【完結】指先が触れる距離

山田森湖

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第40話 新婚の日々

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第40話 新婚の日々

結婚式から一週間が経った。

私たち夫婦は、新しい生活を始めるために選んだアパートで、初めての共同生活をスタートさせていた。

「おはようございます」

朝、美咲が私より少し早く起きて、朝食の準備をしてくれていた。

「おはよう、美咲」

「美咲」と名前で呼ぶのは、まだ少し照れくさかった。でも、夫婦になったのだから、これが自然なのだろう。

「今日も一日、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

朝のコーヒーを一緒に飲みながら、私たちは今日の予定を確認し合った。

「健太郎さん、今日は例のプロジェクトの会議ですね」

「そうです。美咲も参加してくれるから心強いです」

結婚後も、私たちは同じ職場で働き続けることにしていた。夫婦でありながら、仕事のパートナーでもある。

---

出勤途中の電車で、私たちは並んで座った。

「不思議な感じですね」

美咲がつぶやいた。

「何が?」

「毎朝一緒に出勤するなんて、結婚前は夢みたいでした」

「僕も同じ気持ちです」

窓の外を流れる景色を見ながら、私は新しい生活への充実感を味わっていた。

「健太郎さん、昨夜はよく眠れましたか?」

「はい。美咲の隣で眠るのは、とても安らぎます」

「私も同じです」

新婚生活特有の幸福感に包まれながら、私たちは職場に向かった。

---

オフィスに到着すると、同僚たちが温かく迎えてくれた。

「新婚さん、おはようございます!」

山田さんが笑顔で声をかけてくれた。

「おはようございます」

「新婚生活はいかがですか?」

「とても幸せです」

美咲が答えると、周りから「おお」という声が上がった。

「佐藤さんも美咲さんも、幸せそうですね」

課長も嬉しそうだった。

「ありがとうございます」

私たちは隣の席に座った。今度は夫婦として隣に座る。指先が触れる距離は変わらないが、関係性は全く違っていた。

「おはようございます、奥さん」

私が小声で言うと、美咲が恥ずかしそうに笑った。

「おはようございます、旦那さん」

---

午前中のプロジェクト会議で、私たちは夫婦として初めて一緒に仕事をした。

「佐藤さん、田中さん...いえ、佐藤さんご夫妻の企画案を拝見しましたが、とても素晴らしい内容ですね」

クライアントからの評価も高く、プロジェクトは順調にスタートした。

「ありがとうございます」

会議後、私たちは二人で振り返りをした。

「美咲の提案、とても良かったです」

「健太郎さんのプレゼンテーションも素晴らしかったです」

お互いを褒め合いながら、夫婦として働くことの喜びを実感していた。

---

昼休み、私たちは屋上で一緒にお弁当を食べた。

「美咲の手料理、本当に美味しいです」

「ありがとうございます。まだ慣れなくて...」

「十分美味しいです。愛情がこもっています」

美咲が嬉しそうに微笑んだ。

「健太郎さんと結婚できて、本当に幸せです」

「僕も同じです。毎日が楽しくて」

桜の花びらが舞い散る屋上で、私たちは新婚の幸せを噛みしめていた。

---

夕方、定時になると、私たちは一緒に帰宅した。

「今日も一日、お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

家に帰ると、美咲が夕食の準備を始めた。

「手伝います」

「ありがとうございます」

二人で料理をしながら、その日あったことを話し合う。これが私たちの新しい日常だった。

「健太郎さん、結婚前と何か変わったことはありますか?」

「変わったこと?」

「気持ちとか、考え方とか」

私は少し考えてから答えた。

「責任感が強くなった気がします」

「責任感?」

「美咲を幸せにしなければという」

「私も同じです。健太郎さんを支えなければって」

私たちは微笑み合った。

---

夜、ベッドに横になりながら、私たちは将来のことを話した。

「健太郎さん、子どもはいつ頃...」

美咲が恥ずかしそうに聞いた。

「美咲はどう思いますか?」

「もう少し二人の時間を楽しんでから...」

「僕も同じ気持ちです」

「でも、いずれは...」

「もちろんです。美咲との子どもが欲しいです」

そんな会話をしながら、私たちは未来への夢を語り合った。

---

翌朝、私は美咲より先に起きて、朝食の準備をした。

「おはようございます」

起きてきた美咲が驚いている。

「たまには僕が作ります」

「ありがとうございます」

美咲の嬉しそうな表情を見て、私も幸せな気持ちになった。

「健太郎さんの作る朝食、美味しいです」

「本当ですか?」

「はい。愛情がこもっています」

私の言葉を真似して、美咲が笑った。

こんな些細な幸せが、毎日続いていくのだと思うと、胸が熱くなった。

指先が触れる距離から始まった私たちの関係は、今では心も体も完全に一つになっていた。

新婚生活の幸福に包まれながら、私たちは新しい人生を歩み始めていた。

毎日が愛情に満ちていて、これ以上の幸せは考えられなかった。

美咲と過ごす日々は、まさに夢のようだった。
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