最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
111 / 207
ゴブリンキング編

帝都に帰還

しおりを挟む
――転移石から発動された転移魔法陣が光り輝いた瞬間、レナ達は一瞬で周囲が建物に覆われた広間に辿り着く。無事に帝都に帰還出来たらしく、時間帯は深夜を迎えてはいるが周囲には数多くの人間が賑わっていた。先に転移石で帰還した人間以外にも帝国軍の兵士や陽光教会の治癒魔導士が存在し、広間に現れたレナ達に駆け寄る。


「大丈夫ですか!?怪我を負っている方はこちらに!!」
「おい!!すぐに食べ物を用意しろ!!大分疲弊しているぞ!!」
「やった!!あんた達も戻って来れたんだな!!」
「凄いよあんた!!皆助かったんだ!!」


大勢の人間にレナ達は囲まれ、中には転移石で先に帰還した人間も存在し、すぐに兵士達がパンとスープが入った木造のコップを渡す。すぐに全員が食事を行い、一息を吐く。怪我人や病人は治癒魔導士の元に運ばれ、すぐに回復魔法と薬品の治療を行う。


「助かった……みたいですね」
「ああっ……だけど、ワルキューレ騎士団に報告しないといけなかったのに……」
「それは他の人に任せましょう。今は身体を休めて下さい……あれ?コトミンさんは何処に……」
「……ただいま」
「あ、後ろに居たんですか……あれ?身体が元に戻ってませんか!?」
「そこで水分を補給してきた」


コトミンの姿が見えない事にアイリィは疑問を抱くが、後方から声を掛けられて振り返ると通常状態に戻った彼女の姿があり、彼女は広間に存在する噴水広場を指差し、水圧砲で消費した水を補給して元に戻ったらしい。アイリィとコトミンは倒れているレナを2人で担ぎ、陽光教会に向かう。現在はミキとテンは教会にはいないがヨウカは滞在中のはずであり、彼女に事情を話してアラン炭鉱の近辺に存在する森の中に待機しているワルキューレ騎士団を呼び戻さなければならない。人質の大部分は解放に成功したが、それでもまだ捕まっている人間は存在するため、レナも身体が回復次第に鉱山に戻るつもりだった。


「あ、すいません!!まだ事情聴取が終わっていない方は……」
「私達は陽光教会の関係者です。先に教会に報告を行いますので失礼します」
「きょ、教会の……?」


帝国軍の兵士がレナ達を引き留めようとするが、陽光教会の名前を出すと立ち止まる。帝国にとって陽光教会は特別な存在であり、レナ達は帝都中央の広間を離れる。最後にレナは後方を振り返り、自分たちが転移した場所には台座が存在し、空中に浮かぶ巨大な転移石の塊を発見する。この塊こそが「転移結晶」であり、これを利用してレナ達は引き返すことが出来た。


「教会に戻った後、どうする……?」
「まずはレナさんは休んでください。後の事は私達が何とかしますから……」
「レナは頑張った……いい子いい子」
「止めんかっ」


頭を撫でてくるコトミンにレナは恥ずかしさを誤魔化すために首を反らし、夜空を見上げると月の光が降り注ぐ。固有スキルの「月光」のお蔭でステータスが上昇し、身体が軽くなった感覚に陥る。それでも疲労感までは残っており、今回は体力を消耗し過ぎて身体が動かない。

レナの疲労は最後に食堂で習得した三つのスキルが関係しており、肉体に影響を与える腕力強化と剛力を覚えたばかりで激しい運動を行ったのが限界であり、まだ完全に身体が馴染んでいない。それでも時間が経過すれば二つのスキルも完全に扱えるようになり、今は一刻も身体を休ませる必要があった。



――陽光教会に到着し、3人だけで戻ってきた事をヨウカに驚かれるが、すぐに彼女はレナを休ませるために病人用の個室を用意する。レナはベッドに横になるとすぐに眠ってしまい、その間にアイリィはこれまでに何か起きたのかを教会側に説明を行い、すぐにヨウカはワルキューレ騎士団の撤退を命じる。



今回の件でアラン炭鉱の人質をほぼ全員救い出せたのはレナの功績であり、残された人質はゴンゾウだけとなる。ゴブリンキングが鉱山に存在する以上、アラン炭鉱から魔石の発掘は出来ないため、帝国軍も急いで軍を編成して討伐隊の準備を行う。

一方でワルキューレ騎士団は出動したにも関わらず、偵察に向かったはずのレナ達が人質を救出し、更に武器として利用される可能性が高い冒険者の荷物を奪い返し、しかもゴブリンナイトを2体も葬ったという報告に驚きを隠せなかった。報告を受けたミキはレナ達の行動に驚いたが、同時に自分たちに報告もせずに無茶な行動を取った彼等を叱りつけようとした。

だが、もしも彼等が行動していなければ70人近くの人間がクド草の毒によって死亡していたのは間違いなく、レナ達がいなければ大勢の人間の命が失われていた。それに自分たちの態度が非協力的のも自覚しており、彼女としても彼等の行動の一端は自分たちの責任があるのではないかと考えていた。

結果としてワルキューレ騎士団は1人も犠牲も出さずに退却し、陽光教会に引き返す。3人に救われた人間達は帝国軍の事情聴取を受け、アラン炭鉱の状況を事細かに訪ねられる。そしてゴブリンキングが出現してから3日後、遂に帝国軍の討伐隊が編成され、アラン炭鉱に向けて出発した――
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...