【完結】指先が触れる距離

山田森湖

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第39話 結婚式の朝

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第39話 結婚式の朝

結婚式当日の朝、私は早くに目が覚めた。

窓の外を見ると、快晴だった。桜も満開で、まさに理想的な結婚式日和だった。時計を見ると、まだ朝の六時。式は午後二時からなので、まだ時間はたっぷりあった。

携帯電話を見ると、美咲からメッセージが入っていた。

『おはようございます。今日はよろしくお願いします』

『おはようございます。こちらこそ、よろしくお願いします』

今日という日が、ついにやってきた。

---

朝九時、私は父と一緒に会場に向かった。

「緊張しているか?」

「少し。でも、楽しみの方が大きいです」

「そうか。それが一番だ」

会場に到着すると、すでにウェディングプランナーの田村さんが準備を始めていた。

「おはようございます。今日は素晴らしいお天気ですね」

「はい。桜も完璧です」

ガーデンの桜は、まさに満開だった。風が吹くたびに、花びらが舞い散る美しい光景だった。

「新婦のお支度はいかがですか?」

「順調に進んでいるようです」

美咲は、会場内の別室で準備をしているはずだった。

---

正午頃、親族や友人たちが到着し始めた。

「佐藤君、おめでとう!」

大学時代の友人、田村が声をかけてくれた。

「ありがとう。来てくれて嬉しいよ」

「美咲さんは美人だって聞いてるよ」

「とても素敵な人だ」

続々と到着する参列者の皆さんに挨拶をしながら、私は改めて多くの人に支えられていることを実感した。

「佐藤さん、準備はいかがですか?」

職場の山田さんが声をかけてくれた。

「おかげさまで順調です」

「美咲さんも喜んでいらっしゃるでしょうね」

「はい。夢にまで見た日ですから」

---

午後一時、私は最後の身支度を整えていた。

「息子よ、立派になったな」

父が感慨深そうに言った。

「ありがとうございます」

「美咲さんを幸せにするんだぞ」

「もちろんです」

母も涙ぐんでいた。

「あなたが結婚するなんて、まだ信じられないわ」

「僕も不思議な気持ちです」

「美咲さんは本当に良い方ね。大切にしなさい」

「はい」

---

午後一時三十分、私はチャペルの祭壇の前に立った。

参列者の皆さんが席に着き、厳かな雰囲気の中で式が始まろうとしていた。

オルガンの音色が響き始めた時、私の心臓は激しく鼓動した。

そして、扉が開いた。

美咲が、お父さんと腕を組んで現れた。

純白のドレスに身を包んだ美咲は、この世で最も美しい女性に見えた。ベールの向こうから見える彼女の笑顔は、天使のようだった。

「きれいだ...」

思わずつぶやいてしまった。

美咲がバージンロードを歩いてくる間、私は感動で胸がいっぱいになった。

指先が触れる距離から始まった私たちの関係が、ついにこの瞬間に結実するのだ。

美咲がお父さんから私に引き継がれる瞬間、彼女の手がそっと私の手に触れた。

あの日、隣の席で資料を渡した時の、初めての偶然の接触。それから始まったすべてが、この瞬間につながっている。

「美しいですね」

私が小声で言うと、美咲が微笑んだ。

「ありがとうございます」

牧師さんが式を始めた。

「愛する皆様、本日はお忙しい中、佐藤健太郎さんと田中美咲さんの結婚式にお集まりいただき、ありがとうございます」

厳かな声が響く中、私は美咲の手を握っていた。温かくて、少し震えている手。

「健太郎さん、あなたは美咲さんを妻とし、病める時も健やかなる時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい、誓います」

私ははっきりと答えた。

「美咲さん、あなたは健太郎さんを夫とし、病める時も健やかなる時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい、誓います」

美咲の声は少し震えていたが、力強かった。

指輪の交換の時が来た。

私は美咲の指に結婚指輪をはめた。婚約指輪に寄り添うように、新しい指輪が光っていた。

美咲も私の指に指輪をはめてくれた。その時、私たちの目が合った。涙が浮かんでいる彼女の瞳に、深い愛情が込められていた。

「それでは、誓いのキスを」

牧師さんの言葉で、私はそっと美咲のベールを上げた。

そして、静かに唇を重ねた。

参列者の皆さんからの拍手が響く中、私たちは初めて夫婦としてのキスを交わした。

チャペルの窓から差し込む午後の光の中で、桜の花びらが舞い散っていた。

まるで私たちを祝福してくれているかのように。

「奥さん」

私が小声で言うと、美咲が嬉しそうに微笑んだ。

「旦那さん」

指先が触れる距離から始まった私たちの物語は、ついに夫婦という最も近い距離に到達した。

これから始まる新しい人生に、私たちは希望に満ちた笑顔で向かっていく。

桜吹雪の中で、永遠の愛を誓った午後だった。
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