14 / 78
第14話
しおりを挟む『聖域の守護者』パーティーに自分の実力を見せるべく、早速俺たちが向かったのは古代遺跡ダンジョンであり、その中でもエンシェントミイラが出現する区域だ。
このモンスターはいわゆるアンデッド属性なため、治癒魔法でもダメージを与えることが可能である。
こういうやり方を『ヒールアタック』というのだが、これを使っていかに早く倒すかで治癒使いは自分の回復力の高さを周囲に示すことができる。
同じ不死モンスターでも、そこら辺の洞窟にいるただのスケルトンやゾンビと違ってエンシェントミイラはかなりの体力を持っているため、『ヒールアタック』を試すにはうってつけの相手ってわけだ。
『――ウゴォォッ……』
深淵から響くかのような不気味な呻き声を聞けばわかるように、やがて俺と『聖域の守護者』パーティーは古代ミイラたちが棲息するゾーンへと到達した。
「よし、これで準備完了っと……」
リーダーのルエスが俺たちの先頭に立ち、向かってきた一体のエンシェントミイラを大きなシールドで受け止める。
古代ミイラはタフなのはもちろんのこと、そこそこパワーもあるわけだが、さすがにルエスは頑丈な盾使いなだけあってビクともしない。
「ラウル君、これから君の入団テストを行うけど、その前に話しておきたいことがある」
「話しておきたいこと?」
「ああ。僕たちは君の力を疑っていないとはいえ、『ヒールアタック』で倒すにはそれなりに時間がかかると思うし、その時点で数匹くらい古代ミイラが溜まってるかもしれない。でも、このモンスターの攻撃力程度なら耐えられるから問題ないよ」
「ですね……。なのでラウルさん……私たちのことはどうか心配せず、古代ミイラさんを倒すことに集中してくださいです……」
「うんうん。ラウル、あんまり古代ミイラが増えるようならあたしの魔術とユリムの剣術で倒すから大丈夫よ」
みんな俺のことを気遣ってくれて優しいなあ。こんなことは以前のパーティーでは一切なかったことだ。こうなったら、こっちも精一杯自分の力を出して迷惑をかけないようにしないとな。
「それなら大丈夫。すぐ終わらせるから」
「「「えっ……?」」」
ルエスたちがぽかんと口を開ける中、俺は治癒魔法によってエンシェントミイラを倒すことに成功した。およそ三秒ほどかかってしまったので、凡庸すぎてルエスたちがどんな反応を見せるのか不安なところだ。
「こ……こんなのありえるのか……?」
「……し、信じ、られないです……」
「……う、嘘ぉ……」
ん……? みんな放心状態になってるっぽい。
ってことは……内心じゃ一瞬で倒せると思ってたのに、期待外れだったから呆れ果ててしまっている状態なのかもしれないな。
何故なら、俺はSS級パーティー『神々の申し子』の一人だったんだからそれくらい期待されていてもおかしくないし、これは言い訳しておかないとまずいだろう。
「えっと……わかりやすく説明すると、俺の場合『ヒールアタック』っていうより相手を人間に見立てた『浄化魔法』をやったから、祈りの気持ちを活性化させて威力を高めた分、倒すのがちょっと遅くなってしまったんだ」
「「「……」」」
うわ、今度はみんな黙り込んじゃってる。ダサい言い訳だと思われちゃったんだろうか? このままじゃすぐに不合格を言い渡されそうだ。
「ラ、ラウル君、もう一回見せてもらってもいいかな?」
「わ、私も見たい、です……」
「あたしも……」
ルエス、ユリム、カレンの三人が同じようなことを言ってきた。ってことは、俺にもう一度チャンスをくれるってことか。やっぱりみんな優しいなあ。
「ありがとう、みんな……」
かつてのライバルパーティーである彼らに自分の実力を認めさせるには、この程度のクオリティじゃ不充分だったのは明らかだ。
「今度こそ、もっと早くエンシェントミイラを倒してみせるよ」
「「「……」」」
俺の言葉に、ルエスたちは何も返してこなかった。おそらく、つべこべ言わずにさっさと口だけじゃないところを見せてみろってことだな。よーし、見てろ。次こそみんなをあっと言わせてやる……。
352
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる