最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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ゴブリンキング編

閑話 〈勇者の脱走〉

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――時は帝都の王城で勇者召喚が行われた日まで遡り、レナを除く異世界から召喚された「勇者」の4人組は強制的に王城の訓練場に連行され、半ば無理やりに帝国の将軍から武器を渡されて男性の佐藤と加藤は剣の稽古、女性の花山と鈴木は魔術師から魔法の扱い方を強制的に教わる。


「ほらほら!!そんなへっぴり腰では敵にやられてしまいますよ!!」
「く、くそっ!!なんで当たらねえんだ!!」
「落ち着け加藤!!」


男性陣は剣を構えた男の将軍に2人がかりで訓練用の剣を振り回すが、相手とあまりにも力量差が存在し、剣の素人である佐藤と加藤が叶う相手ではない。


「いい加減にしろっ!!どうして俺達がこんな事をしなくちゃいけないんだよ!!」
「それは貴方達が勇者だからです!!世界を救う為、ここでしっかりと訓練を積んで貰わなければ困ります!!」
「ふざけんなっ!!そもそもどうして俺達がお前等なんかの為に……!!」
「落ち着くんだ加藤!!」


訓練相手の将軍の言葉に加藤は掴みかかろうとするが、慌てて佐藤が引き留める。ここで反抗した所で自分達の立場が改善されるとは思えず、むしろ逆に反抗的な態度を取り続ける事で彼等の対応が変わる事を恐れ、佐藤は加藤に耳打ちする。


「俺達がここで反抗的な態度を取れば他の2人も危ないんだぞ……今は我慢しろ」
「だけどよ……こいつら、何で俺達の話を聞かねえんだよ」
「分かってる……だけど、今は駄目だ」
「くそがっ……」


佐藤の言葉に加藤は渋々と剣を拾い上げ、苛立ちを晴らすように力任せに振り回して将軍に剣を当てようとする。そんな彼を引き留めた佐藤も実際の所は彼等の対応に苛立ちを感じており、自分達を勝手にこのような世界に召喚し、しかも無理やりに今までに一度も握った事もない剣を渡して戦うように指示を出す帝国の将軍に不満を抱く。

だが、相手は本物の武器を所持する人間達であり、もしも下手に逆らえば自分達の身が危ないと佐藤は考えており、彼は先ほど受けたステータスの儀式で身に着けた自分の能力を確認する。


『異能:転移――1日に1度だけ自分の知る場所に転移することが出来る。他の人間も同時に』


彼はこの自分の異能と呼ばれる能力を確認した瞬間、ある考えを思いつく。しかし、自分で考えた方法とはいえ、本当に成功するのか疑問を抱き、第一にステータスに異能と表示されていても佐藤は使い方も分からない。それでも彼の考えが正しければ異能の力の使い方を知ることが出来れば他の3人と合流した時が絶好の好機であり、この世界から抜け出せるかも可能性があった。


「うわぁっ!?」
「おっと、大丈夫ですか?しかし、まだまだ足腰が弱いですな」
「な、なんだ……どうしてこんな身体が重いんだよ!?」
「それは勇者殿のレベルが低いからですな。まあ、身体を鍛えるだけでも経験値も得られますから、その内にレベルも上昇すれば改善されるでしょう」
「訳分かんねえ事を……!!」


不良の加藤は真っ先に自分の身体の異変に気付いており、彼は少し動いただけで体力が異様に消耗する感覚に襲われ、いつも通りに身体が動かすことが出来ない。理由は彼の肉体が「レベル1」になっている事が原因であり、幾ら勇者と言っても現時点の能力値では帝国の将軍を勤める人間には敵わない。そんな彼の様子を確認しながら佐藤は女性陣の方を確認すると、こちらと違って彼女達は女性の魔術師から訓練を行っていた。


「勇者様、まずは杖をお持ちください。あまり深くは考えず、自分のステータスに映し出されている魔法の名前を口にして下さい」
「そ、そんな事を言われても……」
「大丈夫です。何があろうと私達が勇者様を守ります」
「……本当ね?な、なら私の方からやるわ」


佐藤達と比べて女性陣の方は優し気に魔法の扱い方を教わり、花山と鈴木は杖を握りしめる。彼女達は魔法を発動するために魔術師から渡された杖を握りしめ、魔法を発動しようとした瞬間、加藤の悲鳴が響き渡る。


「ぎゃあぁああああああああああっ!!」
「加藤!?」
「加藤君!?」
「どうしたの!?」


佐藤達は驚いて視線を向けるとそこには地面に横たわる加藤の姿が存在し、彼は右腕を抑えて呻き声を上げる。傍には将軍の男が訓練用の剣を握りしめたまま頭を掻いており、どうやら彼が手加減を誤ったのか加藤の右腕を負傷させたらしく、慌てて3人の幼馴染は彼の元に駆け寄り、加藤を起き上げさせる。


「大丈夫か加藤!?」
「血が出ているじゃない!!」
「ぐぅうっ……あ、あの野郎……ぐああっ!?」
「加藤君!!」
「おい!!誰か回復薬を持ってこい!!全く……この程度の攻撃で骨が折れるとは……」
「ふざけるなぁっ!!」


加藤を負傷させた将軍は溜息を吐きながら兵士に回復薬を持ってくるように指示を出すが、佐藤はそんな彼の態度に我慢できず、蓄積されていた不満を爆発させる。


「僕達が一体何をしたっていうだ!!こんな場所に呼び出して、戦いたくもないのに無理やり訓練を受けさせて、僕の友達を傷つけて!!一体何様のつもりだ!!」
「お、落ち着いて下さい勇者殿。その程度の傷ならば回復薬で……」
「うるさい!!骨が折れてるんだぞ!!これは訓練じゃなかったのか!!」
「それは力加減を誤って……」
「一言も謝りもしないのかっ!!」


佐藤の言葉に将軍は眉を顰め、彼としては自分の行動がそれほど問題だとは認識していなかった。訓練の際に怪我人が生まれるのは珍しくはなく、彼としてもレベル1の人間を相手に上手く力加減が出来ずに誤って怪我をさせただけであり、この程度の傷ならば回復薬だけで十分に治療できる。

だが、問題なのはこの世界の回復薬という存在を知らない佐藤は加藤の負傷を重く見つめ、これまでの不当な扱いに彼自身も我慢が限界であり、彼はステータス画面を確認して自分の異能を確認する。もしも自分が本当に勇者ならば友達の危機を救い出す力を持っていると信じ、佐藤は幼馴染の三人の身体を抱き寄せ、無我夢中にステータス画面の文章を読み上げる。


「異能!!転移!!」
「なっ!?」
「えっ!?」
「さ、佐藤……!?」
「一体何を……!?」
「くそ、何も起きない……転移!!転移!!」


佐藤は必死に画面の文章を何度も読み上げるが、何も異変が起きらない。最初は発動に失敗したのかと思ったが、彼の視界に新しい画面が写し出された。


『転移先を想像して下さい』


その文章を読み取った瞬間、佐藤は即座に自分達の「元の世界」の学校の教室を思い返し、もう一度大声で自分の異能の名前を口にした。




「――転移!!」




次の瞬間、佐藤達の足元に魔法陣が浮かび上がり、その光景に将軍の男は目を見開き、その魔法陣は彼等をこの世界に召喚する時に利用した魔法陣であり、発光が強まる。


「ま、待て!!おい、誰か止めろ!!」
「皆!!僕から離れるな!!」
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
「わああっ!?」


魔法陣が光り輝き、佐藤は三人を抱きしめ、決して1人も手放さないように力強く握りしめる。将軍は慌てて掌を伸ばしたが、魔法陣が更に光り輝き、その閃光に誰もが視界を塞いでしまい、その間にも彼等の姿が光に飲み込まれ、やがて完全に消え去った――






――閃光が収まり、佐藤達の視界が回復するとそこには自分達の見慣れた教室が存在し、彼等は教室の床の上に転がっていた。何が起きたのか彼等が完全に理解するのに時間が掛かったが、やがて自分達が元の世界に戻った事に気付く。


「こ、ここは……」
「教室だよ!!私達の教室よ!!」
「え?戻ってきたの!?」
「マジかよ……やった!!やった……ぐああっ!?」
「馬鹿!!動くな!!」


自分達の世界に戻ってきた事に4人は感動するが、腕を負傷していた加藤は悲鳴を上げ、佐藤が慌てて抑えつける。それでも元の世界に戻れたことに全員が安堵の息を吐きだし、佐藤は涙ぐむ。


「良かった……「全員」戻る事が出来たんだな」
「そうね……まさかこんなに早く戻れるなんて……」
「魔法を使ってみたかったけど……やっぱりこっちの世界の方が安心するね」
「お、おい……いいから早く病院に連れて行ってくれ」
「いや、まずは保健室に向かおう。ほら、肩を貸すよ」


4人は感動を分かち合いながら自分達が戻って来れた事を実感し、誰1人欠けずに戻って来れた事に安堵する。だが、教室去る際に花山は一度振り返り、首を傾げる。


「あれ……?」
「どうかしたの?」
「あ、ううん……私達、帰ってきたんだよね?」
「そうよ。元の世界に戻ってきたのよ」
「う~んっ……その、何ていうか私達がこの教室から召喚された時、誰かと話していなかった?」
「え?」
「そう言えば……でも、誰だったのかしら?」
「さあな……どうでもいいだろ。早く行こうぜ」
「……そうだな」


全員が「違和感」を感じながらも、まずは加藤の負傷を保健室の先生に診てもらうために移動を開始した――
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