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しおりを挟む宰相がシャーロットと国王陛下の面会を指定した日時は十日後のことだった。
いつもであれば、そんなに先にはならない。
ということは、やはり隣国の皇女との婚約の話があるのは間違いないと思った。
「シャーロット様。」
「なあに?」
「ご機嫌ですね。」
「……顔に出したつもりはないけど?」
「俺は誤魔化せませんよ。」
「…………」
8歳のシャーロットから18歳のシャーロットまで見続けてきたマックスが気づかないわけがない。
彼にとって、シャーロットは常に死んだような目をしている令嬢だったのだから。
軽く、何かに希望を見出しては撃沈し、前よりも死んだ目になることを繰り返してきたことを知っているのだから。
8歳でニコルソンの婚約者になったのは、父であるマッケンジー公爵が王家にシャーロットを売ったようなものだった。
当時、王家は度重なる災害支援によって財政難に陥ろうとしていた。
それを、マッケンジー公爵家が莫大な援助を申し出たのだ。
邪魔なシャーロットと引き換えに。
王家は願ってもいない申し出に飛びついた。
元々、ニコルソンと同い年のシャーロットは婚約者の筆頭候補でもあったのだ。
シャーロットに会ったことがなくても、王家は喜んで婚約を受け入れた。
しかし、姿を見せたシャーロットは明らかに大切に育てられていなかった。
体は小さく、サイズの合わないドレスを着て、ぎこちない挨拶しかできない。
まともな食事も、まともな教育も受けていないことは間違いなかった。
そんなシャーロットを王太子となるニコルソンの婚約者にと押し付けるマッケンジー公爵が何を考えているのか、よくわからないし、この状態で王宮に通わせるにも馬車を出してくれるかもわからないと判断した王妃によって、シャーロットは王宮に引き取ることになった。
王宮で、そんなシャーロットに与えられた食事はとても美味しく量も多かった。
マナーなどわからないシャーロットは目を輝かせて夢中になって食べ、……腹痛で寝込んだ。
次に与えられた食事は、マッケンジー公爵家で出てきたような粗食だった。
食べたことのない食事に胃腸が驚いたなどと説明されても、その頃のシャーロットにはわからなかったため、喜ばせておいて突き落とすようなひどいところに来たのだと思ったものだった。
しかも、すぐに食事のマナー教育により、温かかったはずの料理が冷たくなっていく。
これも嫌がらせなのだと思ったものだった。
シャーロットが何もできなかったからだと今ではわかっているが、指導をしてくれた方々は揃いもそろって厳しかった。褒めて伸ばすということはなく、できなければ鞭打ちもあったのだ。
少ししてマックスが気づき、体罰はなくなった。
要するに、マッケンジー公爵家に比べればマシでも、王宮での暮らしも大変だった。
礼儀作法を完璧に身に着けたのは、12歳のとき。
王太子妃教育も含め、学ぶべき勉強を終えたのは、13歳のとき。
体形が年齢に追いついたのは、14歳のとき。
ニコルソンに与えられた執務を手助けし始めたのは、15歳で学園に入学する少し前のことである。
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