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12.母からの言葉
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ラメルトン伯爵家に、程なくしてイネリアが帰って来た。
彼女は、様子を見に来た私に対して得意気に笑みを浮かべている。それはまるで、自らの勝利を確信しているかのようだ。
しかしながら、お父様は厳正な判断を下してくれる。今はまだそのことを言えはしないが、イネリアのその笑顔というものはすぐに打ち砕かれることになるだろう。
「イネリア、あなたはどういうつもりなのですか?」
「……お母様」
「一体、何の意図でこのようなことをしたのですか? ラメルトン伯爵家を混乱させるなんて。許されることではありませんよ」
そんなイネリアに話しかけたのは、私達のお母様であった。
その行動に、私もイネリアも少し驚いている。お母様がそのように、家のことを口にするのは珍しいことだからだ。
お父様のことを信頼しているからか、嫁に来ているからか、お母様はラメルトン伯爵家の運営というものに口を挟まない。お父様の判断に従っていたお母様が、このような質問を投げかけるとは思っていなかった。
だが、それはそれだけイネリアの行動が目に余るということであるのだろう。お母様は明らかに怒っている。もちろん、それはイネリアもわかっているはずだ。
「お母様は、勘違いをされているようですね?」
「勘違い?」
「私とお姉様は、手を取り合う関係ではありません。このラメルトン伯爵家をどちらが手に入れるか、争い合う関係なのです。この混乱は、言うならば必然です」
お母様に対して、イネリアは堂々とそう言い切った。
そうやって啖呵を切ることができるのは、見事だと言えなくはない。
ただ、その言葉によってお母様の表情は強張った。イネリアの生意気な言い分は、怒りを加速させたようである。
「勘違いしているのは、あなたの方です。そのような争いが仮にあったとしても、それは既に決着していることです」
「なんですって?」
「あなた達のお父様は、アレシアを婿を迎える立場として、ロンベルト伯爵令息を婚約者として迎えることを決めたのです。あなたはその判断に背いているに過ぎない。それはラメルトン伯爵家に対する裏切りだとわかりませんか?」
「……お父様がラメルトン伯爵家を継がせると決めたロンベルト様が、私を選んだのではありませんか! それが全てです!」
お母様の言葉に、イネリアは反論した。
彼女の表情は怒りで歪んでいる。当然のことではあるが、今更諦めるつもりなんてないようだ。
「お母様はいつもそうです。お姉様のことばかり優先する」
「……そのようなつもりはありません。私はあなたのことをいつも気に掛けてきました。忠告は何度もしたはずですよ?」
「私は間違ったことなどしていません。お母様にそれを理解する脳がないだけでしょう!」
どうやらお母様も、イネリアの本性については知っていたらしい。
さらにそれを注意して正そうともしていたように思える。
それでもイネリアが止まらなかった。彼女はいつからか、誰の忠告も受け入れられない程に、その考えを凝り固めてしまったということなのだろう。
彼女は、様子を見に来た私に対して得意気に笑みを浮かべている。それはまるで、自らの勝利を確信しているかのようだ。
しかしながら、お父様は厳正な判断を下してくれる。今はまだそのことを言えはしないが、イネリアのその笑顔というものはすぐに打ち砕かれることになるだろう。
「イネリア、あなたはどういうつもりなのですか?」
「……お母様」
「一体、何の意図でこのようなことをしたのですか? ラメルトン伯爵家を混乱させるなんて。許されることではありませんよ」
そんなイネリアに話しかけたのは、私達のお母様であった。
その行動に、私もイネリアも少し驚いている。お母様がそのように、家のことを口にするのは珍しいことだからだ。
お父様のことを信頼しているからか、嫁に来ているからか、お母様はラメルトン伯爵家の運営というものに口を挟まない。お父様の判断に従っていたお母様が、このような質問を投げかけるとは思っていなかった。
だが、それはそれだけイネリアの行動が目に余るということであるのだろう。お母様は明らかに怒っている。もちろん、それはイネリアもわかっているはずだ。
「お母様は、勘違いをされているようですね?」
「勘違い?」
「私とお姉様は、手を取り合う関係ではありません。このラメルトン伯爵家をどちらが手に入れるか、争い合う関係なのです。この混乱は、言うならば必然です」
お母様に対して、イネリアは堂々とそう言い切った。
そうやって啖呵を切ることができるのは、見事だと言えなくはない。
ただ、その言葉によってお母様の表情は強張った。イネリアの生意気な言い分は、怒りを加速させたようである。
「勘違いしているのは、あなたの方です。そのような争いが仮にあったとしても、それは既に決着していることです」
「なんですって?」
「あなた達のお父様は、アレシアを婿を迎える立場として、ロンベルト伯爵令息を婚約者として迎えることを決めたのです。あなたはその判断に背いているに過ぎない。それはラメルトン伯爵家に対する裏切りだとわかりませんか?」
「……お父様がラメルトン伯爵家を継がせると決めたロンベルト様が、私を選んだのではありませんか! それが全てです!」
お母様の言葉に、イネリアは反論した。
彼女の表情は怒りで歪んでいる。当然のことではあるが、今更諦めるつもりなんてないようだ。
「お母様はいつもそうです。お姉様のことばかり優先する」
「……そのようなつもりはありません。私はあなたのことをいつも気に掛けてきました。忠告は何度もしたはずですよ?」
「私は間違ったことなどしていません。お母様にそれを理解する脳がないだけでしょう!」
どうやらお母様も、イネリアの本性については知っていたらしい。
さらにそれを注意して正そうともしていたように思える。
それでもイネリアが止まらなかった。彼女はいつからか、誰の忠告も受け入れられない程に、その考えを凝り固めてしまったということなのだろう。
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