん……」
「……」
「もう、俺は何もしないしい、村人を沢山殺してしまったことも謝るうぅ。反省しているしぃ、実に申し訳なかったぁ。本当だあぁ。俺にも人の血が混じっているんだからあぁぁ……」
「大勢の村人を虐殺しておいて、今更そんなこと言われても……はっ――?」
「――ヒヒッ……」
なるほどね。いつの間にか【寄生】してるはずの兄のジギルが分離してて後ろに回ってたのか……。
◆◆◆
「カ、カインのバカ野郎が。これでもうあいつは終わりだ……」
頭を抱えるナセル。たった今、カインがクアドラから分離した猪人族の男に回り込まれ、羽交い絞めにされたのだ。
「はあ……。カインもいよいよ散っちゃうのね」
「オーマイゴッド! カインよ、永遠に……」
「カインさんがやられてる今のうちに、早くここから逃げちゃいましょうか――」
「――ククッ……お前たち、あれをよく見るがいい……」
「「「「へっ……?」」」」
仮面の男が指差した方向にナセルらの視線が集まる。そこでは、羽交い絞めにされていたはずのカインの姿が忽然と消えているところだった。
「なっ……!? じゃあカインの野郎はどこにいやがるんだ!?」
「上だ」
「「「「えっ……?」」」」
ナセルたちが見上げると信じられないほど高い位置にカインがいて、まもなく真下では矢の如き石つぶてと刃を思わせる鋭利な風が混ざり合い、赤茶色の粉塵が巻き起こるところだった。
「「ぎえええええええぇぇぇっ!」」
「「「「な、なんで……?」」」」
「よく聞け。カインは幻術のようなものを使って騙してみせたというわけだ。クアドラたちを天国から地獄に叩き落とすために、わざとな……」
「と、とんでもねえ……」
「ホント……」
「オーノー、レベルが違うっ……」
「ですねぇ……」
仮面の男の説明により、しばらく脱帽した様子のナセルたちだったが、まもなく苛立った表情で男の周りを取り囲んだ。
「てかおい、仮面野郎……お前、自分の立場わかってんのか……?」
「そうよ、今までよくも……」
「イエスッ、リベンジタイムだっ!」
「やっつけてあげます……」
「ククッ……クアドラがいなくなった影響もあるだろうが、吾輩が一人なことに気付いて強気に出たというわけか。ではやってみるがいい。やれるものなら、な……」
「「「「っ……!?」」」」
血を吐きながら倒れた仮面の男に対し、近寄ることすらできないので驚愕の表情を見せるナセルたち。
「ククッ……吾輩のこの【死んだ振り】スキルは、防御面に関しては無敵なのだよ。この状態でほかにやれることがあまりない分、な……」
仮面の男はそう呟くと、口元に薄らと笑みを浮かべつつ口笛を吹いた。
「「「「――あっ……」」」」
それからほどなくして、ナセルたちは屈強な男たちに囲まれることとなるのであった……。
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