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7.待ち構えていた者達
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とにかく今回の事実をお父様に伝えなければならないため、私は馬車へと急いでいた。
隣には、シェリダン様もいる。幾分か溶融があるものの、彼の方も早く事態を父親に伝えたいというのは同じなのだろう。その足は私と同じくらいには早かった。
「……アレシア嬢、どうやらあちらもただで帰すつもりなどはないらしい」
「え? あっ……」
そこでシェリダン様に言葉をかけられて、私は眼前にある人だかりに気付いた。
その人だかりの中心には、イネリアとロンベルト様がいる。周りにも見覚えがある人達がいた。あれはラメルトン伯爵家の使用人だ。半数くらいは、ディレイル伯爵家の者だろうか。
「ふふっ、お姉様、随分とお急ぎのようですね?」
「イネリア……」
「アレシア、そんなに急ぐことなどはない。ゆっくりとしていけば良いじゃないか」
「ロンベルト様、あなたまで……」
イネリアとロンベルト様は、私を引き止めるつもりであるようだった。
恐らく既に、使用人をお父様の元に向かわせているのだろう。私よりも先に情報を伝えて、ことを有利に進めるつもりなのだ。
これに関しては、私の方が後手に回ってしまったといえる。状況を整理せざるを得ない私の方が、行動には時間がかかってしまうのだ。
「おや、隣の男性は誰ですか? もしかして、もう別の男を見つけたんですか? お姉様は意外とそういったことに関して奔放なのですね?」
「もう僕のことを忘れたというのか。驚いたな。なんとも薄情というか……」
私のことを、イネリアは嘲笑っていた。どうやら彼女は、心底私のことを見下したいらしい。
一方でロンベルト様の方は、軽蔑するような視線を向けてきている。自分は浮気していたというのに、どうしてそんな棚に上げた言動ができるのかが、私にはわからない。
「確かあなたは、兄上の友人だったな? これはどういうことか、説明してもらえるか?」
「……」
ロンベルト様は、シェリダン様の方に歩み寄って行った。
彼の表情からは、敵意のようなものが読み取れる。それは私に対して、情と言う者がある程度はあったということなのだろうか。
しかし何せよ、それはシェリダン様にとっては理不尽なものだ。ここは私が、一言物申しておくべきかもしれない。
「人の婚約者に手を出すなんて、あなたも随分な人であるようだな。まあ、そういう意味ではアレシアとお似合いともいえるが……」
「……ふっ」
食ってかかって来たロンベルト様に対して、シェリダン様は笑みを浮かべていた。
その笑みは、人を心底見下したような笑みだ。イネリアが私に向けていたものに似ている。
その表情に、私は驚いていた。ただすぐに理解できた。シェリダン様は、私達にも見せた冷酷な貴族としての一面を覗かせているのだと。
隣には、シェリダン様もいる。幾分か溶融があるものの、彼の方も早く事態を父親に伝えたいというのは同じなのだろう。その足は私と同じくらいには早かった。
「……アレシア嬢、どうやらあちらもただで帰すつもりなどはないらしい」
「え? あっ……」
そこでシェリダン様に言葉をかけられて、私は眼前にある人だかりに気付いた。
その人だかりの中心には、イネリアとロンベルト様がいる。周りにも見覚えがある人達がいた。あれはラメルトン伯爵家の使用人だ。半数くらいは、ディレイル伯爵家の者だろうか。
「ふふっ、お姉様、随分とお急ぎのようですね?」
「イネリア……」
「アレシア、そんなに急ぐことなどはない。ゆっくりとしていけば良いじゃないか」
「ロンベルト様、あなたまで……」
イネリアとロンベルト様は、私を引き止めるつもりであるようだった。
恐らく既に、使用人をお父様の元に向かわせているのだろう。私よりも先に情報を伝えて、ことを有利に進めるつもりなのだ。
これに関しては、私の方が後手に回ってしまったといえる。状況を整理せざるを得ない私の方が、行動には時間がかかってしまうのだ。
「おや、隣の男性は誰ですか? もしかして、もう別の男を見つけたんですか? お姉様は意外とそういったことに関して奔放なのですね?」
「もう僕のことを忘れたというのか。驚いたな。なんとも薄情というか……」
私のことを、イネリアは嘲笑っていた。どうやら彼女は、心底私のことを見下したいらしい。
一方でロンベルト様の方は、軽蔑するような視線を向けてきている。自分は浮気していたというのに、どうしてそんな棚に上げた言動ができるのかが、私にはわからない。
「確かあなたは、兄上の友人だったな? これはどういうことか、説明してもらえるか?」
「……」
ロンベルト様は、シェリダン様の方に歩み寄って行った。
彼の表情からは、敵意のようなものが読み取れる。それは私に対して、情と言う者がある程度はあったということなのだろうか。
しかし何せよ、それはシェリダン様にとっては理不尽なものだ。ここは私が、一言物申しておくべきかもしれない。
「人の婚約者に手を出すなんて、あなたも随分な人であるようだな。まあ、そういう意味ではアレシアとお似合いともいえるが……」
「……ふっ」
食ってかかって来たロンベルト様に対して、シェリダン様は笑みを浮かべていた。
その笑みは、人を心底見下したような笑みだ。イネリアが私に向けていたものに似ている。
その表情に、私は驚いていた。ただすぐに理解できた。シェリダン様は、私達にも見せた冷酷な貴族としての一面を覗かせているのだと。
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