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第64話
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次々と料理が運ばれてくる。
「今回はこちらの不手際により、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
先方の社長が頭を下げた。
「いえ、こういうことはよく起こりますから」
当たり障りのない会話が続く。
お酒が運ばれてくる。
「あなたは確か林さんでしたよね……?副社長と同じ姓というのは、なにか繋がりがあるのでしょうか?」
先方に聞かれて、答えに詰まった。
「……こちらの血縁の配偶者です」
え?
その返事が意外で驚いた。
偶然とか言うと思っていたからだ。
「そうなんですね。お二人とも林さんなので、下の名前もお伺いしていいですか?」
「七海と申します」
なぜか私に注目が集まって食欲が減退していく。
「林副社長の秘書さんは優秀な方々ばかりですね。今回も七海さんがいらっしゃってよかった。今後ともよろしくお願いします」
「……恐れ入ります」
お試し秘書みたいなものなのに……。
お酒がだんだんと進み、会話が弾み、距離感が近くなっていく。
「七海さんもお酒どうですか?」
確かこの方は営業部長だった……はず。
「お酒が合わない体質でして。申し訳ありません」
目が座っている彼がやや身を乗り出してきた」
「七海さん、連絡先教えてもらえますか?色々お話ししたい」
え……。
その方の指には結婚指輪がしっかりはめられている。
私の指にも。
なんのための指輪なのか。
なんて返せばいいの……?
角が立たない言い方が思いつかない。
「申し訳ありません。林は秘書に就いたばかりでこのような会に不慣れなので、また次の機会にさせて頂いてよろしいでしょうか」
勇輝さんが私たちの会話に割ってはいった。
やや相手の社員がたじろいでいる。
「失礼しました」
勇輝さんはまた先方の重役と話している。
これは守られたのか?
真意がわからないまま会食は終わりを迎えた。
***
個室の外まで先方の社長たちに見送られ、店を出る。
「本日はご馳走になり、ありがとうございました」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします」
定型句を交わして、私たちは用意されたタクシーに乗った。
無言。
お礼を言わねば。
「さっきのことですが……助けていただきありがとうございました」
「さっきの、とは?」
「営業部長の方に、連絡先を聞かれた件です」
「あれは、私のためでもある」
「副社長の、ため……?」
「君が失礼なことをすると今後の業務に支障をきたす」
「……」
まぁそんな返事は想定内だ。
私が外の景色を眺めていると、私の宿泊するビジネスホテルの前に到着した。
てっきり副社長のホテルで解散になると思ったから驚いた。
「ありがとうございます」
「……勇哉が来ているんだろう」
バレているじゃねーか。
「私は手を抜くつもりはない。そして勇哉も君を追い詰めるだろう。それでもまだ足掻くのか?」
正直しんどい。辛い。でも──
「私は勇凛さんが側にいてくれれば、どんな困難も乗り越えます」
私の正直な今の気持ち。
「……そうか」
そして私はタクシーから降りた。
「明日私は早朝の便で帰る事にした。君は別で帰りなさい」
タクシーは繁華街に消えていった。
出張の全ての任務を遂行した……。
胸を撫でおろしてホテルに入ると、森川さんがロビーのソファに座っていた。
「どうだった?」
「なんとかやり遂げました……」
「飲みに行くか?」
「飲みません」
あ。
「勇哉さん、今頃どうしてるんだろう……」
「『七海ちゃんに逃げられてつまんないから帰る』ってさっき連絡がきた」
「仲良しですね」
「適当に使われてるだけだよ」
森川さんにまともにお礼ができてない。
「お酒は無理ですけど……ごはん付き合いますよ。私のおごりです!」
「じゃあ行くか」
そのあと、森川さんと福岡の有名なラーメン屋に行って、たらふく食べた。
そしてまたホテルに戻ってそれぞれの部屋に戻った。
寝る前に勇凛くんに電話をして、私は眠りにつく。
福岡出張任務は無事に終わった。
「今回はこちらの不手際により、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
先方の社長が頭を下げた。
「いえ、こういうことはよく起こりますから」
当たり障りのない会話が続く。
お酒が運ばれてくる。
「あなたは確か林さんでしたよね……?副社長と同じ姓というのは、なにか繋がりがあるのでしょうか?」
先方に聞かれて、答えに詰まった。
「……こちらの血縁の配偶者です」
え?
その返事が意外で驚いた。
偶然とか言うと思っていたからだ。
「そうなんですね。お二人とも林さんなので、下の名前もお伺いしていいですか?」
「七海と申します」
なぜか私に注目が集まって食欲が減退していく。
「林副社長の秘書さんは優秀な方々ばかりですね。今回も七海さんがいらっしゃってよかった。今後ともよろしくお願いします」
「……恐れ入ります」
お試し秘書みたいなものなのに……。
お酒がだんだんと進み、会話が弾み、距離感が近くなっていく。
「七海さんもお酒どうですか?」
確かこの方は営業部長だった……はず。
「お酒が合わない体質でして。申し訳ありません」
目が座っている彼がやや身を乗り出してきた」
「七海さん、連絡先教えてもらえますか?色々お話ししたい」
え……。
その方の指には結婚指輪がしっかりはめられている。
私の指にも。
なんのための指輪なのか。
なんて返せばいいの……?
角が立たない言い方が思いつかない。
「申し訳ありません。林は秘書に就いたばかりでこのような会に不慣れなので、また次の機会にさせて頂いてよろしいでしょうか」
勇輝さんが私たちの会話に割ってはいった。
やや相手の社員がたじろいでいる。
「失礼しました」
勇輝さんはまた先方の重役と話している。
これは守られたのか?
真意がわからないまま会食は終わりを迎えた。
***
個室の外まで先方の社長たちに見送られ、店を出る。
「本日はご馳走になり、ありがとうございました」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします」
定型句を交わして、私たちは用意されたタクシーに乗った。
無言。
お礼を言わねば。
「さっきのことですが……助けていただきありがとうございました」
「さっきの、とは?」
「営業部長の方に、連絡先を聞かれた件です」
「あれは、私のためでもある」
「副社長の、ため……?」
「君が失礼なことをすると今後の業務に支障をきたす」
「……」
まぁそんな返事は想定内だ。
私が外の景色を眺めていると、私の宿泊するビジネスホテルの前に到着した。
てっきり副社長のホテルで解散になると思ったから驚いた。
「ありがとうございます」
「……勇哉が来ているんだろう」
バレているじゃねーか。
「私は手を抜くつもりはない。そして勇哉も君を追い詰めるだろう。それでもまだ足掻くのか?」
正直しんどい。辛い。でも──
「私は勇凛さんが側にいてくれれば、どんな困難も乗り越えます」
私の正直な今の気持ち。
「……そうか」
そして私はタクシーから降りた。
「明日私は早朝の便で帰る事にした。君は別で帰りなさい」
タクシーは繁華街に消えていった。
出張の全ての任務を遂行した……。
胸を撫でおろしてホテルに入ると、森川さんがロビーのソファに座っていた。
「どうだった?」
「なんとかやり遂げました……」
「飲みに行くか?」
「飲みません」
あ。
「勇哉さん、今頃どうしてるんだろう……」
「『七海ちゃんに逃げられてつまんないから帰る』ってさっき連絡がきた」
「仲良しですね」
「適当に使われてるだけだよ」
森川さんにまともにお礼ができてない。
「お酒は無理ですけど……ごはん付き合いますよ。私のおごりです!」
「じゃあ行くか」
そのあと、森川さんと福岡の有名なラーメン屋に行って、たらふく食べた。
そしてまたホテルに戻ってそれぞれの部屋に戻った。
寝る前に勇凛くんに電話をして、私は眠りにつく。
福岡出張任務は無事に終わった。
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