Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

フィルフィアーナ

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ルークが我に帰ると、ギルド内にはフィルフィアーナの姿しか無かった。どうやら全員がそれぞれの目的地に向け出発したようである。ルークに別れの挨拶が無かったのは、いずれ再会出来るからとの事だったらしい。現在ルークは、フィルフィアーナと共にギルドマスターの部屋で通信の魔道具を使用している。

「事情はわかりました。しかし凄い魔道具ですね・・・これをルーク様が作ったと?」
「そうですよ?しかし、まさかフィルフィアーナさんがルークを狙っていたとは気付きませんでした。何時からです?」
「初めてお見かけした時です。世界政府の議事堂にいらした時に・・・一目惚れだったんです。」
「本部長が本気になったら、駆け引きで勝てる者はいないわよ。」
「あら、ナディア?私なんてまだまだよ?それから、もうギルドは辞めたんだから、本部長はやめてね?」
「それで?フィーナはいつこちらに?」
「私はルークと、アストルと共に行動しますよ?」
「「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」」

いやいやフィーナさん、オレが単独行動してる理由はお話しましたよね?

「皆さんと違って、私はまだ寵愛を賜っていないんです。このまま別れるなんて事、出来るはずが無いでしょ?」
「それとこれとは「はいはい、スフィア。フィーナの言う通りにしましょ?」ナディア?」

どういう訳か、スフィアの反対をナディアが押し込めた。ナディアが簡単に引き下がるとは思えない以上、何かしらの理由がありそうだ。しかし、それを聞く事は出来そうになく、全員が渋々といった形で引き下がる。

「しかし、ルーク様の女性関係は問題ですね。とりあえず私が常に張り付きますので、今後の心配はしなくて良いですよ?」
「そう。フィーナがそう言うなら安心ね。これから移動でしょ?気をつけてね。」
「ありがとう、ナディア。では、また夜に。」

フィーナとナディアによって、通信は終了してしまった。オレ、ほとんど会話してません。とりあえず報告も済んだ事だし、オレはフィーナと共に街を出る準備をする事にした。


一方、通信終了後の城内の一室では、ナディアに詰め寄る嫁さん達の姿があった。

「ナディアさん!一体どういう事ですか?」
「そうですよ!」
「エミリアもクレアも落ち着きなさい?ちゃんと説明するから。・・・私も聞いた話なんだけど、フィルフィアーナは『氷姫』って呼ばれているのよ。」
「氷姫・・・氷の精霊魔法使いですか?」
「違うわ。氷のように冷たいって意味よ。あの人はね、任務遂行の為なら驚く程冷酷になれるの。おまけに頭もキレるわ。一方で思いやりも常識もあるから、私達が本当に嫌だったり不満に思う事はしないわ。敵対しなければ、本当に頼れるお姉さんキャラなのよ。敵対しなければ、ね?」
「もし敵対しても、我々全員が組めば勝てるのでは?」
「リノアの気持ちはわかるけど、まず無理でしょうね。頭脳はスフィアより上、戦闘もティナより上よ?あの人は完璧超人なの。有言実行を地で行くような人だから、あの人が心配しなくていいって言うなら、信じるしかないの。」
「あ、完璧超人で思い出しました。」
「・・・ティナ?」

ティナはエレナから、今後の人生における教訓のような物を教わっていた。その中の1つにこうある。
『フィルフィアーナという名のエルフとは、敵対しないように行動する事。2手3手先を読めるくらいでは話にならない。10手か20手先まで読めて、初めて相手になるだろう。何故なら、エレナとアスコットの師匠なのだから。』と。

「はぁ!?ティナの両親の師匠!?」
「一体いくつなんでしょうか?」
「強さも気になりますね。」
「カレンさんは、何かご存知ですか?」

ナディアが驚き、セラが年齢を、シェリーがレベルを気にしている。クレアがカレンに尋ねると、驚きの答えが返ってくる。

「フィルフィアーナ・・・彼女は確か、500歳前後だったと思います。レベルまでは知りませんが、現在はそれ程でもないでしょう。冒険者ギルドの本部長に就いて、完全に錆びついていますからね。ですが、現在のティナより少し強いでしょう。」
「500歳!?」
「ティナよりも強いの!?」
「それよりも・・・500年も恋愛経験無しですか・・・。」
「それを言ったら、私なんて1000年以上恋愛経験無しでしたけど・・・。」
「「「「「「「「「「・・・・・。」」」」」」」」」」

スフィアの呟きに対してカレンが放った一言により、嫁さん達の会話が終了したのは言うまでもない。とにかく現状は、ルークとフィーナの動向を見守る事しか出来ないのであった。


嫁さん達がそんな会話を繰り広げている頃、ルークとフィーナは街で買い物をしていた。旅に必要な物の買い出しではあるのだが、フィーナにしてみれば初デートである。2人は手を繋いで食材やら雑貨を購入している。

「フィーナも一緒となると、テントが欲しくなるな。移動は歩きでいいよね?」
「そうして貰えると助かるかな?移動はアストルのペースに合わせるから、歩きでも構わないわ。」

一緒に行動するのがスフィアやリノアであれば、馬車という選択肢を選んだはずだが、フィーナの場合は徒歩を選択した。通常ならば有り得ないのだが、アストルには確信があった。フィーナは強い・・・と。隣を歩く姿を見て気付いてしまったのだ。動きに無駄が無いのは勿論の事、足音もしないのだ。森の狩人と呼ばれるエルフの特性上、気配を殺すだけではなく、足音にも気を配らなければならないのはわかる。しかし、隣を歩く人物はティナやエレナ以上の能力を保有しているのは明白である。

「あと必要な物はある?」
「う~ん・・・大丈夫かな?それで、今後の予定は?」
「お互いの戦闘能力を把握しておきたい。フィーナが強いのは感じるけど、どういう戦い方なのかは知らないから。」
「そうね・・・じゃあ、まずは宿を取りましょう。」
「・・・何でそうなるの?」
「模擬戦をして疲れたままで出発するの?」

疲れる程模擬戦を行うつもりは無いのだが・・・。しかし、夜通し飛竜に乗っていた為か、フィーナが眠そうにしている事に気付き、黙って従う事にした。そして向かった先は、立ち並ぶ宿屋の中でも最高級の宿である。

「フィーナ・・・悪いけど、今は持ち合わせが少ないんだ。」
「あら、大丈夫よ?私はこれでも元ギルド本部長だもの。」
「女性に支払わせるのはちょっと・・・」
「年上が支払うのは当然の事でしょ?」

宿の前で言い争っても仕方がないので、アストルが折れる事にしたのであった。この判断は正しい。何故なら、フィーナは絶対に譲らないつもりだったからだ。

(初めての同衾は、それなりの場所がいいものね。旅に出たら、そうそう機会も無さそうだし・・・)

そんなフィーナの考えにアストルが気付くはずも無く、フィーナにリードされるがままなのであった。その後は軽く模擬戦を行い、翌日に備えてゆっくり休んだのである。・・・なんて訳無いでしょうよ。この世界、男性が狼なら女性はライオンである。アストルはこってりと搾り取られてしまった。

そして翌朝、アストルは視線を感じて目を覚ました。

「あら、起こしちゃった?」
「フィーナ?オレより早く起きる人がいるとは思わなかったよ。」
「私はゆっくり眠った事が無いの。いつも忙しかったから・・・。でもね?こんなに幸せな朝は初めてよ。」

冒険者ギルドの本部長ともなれば、その毎日が多忙を極める。体に染み付いた習慣は、簡単には消えないだろう。これからゆっくりと変えて行けばいいと思いながら、アストルはフィーナを見つめる。フィーナもまた、他の嫁さん達に劣らずの美人である。この後、またしても搾り取られたのは言うまでもない。

少し日が登ってから2人はセイルの街を出発し、翌日の昼には山岳地帯に入っていた。フィーナの身体能力の高さは知っていたが、まさか自分のハイペースに付いて来られるとは思っていなかったアストルは素直に感心していた。

「どうかしたの?」
「いや、オレのペースに付いて来れるとは思ってなかったから。」
「そうね。普通はこんなに急いで移動しないものだけど、アストルの事情を考えたら仕方ないわよ。それよりも、ちょっといい?」
「何?」

周囲の魔物を倒し尽くした為、移動しようとしていたアストルをフィーナが止める。

「辺境の魔物の数を減らすのもいいんだけど、アストルの事情を考えるとダンジョンに入った方がいいと思うの。」
「ダンジョン?そう言えば、オレはダンジョンに入った事が無かったな。何が違うの?」
「そうね・・・まず、ダンジョンは階層毎に魔物の強さが違うの。入ってすぐは比較的弱い魔物ばかりなんだけど、最奥に近づく程、強い魔物ばかりになるわ。」
「じゃあ、奥まで行けば強い魔物ばかりと戦えると?」
「そう。そして、原理はわからないけど倒しても時間経過と共に復活するのよ。」
「確かにこんな辺境で、遭遇率の低い強い魔物を探すよりは効率的か・・・。」
「そんなルークにうってつけのダンジョンがある。」
「ルークじゃなくてアストルね?・・・で、何処?」
「獣王国の王都、アームルグ。」

王都にダンジョンがあるの?いや、そもそもダンジョンが何処にあるのか知らなかったな。フィーナは物知りだし、この辺できちんと聞いておくか。

「王都にダンジョンがあるの?」
「そうよ。あぁ、アストルは知らなかったのね。まず、ほとんどのダンジョンは各国の王都にあるわ。これは、ダンジョンによってもたらされる利益の為。魔物の素材や宝によって、その近くにある街が潤う。そうすると、自然と人が集まって大きな街になるのね。それを繰り返して出来たのが各国の王都と言われているわ。そしてもう1つの理由が、ダンジョンから魔物が溢れ出した際、いち早く対処出来る軍隊を配備しておけるのが王都だから。あ、帝国とミリス公国、カイル王国、それから・・・スカーレット共和国にはダンジョンが無かったわね。」
「へぇ。・・・魔物が溢れ出す?」
「ダンジョンは、無限に魔物を生み出すの。冒険者が倒さなければ、増え過ぎた魔物は餌を求めて外へ出る。」
「なるほどね。それで、獣王国のダンジョンがうってつけなのはどうして?」
「ダンジョンにはそれぞれ難易度があって、アームルグのダンジョンが高難易度なのよ。ここからも近いし。それに、差し迫っている問題もあるわ。」

高難易度って事だが、最高難易度ではないのだろうか?そして問題か・・・何かオレ、各地の問題解決に奔走する未来が見える。いや、世界を管理するっていう本来の役目からすれば、義務みたいなもんだろう。実感は無いのだが。

「最高難易度じゃないの?それに問題って?」
「最高難易度のダンジョンは、ライム魔導大国内にあるけど・・・入り口に石や鉱石で分厚い壁を作って、出入り出来ないようにしているわ。まぁ、それもいつまで保つかわからないんだけどね・・・。」
「何でわざわざそんな事を?誰かが攻略すればいいのに。」
「攻略目指して入った者は大勢いるけど、誰も戻らなかったのよ。魔の森と一緒ね。あ、問題だっけ?アームルグ獣王国と言ってもいくつもの部族に別れていてね、一枚岩じゃないの。そしてあの国は覇権争いに夢中で、他国やダンジョンに関わってる余裕が無いみたい。」
「それで魔物が増え続けている?」
「そう。他国の冒険者も、戦争してる国のダンジョンまでは行きたくないでしょ?」
「確かにね。それで、そのダンジョンはどの程度の魔物が出るの?」
「未だ未攻略のダンジョンだから、最下層付近の情報は無いけど、中層にはAランクの魔物が多いみたいね。」

中層でAランクなら、最下層は期待出来るよね?それならさっさとレベル上げを終えて、我が家に戻れそうだ。よし!いざ往かん、獣人の国へ!!

「ちょっとアストル!そっちは反対方向よ!!」
「・・・・・。」

前にも言ったが、大事な事なのでもう1回言っておこう。オレは方向音痴じゃない!!
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