お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

文字の大きさ
2 / 16

2.姉として背中を見せて

しおりを挟む
「どうして姉上が出て行かなければならないのですか?」
「そうです。お父様もお母様も間違っています」

 大方の予想通り、弟のルオードと妹のレネシアは私の追放に対して不満をあらわにした。
 支度を整えて出て行こうとしている最中やって来た二人は、私に半ば縋りついている。姉として、二人からの愛情を感じられて少し気分がいい。いや、そんな風に呑気なことを考えている場合ではないか。

「二人とも落ち着きなさい。別にこれが今生の別れという訳ではないのよ」
「姉上はどうしてそんなに冷静でいられるのですか? これは一大事ですよ」
「焦った所で、あの二人の決定が覆る訳ではないもの。そもそも私は、貴族の地位になんてそこまでこだわっていないし……」
「でも、私達と離れ離れになってしまいます」
「レネシア、離れていても心は繋がっているものよ。私達の絆は、そう簡単に途切れるものではないの。それにあなたにはルオードが、ルオードにはあなたがいるじゃない」

 二人との別れは私にとっても悲しいものだが、嘆いてはいられない。
 私は姉として、せめて二人に貴族としての誇り高き姿を見せておきたかった。それが自身の最後の務めのように思えたのだ。

「ルオードお兄様がいて、アゼリアお姉様がいる。それが私の望む世界です」
「別れというのは、いつか必ずやってくるものよ。それが少し早まっただけのこと……ルオード、あなたはこれからレネシアを、そしてラウファス伯爵家を守っていなければならない。厳しい道のりになることでしょう」

 レネシアに言葉をかけてから、私はルオードの方を向いた。
 彼は何れ、このラウファス伯爵家を継ぐことになる。今代はもう駄目ではあるが、次代の当主であるルオードには、なんとか立派な伯爵になってもらいたいものだ。

「姉上、僕には自信がありません。父上や母上から学べることなんてありません。姉上という目標がなければ……」
「それは私だって同じだったことよ。私にできたのだからあなたにもできるわ。気高き心を忘れなければ、立派な貴族になれる」
「しかし……」
「何かあったら、そうね……ゴートン侯爵を頼りにしなさい。あの方は私達のことを気に掛けてくださっているわ」

 ルオードの道は、険しいものになるだろう。何せ彼の両親はあれだ。凡そまともな貴族ではない。
 しかしそれでも、希望はあるように思えた。私の言葉を聞く彼の目には火がついている。口では自信がないと言っているが、既に決意の炎が点火しているようだ。
 これなら心配はいらないのかもしれない。ただそれでも、誰かの支援は必要だ。いざという時になんとかできるように、私はもう少しだけ働くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした

柚木ゆず
恋愛
 僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。  異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。  ――そんな人達でも、家族ですので――。  それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。 「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」 「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」  アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。  僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。  だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

隣にある古い空き家に引っ越してきた人達は、10年前に縁を切った家族でした

柚木ゆず
恋愛
 10年前――まだわたしが男爵令嬢リーリスだった頃のこと。お父様、お母様、妹は自分達が散財した穴埋めのため、当時住み込みで働いていた旧友の忘れ形見・オルズくんを悪趣味な貴族に高値で売ろうとしていました。  偶然それを知ったわたしはオルズくんを連れてお屋敷を去り、ジュリエットとガスパールと名を変え新たな人生を歩み始めたのでした。  そんなわたし達はその後ガスパールくんの努力のおかげで充実した日々を過ごしており、今日は新生活が10年目を迎えたお祝いをしていたのですが――その最中にお隣に引っ越してこられた人達が挨拶に来てくださり、そこで信じられない再会を果たすこととなるのでした。 「まだ気付かないのか!? 我々はお前の父であり母であり妹だ!!」  初対面だと思っていた方々は、かつてわたしの家族だった人達だったのです。  しかもそんな3人は、わたし達が気付けない程に老けてやつれてしまっていて――

婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます

柚木ゆず
恋愛
「フルール・レファネッサル! この時を以てお前との婚約を破棄する!!」  私フルールの婚約者であるラトーレルア侯爵令息クリストフ様は、私の罪を捏造して婚約破棄を宣言されました。  クリストフ様。貴方様は気付いていないと思いますが、そちらは契約違反となります。ですのでこれから、その代償を払っていただきますね。

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです

柚木ゆず
ファンタジー
 優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。  ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。  ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず
恋愛
 行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。  お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……? ※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。

私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。  姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。  ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。

処理中です...