三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第62話

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 先方のSEと回線状況を確認する。

「まず、この会議室から出ていく映像を減らした方がいいと思います。本日、画面に映すのは、御社の社長、副社長、そして弊社副社長の林。三名の表情と資料だけにしてみてはいかがでしょう」

 先方社長が「問題ない」と短く答える。
 会議システムの設定を、全員表示から発言者中心の表示へ変更し、画質を一段落とす。  
 資料以外の画面共有を切り、会議室内のカメラも一台に絞った。

「映像より、声を優先します」

 先方SEが管理画面を確認し、「安定してきました」と小さくつぶやく。

「副社長、念のためですが、いつもお使いの端末からも同じ会議に入っていただけますか。この部屋に何かあっても、声だけは届くようにしておきたいです」

 勇輝さんに視線を送ると、視線が一瞬だけ鋭くなった。

「……分かった」

 止まっていた画面が再び動き出した。  
 海外拠点の責任者の顔が映り、今度は音声が滑らかに流れる。

『聞こえている。さっきと違って、かなり安定している』

 先ほどまで固かった会議室の空気が、わずかに和らいだ。
 先方社長が深く息を吐き、「続けましょう」と宣言した。
 会議はその後無事に進み、終了した。

 ***

「本日はありがとうございました。……先ほどは本当に助かりました」

 先方のSEが、退出間際に話しかけてきた。  

「会議が無事に終わってよかったです」

 そう告げると先方SEは会議室を出た。
 役員たちが出て行き、会議室が静かになる。  

 帰り支度を始めると、

「前職は何をしていた」

 勇輝さんの目が私に向けられていた。

「SEです」

 勇輝さんは目を伏せた。

「助かった」

 そう告げると、彼は他の秘書二人と会議室の出口に向かった。

「どこに部屋をとってある」
「近隣のビジネスホテルです」
「同じホテルにとらなかったのか」
「私は秘書ですが一般の社員ですので、そこに経費を割くのはよくないと判断しました」
「……そうか。先方との会食は18時だ。こちらのホテルロビーに30分前に来るように」
「はい」

 そして勇輝さんたちは去って、私は一人取り残された。

 脱力して座り込みそうになった。

 ***

 なんとか役に立てた安堵感で取引先のビルを出て、どこかで適当に昼食でも食べようかと歩き出そうとすると──
 肩を叩かれた。

「七海ちゃんお疲れ~」

 ため息がでた。

「お腹すいてるでしょ?ごはん食べようよ」

 にこにこ笑顔。

「今まで何してたんですか……?」
「普通に観光。いいよね~息抜き」

 あなたは息抜きだろうが、私は人生かけてるんだよ。
 一人でゆっくりしたい!

「ちょっと、用事あるんで遠慮します」

 私は足早にその場を去ろうとした。

「え、待って!」

 追いかけてくる勇哉さん。
 だんだんと早くなる私の足。
 そしていつの間にか全力。

「せっかく何の邪魔もなく一緒にいられるのに、逃げないでよ~!」

 だから逃げてるんだよ!!
 やばいもう追いつかれる!!
 その時、脇道に引っ張られた。

 誰かに腕を掴まれた。
 え……?誰?
 その腕の主を見ると……。

「え、なんでいるんですか?」

 そこには私服の森川さんがいた。
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