【完結】指先が触れる距離

山田森湖

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第38話 結婚式の準備

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第38話 結婚式の準備

帰国から二週間が経った。

私と美咲は、仕事の合間を縫って結婚式の最終準備に追われていた。一か月後に迫った桜の結婚式に向けて、やることは山積みだった。

「佐藤さん、招待状の返事、ほとんど届きました」

美咲が嬉しそうに報告してくれた。

「皆さん、来てくださるんですね」

「はい。ご両親も、友人も、職場の皆さんも」

私たちは小さな結婚式を予定していたが、それでも大切な人たちに囲まれる温かい式になりそうだった。

「ドレスの最終フィッティングは明日ですね」

「はい。緊張します」

美咲が選んだドレスは、シンプルで上品なものだった。彼女らしい、控えめだけれど美しいドレスだった。

---

昼休み、私たちは会場の最終確認に向かった。

桜並木に囲まれた小さなチャペル。まさに私たちにぴったりの場所だった。

「桜、もう少しで満開ですね」

「タイミングが完璧ですね」

ガーデンの桜の木を見上げながら、私たちは当日のことを想像していた。

「佐藤さん、本当に夢みたいです」

「僕も同じ気持ちです」

ウェディングプランナーの田村さんが詳細を説明してくれた。

「当日は天気も良さそうです。桜吹雪の中での式になるかもしれませんね」

「素敵ですね」

美咲の目が輝いていた。

---

その夜、私は美咲の両親と食事をした。結婚式前の最後の家族での時間だった。

「佐藤さん、ロンドンでの経験はいかがでしたか?」

お父さんが聞いた。

「とても勉強になりました。でも、美咲さんと離れていることの辛さも学びました」

「そうですね。結婚は、一緒にいることが一番大切ですから」

「はい。もう美咲さんを一人にはしません」

お母さんが微笑んだ。

「美咲も、佐藤さんのことをずっと待っていました」

「お母さん...」

美咲が恥ずかしそうにした。

「佐藤さんがロンドンにいる間、毎日佐藤さんの話をしていましたよ」

「そうだったんですか」

「『佐藤さんは今頃何をしているかな』『元気にしているかな』って」

美咲の両親の話を聞いて、私は改めて彼女の愛情の深さを実感した。

---

翌日、私は自分の両親と会った。

「息子よ、いよいよだな」

父が感慨深そうに言った。

「はい。美咲さんと結婚できることを、とても幸せに思います」

「美咲さんは良い方だ。大切にしなさい」

「もちろんです」

母も嬉しそうだった。

「結婚式、楽しみにしているわ」

「ありがとうございます」

「佐藤家に美咲さんが来てくれること、とても嬉しく思っています」

両親からの祝福を受けて、私は結婚への決意を新たにした。

---

結婚式の一週間前、職場で送別の意味も込めた歓送迎会が開かれた。

「佐藤さん、美咲さん、おめでとうございます!」

同僚たちが乾杯してくれた。

「ありがとうございます」

私たちは並んで挨拶した。

「実は、皆さんにご報告があります」

私が立ち上がった。

「結婚後も、美咲と一緒にこの職場で働かせていただきたいと思います」

「それは素晴らしい!」

山田さんが拍手してくれた。

「夫婦で一緒に働くなんて、素敵ですね」

「ありがとうございます。皆さんのお陰で、ここまで来ることができました」

美咲も立ち上がった。

「私も、皆さんと一緒に働けることを嬉しく思います」

「美咲さんも頑張って!」

温かい拍手に包まれて、私たちは感謝の気持ちでいっぱいになった。

---

結婚式の三日前、私たちは最後の打ち合わせを行った。

「明日は前日準備ですね」

「はい。いよいよですね」

「緊張しますか?」

美咲が聞いた。

「緊張よりも、楽しみの方が大きいです」

「私も同じです」

私たちは手を握り合った。

「佐藤さん、この一年半、本当にいろんなことがありましたね」

「そうですね。隣の席に座ったあの日から」

「指先が触れる距離から始まって」

「今では心も完全に一つになりました」

美咲の指にある婚約指輪が、夕日に美しく光っていた。

「あと三日で、本当の夫婦になるんですね」

「はい。美咲さんと人生を共にできることを、心から嬉しく思います」

---

その夜、私は一人で明日からの準備について考えていた。

指先が触れる距離から始まった私たちの物語が、ついに結婚という形で結実しようとしている。

遠距離恋愛、様々な誘惑、仕事での試練。多くの困難があったが、すべてを乗り越えることができた。

それは、お互いを深く愛し、信頼し合っていたからこそだった。

明後日、美咲は私の妻になる。そして私は彼女の夫になる。

新しい人生の始まりが、もう目の前まで来ていた。

桜の花びらに祝福されながら、私たちは永遠の愛を誓うことになる。

その瞬間を想像するだけで、胸が熱くなった。
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