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4.似ている親子
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「正直に言って、あなたの来訪は心地良いものとはいえませんでしたね…」
馬車の中で正面に座るクルード様は、私にそう言ってきた。
それは当然のことだ。だというのに彼は何故か、申し訳なさそうに言葉を発している。己の率直な感想に対して、彼は罪悪感を抱いているらしい。
なんというか、ゴートン侯爵の血をひしひしと感じる。彼もひどく人が好いらしい。今までも何度か話したことはあったが、今の反応でそれが心から理解できた。
「そうでしょうね。突然訪問してきて厄介ごとを運んでくるなんて、私はなんとも厄病神なものです」
「そこまで言うつもりはありません。しかし俺は、他家の問題に介入することは良いことではないと思っているのです」
私の言葉を受け流しながら、クルード様は首を横に振った。
他家への干渉はするべきではない。それも貴族としては当たり前のことだ。彼の言葉に対しては、反論の余地もない。
しかし何故かクルード様の方が、釈然としていない感じだった。貴族としてそうするべきだという自身の理想と、心情が噛み合っていないのかもしれない。
「もちろん、アゼリア嬢が受けた行いに関して思う所はあります。そのような非道な真似が許されていいとは思っていません。ですがこれはラウファス伯爵家の問題……それにゴートン侯爵家が介入して良い結果が得られるとは思いません。二家の対立に繋がります」
「そうですね。それは私も望んでいません。侯爵にはいざという時に弟達を助けてもらえるように、懇願しに来たのですが……」
「これに関しては、父上の気質の問題といえますね……ああいった話を聞いて、動かない人ではありませんから」
会話をしてきてわかってきたが、クルード様の不満は私ではなく父親に向いているような気がする。
それはなんというか、あんまりといえばあんまりだ。ゴートン侯爵に申し訳なくなってくる。
「申し訳ありません、私のせいで……」
「アゼリア嬢のせいではありません。そもそもの問題は、ラウファス伯爵夫妻です」
「あ、えっと、それはそうなのかもしれませんが……」
「先代のラウファス伯爵はなんとも立派な方だったそうですが、どうしてこうなってしまったのか……なんとも悲しいことです」
ついにクルード様は、根本的なことについて嘆き始めていた。
彼の心根が優しいということは、最早疑いようがない事実である。ゴートン侯爵が彼を私について行かせているのも、きっとそういった面を理解し信頼しているからだろう。
しかしまさか、ゴートン侯爵が私のこれからの生活の世話をしてくれるとは思っていなかった。もちろんありがたいことではあるのだが、どうしたものか。
馬車の中で正面に座るクルード様は、私にそう言ってきた。
それは当然のことだ。だというのに彼は何故か、申し訳なさそうに言葉を発している。己の率直な感想に対して、彼は罪悪感を抱いているらしい。
なんというか、ゴートン侯爵の血をひしひしと感じる。彼もひどく人が好いらしい。今までも何度か話したことはあったが、今の反応でそれが心から理解できた。
「そうでしょうね。突然訪問してきて厄介ごとを運んでくるなんて、私はなんとも厄病神なものです」
「そこまで言うつもりはありません。しかし俺は、他家の問題に介入することは良いことではないと思っているのです」
私の言葉を受け流しながら、クルード様は首を横に振った。
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しかし何故かクルード様の方が、釈然としていない感じだった。貴族としてそうするべきだという自身の理想と、心情が噛み合っていないのかもしれない。
「もちろん、アゼリア嬢が受けた行いに関して思う所はあります。そのような非道な真似が許されていいとは思っていません。ですがこれはラウファス伯爵家の問題……それにゴートン侯爵家が介入して良い結果が得られるとは思いません。二家の対立に繋がります」
「そうですね。それは私も望んでいません。侯爵にはいざという時に弟達を助けてもらえるように、懇願しに来たのですが……」
「これに関しては、父上の気質の問題といえますね……ああいった話を聞いて、動かない人ではありませんから」
会話をしてきてわかってきたが、クルード様の不満は私ではなく父親に向いているような気がする。
それはなんというか、あんまりといえばあんまりだ。ゴートン侯爵に申し訳なくなってくる。
「申し訳ありません、私のせいで……」
「アゼリア嬢のせいではありません。そもそもの問題は、ラウファス伯爵夫妻です」
「あ、えっと、それはそうなのかもしれませんが……」
「先代のラウファス伯爵はなんとも立派な方だったそうですが、どうしてこうなってしまったのか……なんとも悲しいことです」
ついにクルード様は、根本的なことについて嘆き始めていた。
彼の心根が優しいということは、最早疑いようがない事実である。ゴートン侯爵が彼を私について行かせているのも、きっとそういった面を理解し信頼しているからだろう。
しかしまさか、ゴートン侯爵が私のこれからの生活の世話をしてくれるとは思っていなかった。もちろんありがたいことではあるのだが、どうしたものか。
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