お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

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3.旧知の侯爵を頼り

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 ゴートン侯爵家は、ラウファス伯爵家と旧知の仲である。
 先代同士の仲が良好で、その頃は交流を重ねていたそうだ。
 ただ性別上の関係によって、婚約などは結ばれることはなかった。もしも結ばれていたならば、今代で交流がほとんど途切れるなどということはなかっただろう。

「突然の訪問を受け入れてくださり、感謝致します、ゴートン侯爵」
「アゼリア嬢、少し見ない間にまた大きくなったね。今ではもう立派な淑女といった所だろうか」
「ありがとうございます」

 交流は途切れたものの、現当主はラウファス伯爵家のことを気に掛けてくれていた。
 彼は私の継父だったあの人とは幼馴染で、幼少期の頃は仲も良かったそうだ。今のあの人のことに関しては、変わってしまったと嘆いているらしい。
 だからこそなのか、あの人の元にいる私達のことは気にしているようだ。単純に人が好いこともあって、何かあったら頼ってくれていいと顔を合わせる度に言ってくれていた。

「しかし、アゼリア嬢のような几帳面な令嬢が突然訪ねて来るとは何事かね?」
「ラウファス伯爵家を追い出されました」
「なんと……」

 ゴートン侯爵の言葉に対して、私はとりあえず事実を伝えた。
 目を丸くしながらも、彼はそれ程動揺してはいないように思える。受け止め切れていないのか、あるいはある程度予想していたということかもしれない。

「……ラゼウスめ、ついに耄碌などという言葉では片付けきれないようなことを」
「お父様にとって、私は血の繋がりがない娘ですからね」
「……仮にそうだったとしても、少なくとも君は夫人にとっては実の娘ではないか」
「そうですね。両親ともに、私に対してはなんとも冷たいものです」

 ゴートン侯爵は、父の行いに対してひどく憤っているようだった。これが一般的な貴族――親としての反応なのだろうか。
 その辺りに関して、私にはよくわからない。何せまともな親など持ち合わせたことはないからだ。

「……クルード、クルードはいないか?」

 私が自らの生い立ちに苦笑いしていると、ゴートン侯爵は客室の戸を開けて廊下に声を響かせていた。
 その声の後に、廊下を踏み鳴らす音が聞こえてきた。それは恐らく、呼びかけられたクルード侯爵令息の足音なのだろう。

「父上、お呼びですか?」
「ああ、お前にも少し話を聞いてもらいたくてな……」
「アゼリア嬢、ですか……なるほど、何かあったという訳ですか」

 客室に来たクルード様は、私を見てため息をついた。
 彼の反応は、あまり良いものであるとは言い難い。それは当然のことだろう。何せ私は、厄介ごとを運んできたのだから。
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