三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第64話

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 次々と料理が運ばれてくる。

「今回はこちらの不手際により、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

 先方の社長が頭を下げた。

「いえ、こういうことはよく起こりますから」

 当たり障りのない会話が続く。

 お酒が運ばれてくる。

「あなたは確か林さんでしたよね……?副社長と同じ姓というのは、なにか繋がりがあるのでしょうか?」

 先方に聞かれて、答えに詰まった。

「……こちらの血縁の配偶者です」

 え?
 その返事が意外で驚いた。
 偶然とか言うと思っていたからだ。

「そうなんですね。お二人とも林さんなので、下の名前もお伺いしていいですか?」
「七海と申します」

 なぜか私に注目が集まって食欲が減退していく。

「林副社長の秘書さんは優秀な方々ばかりですね。今回も七海さんがいらっしゃってよかった。今後ともよろしくお願いします」
「……恐れ入ります」

 お試し秘書みたいなものなのに……。

 お酒がだんだんと進み、会話が弾み、距離感が近くなっていく。

「七海さんもお酒どうですか?」

 確かこの方は営業部長だった……はず。

「お酒が合わない体質でして。申し訳ありません」

 目が座っている彼がやや身を乗り出してきた」

「七海さん、連絡先教えてもらえますか?色々お話ししたい」

 え……。
 その方の指には結婚指輪がしっかりはめられている。
 私の指にも。
 なんのための指輪なのか。
 なんて返せばいいの……?
 角が立たない言い方が思いつかない。

「申し訳ありません。林は秘書に就いたばかりでこのような会に不慣れなので、また次の機会にさせて頂いてよろしいでしょうか」

 勇輝さんが私たちの会話に割ってはいった。
 やや相手の社員がたじろいでいる。

「失礼しました」

 勇輝さんはまた先方の重役と話している。

 これは守られたのか?
 真意がわからないまま会食は終わりを迎えた。

 ***

 個室の外まで先方の社長たちに見送られ、店を出る。

「本日はご馳走になり、ありがとうございました」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします」

 定型句を交わして、私たちは用意されたタクシーに乗った。
 無言。

 お礼を言わねば。

「さっきのことですが……助けていただきありがとうございました」
「さっきの、とは?」
「営業部長の方に、連絡先を聞かれた件です」
「あれは、私のためでもある」
「副社長の、ため……?」
「君が失礼なことをすると今後の業務に支障をきたす」
「……」

 まぁそんな返事は想定内だ。
 私が外の景色を眺めていると、私の宿泊するビジネスホテルの前に到着した。
 てっきり副社長のホテルで解散になると思ったから驚いた。

「ありがとうございます」
「……勇哉が来ているんだろう」

 バレているじゃねーか。

「私は手を抜くつもりはない。そして勇哉も君を追い詰めるだろう。それでもまだ足掻くのか?」

 正直しんどい。辛い。でも──

「私は勇凛さんが側にいてくれれば、どんな困難も乗り越えます」

 私の正直な今の気持ち。

「……そうか」

 そして私はタクシーから降りた。

「明日私は早朝の便で帰る事にした。君は別で帰りなさい」

 タクシーは繁華街に消えていった。

 出張の全ての任務を遂行した……。
 胸を撫でおろしてホテルに入ると、森川さんがロビーのソファに座っていた。

「どうだった?」
「なんとかやり遂げました……」
「飲みに行くか?」
「飲みません」

 あ。

「勇哉さん、今頃どうしてるんだろう……」
「『七海ちゃんに逃げられてつまんないから帰る』ってさっき連絡がきた」
「仲良しですね」
「適当に使われてるだけだよ」

 森川さんにまともにお礼ができてない。

「お酒は無理ですけど……ごはん付き合いますよ。私のおごりです!」
「じゃあ行くか」

 そのあと、森川さんと福岡の有名なラーメン屋に行って、たらふく食べた。
 そしてまたホテルに戻ってそれぞれの部屋に戻った。
 寝る前に勇凛くんに電話をして、私は眠りにつく。

 福岡出張任務は無事に終わった。
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