なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し

文字の大きさ
15 / 78

第15話

しおりを挟む

『ウバアァァッ……!』

 また一体、また一体と全身を光り輝かせたエンシェントミイラが、『浄化魔法』を使った俺の足元に倒れて消え去る。

 今のところ、問題なく倒すことはできている。できているが……こんなんじゃダメだ。圧倒的に数が足りない。

 これで五体目の古代ミイラを片付けたわけだが、普段はもっと湧いてくるはずなのに何故か今日は全然見当たらないんだ。

 この程度じゃあ、『聖域の守護者』パーティーに俺の実力を証明するなんてできやしない。何故なら、今まで自分がやってきた『浄化魔法』はほぼ同じ結果になっていて、アピールにはならないと思うからだ。

 アンデッドモンスターを浄化する際の威力、すなわち祈りの気持ちを抑えることで、それまで三秒ほどかかってたのが二秒で倒せるようになったとはいえ、一瞬で退治したとまではいえない。

「「「……」」」

 俺の後ろを歩くルエス、ユリム、カレンの三人から無言のプレッシャーを感じる。

 そういえば、彼らから『化け物……』だの『ありえないです……』だの『これって現実……?』だのといった声が聞こえてくるが、どういう意味なんだろう?

 察するに、治癒使いなのにたかが化け物退治にこれだけ時間がかかるなんて、そんなのありえないし夢なら覚めてほしい、といったところだろうか?

 クッソ……。もっとモンスターが出てきてくれたら自分の実力を証明できるっていうのに、なんとももどかしい状況だった。

「…………」

 てかこれだけ古代ミイラが出現しないってことは、どこかで溜まってるのかもしれないな。モンスターが溜まれば溜まるほどその処理は難しくなるし、冒険者たちからは放置されがちになるからだ。

 ってことで、俺は視覚を活性化させた『探知魔法』を使用し、周辺を探ってみることに。

「――あっ……」

「ラ、ラウル君? 一体どうしたんだい……?」

「ラ、ラウルさん……?」

「ラ、ラウル……?」

「ルエス、ユリム、カレン。ここから東北東、250メートル先にエンシェントミイラの塊が出来てる。ざっと数えても百体以上はいるな」

「「「っ……!?」」」

 これぞいわゆる『モンスターハウス』ってやつで、最早手がつけられなくなった状態。一定数以上は湧かない仕組みだったはずなので、道理で数が少ないわけだ……。

 自然にこういう風になったのか、あるいは誰かが意図的にやったことなのかはわからないが、早くなんとかしないとほかのパーティーが古代ミイラの大群に遭遇し、深刻な被害が出てしまうことだろう。

「ラ……ラウル君、ちょっといいかな……?」

「え?」

「君って治癒使いだったよね? なのにそんなことまでわかるなんて、凄いなんてもんじゃないよ……」

「ですです……。ラウルさんって……まるで高名な支援使いみたいなのです……」

「て、てか、その中でもラウルは別格よ。支援使いでもここまで詳細なことが言えるはずないし、あたしそんなの聞いたことすらないもの……」

「ははっ……」

 みんな、見え見えのお世辞を言うのに声まで震わせちゃって演技が上手だな。まあそれだけ気を使ってくれてるってことなんだろう。

 ん、まもなくルエスが我に返った様子で俺たちの先頭に立った。

「それだけの『モンスターハウス』なら、耐えられるかどうかはわからないけど、僕が食い止めてみせるよ」

「そうですね……。急がないといけませんです……」

「うんうん。でも、慎重にね?」

「みんな、ここから動く必要はないよ」

「「「えっ……?」」」

「自分たちの存在感を活性化させた『誘導魔法』を使って、古代ミイラの群れをこっちに呼び寄せるから大丈夫だ。それだけ歩く手間も省けるし、ここへやってくるまでに準備することもできる」

「「「……」」」

 なんだ、またみんな口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。一体どうしたんだろう?

 もしかしたら、サポート役としては当たり前のことなのに、偉そうに説明してると思われちゃったのかもしれないな。

 うーむ……苦しい状況ではあるが、なんとかここから挽回して、彼ら『聖域の守護者』パーティーの仲間入りを果たしたいところだ……。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...