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第63話
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勇哉さんが私を見失って困っている。
そのまま通り過ぎて行った。
「……聞いてたんだよ。あの人から。川崎さんがここに来ること、あの人がついて行こうとしていることも」
え……。
「私を助けに来たんですか……?」
森川さんはやや視線を外した。
「有給消化のための観光ついでだ」
いやその言い訳無理があるでしょ!
「森川さん……借り返せませんよ私……」
「別に貸したつもりはない。ついでだよ」
ああ。
いい人だな。
「どこに泊まるの?」
「この近くのビジホです」
「送っていく」
「え?」
「見つかったら厄介だから、そこにいた方がいい」
確かに。
「はい。そうします」
森川さんと身を隠しながら予約したビジホに行った。
無事到着。
「ありがとうございます。助かりました」
と頭を下げたら、森川さんは受付に行った。
「今日部屋空いてますか?」
は?
「はいございますよ」
「じゃあシングルで一泊」
え?
「森川さん泊まるんですか……?」
「せっかく来たからたっぷり見て回るよ」
なんでここまで。
そんな見え透いた嘘ついて。
「森川さんなら、もっと素敵な人見つけられると思いますよ。この時間がもったいないですよ」
申し訳なさすぎる。
「……俺にとっては大事な時間なんだよ」
そう言うとホテルから出て行ってしまった。
***
複雑な気持ちを抱きつつ、私は遠くで自分を心配している勇凛くんを思い浮かべた。
スマホを見ると、勇凛くんからのメッセージが。
『出張どうですか?』
胸が温かくなる。
『無事に終わったよ。早く帰って勇凛くんに会いたい』
しばらくすると、返信がきた。
『俺も早く七海さんに会いたいです。いっぱい抱きしめたいです』
む、胸が苦しい……!
夫へ思いを馳せながら、出前でとった昼食を食べていた。
***
──午後5時30分
勇輝さんの宿泊先のホテルのロビー。
待っていると客室用のエレベーターから勇輝さんが出てきて私と目が合った。
こっちにゆっくり歩いてくる。
「タクシーで会食の店まで向かう」
あれ?
「あの男性社員の方々はどちらに?」
「帰らせた。会食に同席する必要はない」
私もいる必要がないような。
勇輝さんはタクシー乗り場に歩いて行った。
私もあとを追う。
そしてタクシーに二人で乗り込んだ。
繁華街を通り抜け、向かった先にあったのは、風情がある日本風の建物の料亭だった。
勇輝さんと店の中に入ると、女将さんがにこやかに出迎えてくれた。
「お部屋にご案内します」
案内された部屋は、広々とした立派な和風の個室だった。
テレビでこんな店を何回か見たことがあるが、自分が入るのは初めてだった。
既に先方の社員が数名座っていた。
「本日は遠路お越しいただき、ありがとうございました」
先方の社長が挨拶をした。
「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます」
勇輝さんは見たこともないような柔らかい笑顔を向ける。
これが営業スマイルというやつなのか。
先方社長の挨拶で、会食が始まった。
そのまま通り過ぎて行った。
「……聞いてたんだよ。あの人から。川崎さんがここに来ること、あの人がついて行こうとしていることも」
え……。
「私を助けに来たんですか……?」
森川さんはやや視線を外した。
「有給消化のための観光ついでだ」
いやその言い訳無理があるでしょ!
「森川さん……借り返せませんよ私……」
「別に貸したつもりはない。ついでだよ」
ああ。
いい人だな。
「どこに泊まるの?」
「この近くのビジホです」
「送っていく」
「え?」
「見つかったら厄介だから、そこにいた方がいい」
確かに。
「はい。そうします」
森川さんと身を隠しながら予約したビジホに行った。
無事到着。
「ありがとうございます。助かりました」
と頭を下げたら、森川さんは受付に行った。
「今日部屋空いてますか?」
は?
「はいございますよ」
「じゃあシングルで一泊」
え?
「森川さん泊まるんですか……?」
「せっかく来たからたっぷり見て回るよ」
なんでここまで。
そんな見え透いた嘘ついて。
「森川さんなら、もっと素敵な人見つけられると思いますよ。この時間がもったいないですよ」
申し訳なさすぎる。
「……俺にとっては大事な時間なんだよ」
そう言うとホテルから出て行ってしまった。
***
複雑な気持ちを抱きつつ、私は遠くで自分を心配している勇凛くんを思い浮かべた。
スマホを見ると、勇凛くんからのメッセージが。
『出張どうですか?』
胸が温かくなる。
『無事に終わったよ。早く帰って勇凛くんに会いたい』
しばらくすると、返信がきた。
『俺も早く七海さんに会いたいです。いっぱい抱きしめたいです』
む、胸が苦しい……!
夫へ思いを馳せながら、出前でとった昼食を食べていた。
***
──午後5時30分
勇輝さんの宿泊先のホテルのロビー。
待っていると客室用のエレベーターから勇輝さんが出てきて私と目が合った。
こっちにゆっくり歩いてくる。
「タクシーで会食の店まで向かう」
あれ?
「あの男性社員の方々はどちらに?」
「帰らせた。会食に同席する必要はない」
私もいる必要がないような。
勇輝さんはタクシー乗り場に歩いて行った。
私もあとを追う。
そしてタクシーに二人で乗り込んだ。
繁華街を通り抜け、向かった先にあったのは、風情がある日本風の建物の料亭だった。
勇輝さんと店の中に入ると、女将さんがにこやかに出迎えてくれた。
「お部屋にご案内します」
案内された部屋は、広々とした立派な和風の個室だった。
テレビでこんな店を何回か見たことがあるが、自分が入るのは初めてだった。
既に先方の社員が数名座っていた。
「本日は遠路お越しいただき、ありがとうございました」
先方の社長が挨拶をした。
「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます」
勇輝さんは見たこともないような柔らかい笑顔を向ける。
これが営業スマイルというやつなのか。
先方社長の挨拶で、会食が始まった。
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