Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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無事に戻って来たルーク達一行、というよりは国王達一行だろうか。色々と信じられない光景を目にした影響で、誰もが思考を整理出来ずにいた。そんな中にあってまず口を開いたのはカイル国王。彼だけは事前に確認していた事もあって、心の準備が出来ていたのだ。

「さて・・・思う事はあるじゃろうが、まずは各々の国における対処を決めるべきじゃな。」
「「「「「・・・・・」」」」」

カイル国王の言い分も理解出来るが、誰もがそれどころではない。賛成も反対も出来ない心理状態なのだ。カイル国王にだって、それ位は理解出来る。だが1分1秒を争う事態とあっては配慮してもいられなかった。

「まず各国が取るべき方策じゃが、間に合うようならば国民を王都へ避難させるのが望ましい。」「「「「「なっ!?」」」」」
「その上で完全に出入りを禁止するのじゃ。」
「無理です!」
「物資が不足します!!」

とんでもない提案だったのだろう。多くの者達が再始動する。当然否定的、ネガティブな意見を抱きながら。どの国にも食料の備蓄はある。だが、全国民を賄うだけの量が無いのも事実。

農家や各家庭における備蓄、そして商人達が確保している分が流通する事で生活が成り立っているのだ。その肩代わりをする事など、誰が考えても無理だとわかる。

「皆の不安は流通に関してかな?」
「それもありますが・・・それ以前に、備蓄している食料が底をついたら終わりではありませんか!?」

カイル国王に噛み付いたのはクリミア商国の国王ラトムズである。商人達の国という事もあって、彼の分析は正確であった。他の国の王達など家臣に任せている為、どの程度の備蓄があるのかも把握していない。

「それについてはちゃんとした策がある。」
「ほ、本当ですか!?どのような策なのです!?」
「フォレスタニア皇帝陛下に、各国を繋ぐ地下道を建設して貰うのじゃ。」
「「「「「は?」」」」」

事情を知らない者達が、何言ってんだ?という表情になる。しかし流石はカイル国王。相手にしていたら纏まる話も纏まらない事は承知の上。全く相手にせず勝手に話を進めてしまう。

「ついでに地下農園を作る事も考えておる。これにはドワーフ国の協力を仰ぐ必要があるのじゃが・・・まぁ断られる心配は無いじゃろう。」
「む?まぁ、世界の危機じゃからな・・・よかろう。」

突然話を振られたドワーフ国王だったが、此処で駆け引きをする程馬鹿ではない。若干の不満はありそうなものの、難しい顔をしながら承諾するのだった。

「しかしそれ程大掛かりな工事、一体何ヶ月掛かるのです!?」
「ん?隣の国の王都までなら1日だな。」
「「「「「1日!?」」」」」
「あぁ。勘違いしてそうだが、オレが作る地下道ってのは単なる穴だ。デカイ穴が真っ直ぐ隣国の王都まで続いてると思ってくれればいい。それを綺麗に整備するのはドワーフ国に頼むべきだな。」

ルークの説明を聞き、全員がその道を想像する。あんな魔法が使えるのだから、地下に穴を開ける位は出来るのだろうと。そしてドワーフ国の地下農園の噂はどの国の王達も耳にしていた。これならば何とかなるかもしれない。そう思うと次第に欲が出る。

「ならば各村や街を繋いで・・・」
「悪いがそれは無理だ。オレが繋ぐのは王都同士のみ。他は一切手出ししない。」
「「「「「「何だって!?」」」」」
「多くの民達を見捨てると言うのですか!」

ルークの発言が気に入らなかった者達が口々に異を唱える。

「勘違いしてるようだが、民を見捨てるのはオレじゃない。アンタらだ。」
「「「「「っ!?」」」」」
「それにオレは自国の村や街も一切繋ぐつもりはない!」
「王都に住む者以外は見捨てるという事ではありませんか!」

何処かの国の姫だろうか。ルークが王都しか救わないと言っているように聞こえた為、勇ましくも噛み付いた。だがやる気になったルークは口でも負ける気がない。

「わかり易く説明してやろう。さっき見た魔物は1匹1匹が各国の軍隊に匹敵する。そんなのが1匹でも地下道に侵入すれば、当然他国にも危険が及ぶ。それを防ぐ為にも出入り口は軍が総出で護らなければならない。そんなのが全ての街や村にあっても無事に守り切れるのか?」
「それは・・・」
「侵入を許した瞬間、その国への門は閉ざされる。そうなればその国は滅ぶんだ。それでも街や村を繋げとアンタは言うのか?」
「・・・・・」

女性をいじめる趣味など無いが、あまりにも浅慮なお姫様に対して怒りが湧いたルーク。王族ならば、もう少し考えるべきだと思ったのだ。

しかし一方で、その優しさに胸が温かくなったのもまた事実。

「それにオレは街や村を見捨てるとは言ってない。」
「え?」
「定期的に物資は運んでやるし、時間は掛かるだろうが王都まで連れて行く。それに地下道を閉ざすと言ったが、それは逆に魔物の侵入を知らせる事にも繋がる。そうなったらオレが討伐に向かうから、本当に王都が滅びる訳じゃない。」
「あ・・・」

ルークの言葉の意味を理解したのだろう。ハッとした表情を浮かべた王女が自国の王に顔を向ける。その王はと言えば、無言で頷き返すのみであった。

ここでやめておけばカッコイイのだろうが、思った事は口にするのがルークである。

「だが・・・救えない村や街もあるかもしれない。王都も含め出来る限りの街や村を土魔法で囲うつもりだが、もし犠牲者が出たらオレを恨んでくれ。」
「そんな!フォレスタニア皇帝陛下を恨むはずがありません!!」

頬を赤らめて叫ぶ王女とルークのやり取りに、呟かずにはいられなかった者が約数名。

「・・・何コレ?」
「あの王女様って未婚?」
「彼女はシルヴァニア王国第1王女。選り好みし過ぎて・・・未だに独身です。」
(((何処かで聞いた話ね・・・。)))

言う側も聞く側も心当たりがあり過ぎた。此処で話が途切れるかと思われたのだが、1人心当たりの無いティナの言葉で再始動する。

「あれは恋する者の顔ですね。」
「「「「「説教(です)ね!!」」」」」

カッコつけてるように見えるルークに、見事落とされた王女。そう受け取った嫁達が後でルークを叱ろうと決めた瞬間でもあった。何処のラブコメだよ!とでも言いたそうである。


そんな事になっているとは思っていないルークは、とにかく話を進めようとする。

「で、まず初めに取り掛かるのはライムに最も近いヴァイス騎士王国だ。そこの王都とラミス神国の王都を繋げる。」
「・・・頼む。」
「我が国も是非。」

ルークと繋がりのある2国の王が揃って願い出る。話はこのまま纏まるかと思われたのだが、ここでも噛み付いて来たのはミーニッツ国王だった。

「巫山戯るな!王都の地下に道を作るなど、他国の間者が紛れ放題ではないか!!」
「ならミーニッツ共和国には作らないって事でいいか?」
「っ!?ぐっ・・・」

とにかくルークが気に食わないミーニッツ国王に対し、ルークはあっさりと告げる。これには完全に目論見が外れたのか、ミーニッツ国王が悔しそうに俯く。

と言うのも、ライム、ヴァイス、シルヴァニアと地下道を繋げる為にはミーニッツ共和国を通るしかないと考えたのだ。だからこそ、ルークを困らせて対価を引き出してやろうと思ったのである。


だがルークは無理に3国と繋がる必要性を感じていなかった。多少面倒ではあるが、迂回すればそれまでとの思いがあったのだ。ルークもそこまでお人好しではない。出来る限りの命を救いたいが、それは出来る限りであって全てではない。


このままではミーニッツが孤立してしまう。そう思ったカイル国王が助け船を出した。

「ミーニッツ国王陛下にフォレスタニア皇帝陛下よ。ミーニッツ共和国を通らぬ場合は北方の3国に負担を強いる事となる。ここは儂の顔に免じて、互いに退いては貰えんかのぉ?」
「オレはどちらでも構いませんよ。」
「カイル国王にそこまで言われては仕方ない!我慢してやる!!」
「「「「「・・・・・」」」」」

誰の目にも負け惜しみにしか見えないのだが、ここで口を挟めば振り出しに戻ってしまう。そう考えて無言を貫く。ルークだけは煽りそうな気もしたが、意外な事に無反応だった。

と言うのも、ルークの思考は別の事に向けられている。

(オレを操れる者がいる・・・早めにやる事を済ませておかないと、取り返しがつかなくなるかもしれない。出来れば真っ先に原因を探りたい所だけど、ヴァニラと合流するまでは保留だな。)

世界にとっても非常事態だが、それはルーク自身にとっても言える事だった。操られて世界や嫁達に危害を加える事になっては、悔やんでも悔やみきれない。だからこそ一刻も早く問題を解決する事にしたのだ。

今やカレン1人に頼る事も出来ない。自分の力がカレンに向けば、そのカレンも危ないのだから。ならば最初から大人しくしていれば良いのだが、そこはやはりやられたらやり返すルークなのだろう。


「ならば細かい部分の打ち合わせをするとしよう。」
「でしたら具体的な説明はオレが。まず・・・・・」

ルークが今後の行動について説明し、カイル国王が取り纏める形で会議は進められた。明日以降の詳細が決まった頃には、すっかり日が暮れていたのであった。
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