Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

フラグって言うんですよ?

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ベルクト王国から近いと言ったのは誰だったか?いや、獣人の国は近かった。しかし、そこからが長かったのだ。険しい山を何度も越え、移動が面倒になったオレはフィーナを抱き抱えて空を飛んだ。空中を移動出来るというのはかなり効率が良く、翌日には獣人の国に入った。

獣人の国では部族間の争いが多いと聞いてはいたが、想像を超えるような光景だった。至る所で小競り合いが起きていた為、チンピラ祭りと命名してやった。絶賛開催中である。これでは他国から訪れる者がいないのも頷ける。下手な場所を歩いているだけで巻き込まれるのだ。

オレとフィーナは、襲い掛かって来る獣人や魔物を倒しつつ、ペースを落として王都を目指していた。しかし、何故こうも獣人達が襲って来るのだろうか?

「ねぇ、フィーナ?オレ達が狙われる理由って何?」
「捕らえて奴隷にする為じゃない?使い道は・・・色々とあるでしょ?」」

フィーナの言葉に思考を巡らせる。少し考えて、言い淀んだ理由に思い当たる。襲い掛かって来る者達は言わば兵士である。戦争中の兵士達のストレス発散と言ったらアレだろう。慰み者にされ、飽きたら特攻でもさせるつもりだろう。男達がフィーナを執拗に狙う理由にも納得した。納得したら頭にきた。

「へぇ・・・オレの女に手を出そうって事か?出来る限り殺さないようにするつもりだったけど、もうやめた。そうだな・・・実験台になって貰うか。」
「・・・アストル?」
「え~と、こうかな?・・・サンダーレイン!」

ヤミー伯爵邸の地下室で覚醒してから、使えなかった魔法が使えるようになっていたのだが、使う機会が無かった。今回は丁度いいだろう。そう思って使用したのだが、あまりの威力にフィーナは勿論、魔法を放ったアストルさえも放心状態である。暫くの間、周囲に静寂が訪れる。それを破ったのは、人生経験豊富なフィーナであった。

「ちょっとアストル!?今のは何!?」
「え?何って・・・雷の魔法?」
「どうして疑問形なのよ!?それに・・・やり過ぎよ!!」
「いや、軽く放ったんだけど・・・この魔法、ちょっとやべぇな・・・」
「他人事みたいに言うな!」
「いてっ。」

興奮したフィーナに後頭部を叩かれた。ナイスツッコミです!いや、そんなアホな事を言ってる場合じゃない。オレが放った魔法は、前方1キロ四方に落雷を降らせるものであった。雷の雨が降るって、言葉にすればカッコいいと思うでしょ?実物はおぞましいよ?目の眩む程の光と、鼓膜が破れそうになる轟音が連続で襲い掛かって来るんだから。

さらに説明すると、アストルが使用したのは森の中である。生い茂っていた木々は破壊され、地面はあちこち抉れている。かろうじて原型を止めた木々も、落雷の影響で燃えてしまっている。当然、生存者はいない。

「さっきのって、神々にしか使えないって言われてる雷の魔法よね?」
「みたいだね。」
「また他人事みたいに・・・ルークが神族だって実感が沸いたわ。」
「信じてなかったの?」
「そうじゃないけど、ピンと来なかったのよ。だって、お伽噺の存在じゃない?」
「まぁ・・・確かにそうか。ところで、ずっと気になってたんだけど・・・」
「?」

オレの言葉に、フィーナはキョトンとしながら小首を傾げる。そのしぐさ、とても可愛いです!オレに関する事は、移動中に説明した。重大な点を簡潔に。

「今のフィーナの口調、なんか馴れ馴れしいというか砕けてるというか・・・もっと凛々しい感じだったはずだけど?」
「そんなの演技に決まってるでしょ。立場が上になって行くに従って、上に立つ者はこうあるべきだっていう・・・固定観念のせいかな?無理して言葉遣いを変えてたんだけど、もう必要無いし。・・・嫌?」
「嫌じゃないよ。単純に気になっただけだから。」
「そう?それよりも、このままだと人が集まって来るだろうから、さっさと移動しましょ?」

フィーナの提案に頷き、オレ達は足早に移動を開始する。先ほどの閃光と轟音で、状況を確認しようと斥候がやって来るはずである。

暫く移動すると、見通しの良い場所に出た。オレが森を消し去った訳ではない。森を抜けただけである。すぐ近くに街道が見えたので、オレとフィーナは街道を歩く事にした。おそらく、街道を外れていたから襲撃されていたのだ。そう考えよう。

「しかし、ルークの魔法は凄かったわね。流石は神聖魔法、流石は上級魔法ね。」
「神聖魔法?いや、さっきのは初級魔法だけど?」
「・・・・・はぁぁぁ!?あんな凶悪なのが初級魔法!?まだまだ上があるって言うの!?ねぇ、どういう事!?」

興奮したフィーナが両手でオレの胸ぐらを掴み、前後に揺すってくる。この人、本当に感情表現が豊かである。身近にこんな日本人はいなかったな。あ、日本人じゃなかった。

「ちょ、ちょっと抑えて!」
「あ、ごめんね?・・・それで、初級魔法なの?」
「ふぅ。・・・うん。初級の中でも強い方って言えばいいのかな?・・・多分。」
「どうして自信無さ気に言うのよ?」
「初めて使ったから。今まで使えなかったんだけど、最近使えるようになったんだよね。」

それからオレは、フィーナに教えていなかった事をひたすら説明していった。大分説明が長くなった為、かなりの距離を進んだのだが、それでもまだ街や村は見えて来ない。そして説明が終了したと同時に、微かに人の声のようなものが聞こえて来た。タイミングが良過ぎるでしょ・・・。

「助けてぇ!!」

どうする?という意味を込めた視線をフィーナに向けると、やれやれといった表情で返答があった。

「聞こえたからには無視出来ないでしょ?」
「え?」
「・・・無視しようとしてたの?違うわよね?」
「いや、面と向かって直接言われた訳じゃないんだし・・・」
「そんな事言って、何処かのお姫様だったらどうするのよ!?」
「あぁ!!そんな事言っちゃったら、ホントにお姫様が出て来るだろ!?それ、フラグって言うんだぞ!?」
「何馬鹿な事言ってるのよ?そんな事あるはず無いじゃない。」

緊張感の欠片も無い会話を交わしながらも、声の聞こえた方へと急いで向かう。辿り着いたその場には、獣人の女性達を取り囲む男性獣人兵士達の姿があった。

「姫様!ここは我々が引き受けます!!」
「早くお逃げ下さい!」
「貴女達を置いてなど・・・」
「へっへっへっ、観念する事だな。」
「たっぷり可愛がってやるからよ?」

オレが半目でフィーナを見ると、フィーナはそっと横を向いた。あれが『フラグ』と呼ばれるものだと言う事を、フィーナは学習したのである。
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